話題
《ねんりん競技》護身道を極める ブレない身体と心/藤井和之さん(鎌倉市)
ねんりんピックの新種目「スポーツチャンバラ」は、横浜市で剣道場を営んでいた田邊哲人氏が1971年に考案した日本発祥のスポーツ。ゴムを空気で膨らませ、剣や槍、杖、棒などの形に見立てた武器で打ち合う。剣道と異なるのは、相手の身体のどこでも一撃を加えれば一本が認められる。
競技人口は世界40万人と言われている。打たれても痛くない、空気を抜けば持ち運びやすい点が、子供から高齢者まで楽しめる要素。近年は大学生のサークル活動も盛んになってきているそうだ。
「競技のルーツは護身道。剣さばきを体得すれば、傘で代用し、有事の際に自分の身を守ることができます」と話す藤井さん。娘さんの付き添いで体験したのがきっかけで、競技歴は14年になる。「普段の生活では防具はしていません。なので、どこが当たってもダメなのです。致命傷をどうかわすかが、競技での動きにそのまま表現されています」。
スポーツチャンバラは武器の種類ごとに級位〜段位があり、藤井さんは杖(じょう)3段、小太刀2段、長剣2段の腕前。試合は打ち合う対戦形式のほか、基本動作(いわゆる「型」)を競うものがある。基本動作は①面②小手③右からの胴④左からの脚⑤突き――の5種類。「振りがピタッと止まり、かつ5つの動作を流れるようにできるか。重心が上下動しないよう体幹がとても重要になります」と藤井さんは説明する。
杖の基本動作を見せてくれた。ブレない動き、そして杖を振り下ろすたびに力強い踏み込みが体育館のフロアを揺らす。「実はこれで肉離れを2回やりました。踏み込んだ瞬間、本当に『ブチッ』と聞こえました。そのぐらい一つひとつの動作に力が入るのです」。
一瞬のスキを逃さない
今年で60歳になった藤井さん。当初の予定だと神奈川県でのねんりんピックは昨年だったため、出場資格を満たしていなかった。コロナで1年延びたのが、結果的に幸い。チーム最年少として期待がかかる。
練習仲間曰く、藤井さんの強さは「姿勢が崩れない」こと。打って、すぐ元の構えに戻る。常に守りを考え、一発で仕留めるカウンター型だ。「打った後の体勢が一番崩れやすい。特に体力が豊富な若い人ほど力任せに振ってくるが、そこを逃さない」と本人も語る。
公式の大会では段位が近い者どうしが対戦する。歴戦が刀を交えると、構えや間合いで互いの力量が分かると言われるが、藤井さんもまさにその境地。「格上の人は、まず打ち込むスキがない。そして最小限の動きで太刀をいなされます」。この奥深さが、やめられない一番の理由だと話した。
練習仲間曰く、藤井さんの強さは「姿勢が崩れない」こと。打って、すぐ元の構えに戻る。常に守りを考え、一発で仕留めるカウンター型だ。「打った後の体勢が一番崩れやすい。特に体力が豊富な若い人ほど力任せに振ってくるが、そこを逃さない」と本人も語る。
公式の大会では段位が近い者どうしが対戦する。歴戦が刀を交えると、構えや間合いで互いの力量が分かると言われるが、藤井さんもまさにその境地。「格上の人は、まず打ち込むスキがない。そして最小限の動きで太刀をいなされます」。この奥深さが、やめられない一番の理由だと話した。
(ねんりんピック新聞2022年11月12日号)