連載《プリズム》

地域包括報酬というスキーム

地域包括報酬というスキーム

 「地域包括報酬」という新しい言葉がある。「地域包括ケア研究会」(座長・田中滋埼玉県立大学理事長)の最新版(19年3月)で 登場した。(プリズム2019年6月)

 2040年には、85歳人口が1000万人を超える。医療・介護だけではなく、日常の生活支援も欠かせない。「私たちは、目の前の現実社会が変化しているにも関わらず、考え方や発想が、前の時代のままで固定化されている状態にしばしば陥る」と本書。社会資源が徐々に枯渇し、20年かけて構築してきた日本の介護も見直すタイミングに来ている、とする。

 地域包括報酬とは、個人に対するサービス報酬とは別に、「在宅サービスが地域のインフラとしてサービス提供体制を維持しているコストをカバーする発想から、一定のサービス基盤を維持していることに対する包括報酬の支払い」を指す。地域の取組や体制の保持に対する包括報酬によって、事業者の経営の安定を画る。(看護)小規模多機能型居宅介護や定期巡回・随時対応型訪問介護看護だけではなく、多様なサービスメニューによって、心身状態の変化に柔軟に対処できるように、新たな複合型サービスの開発も進める必要があるという。

 本書は、40年に向けて生活支援サービスの事業化、在宅医療の担い手の負担分散化、事業者間の連携強化、施設の住まい化と多様化、地域包括ケアに関わる専門家の育成を掲げる。ケアマネジャーには、介護保険制度の枠を超えた「生活全体を支えるマネジメント」を求めた。

 介護保険には、横出し・上乗せサービス、基準該当サービス、市町村特別給付、地域密着型サービスの独自施策など、これまでも保険者権限で多様なサービス構築が可能だった。しかし、単発的であったり、従来サービスの枠組みを超えることが難しかったりもした。今後も、多様な法人主体の安定したサービス提供をめざさなければならない。地域包括報酬という新しい事業スキームを創ることで、今後、地域を含めた事業視点を介護保険事業者が有する展望も生まれる。

(シルバー産業新聞2019年6月10日号)

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