生き活きケア

生き活きケア(98) ひぐらしのいえ(千葉県松戸市)

生き活きケア(98) ひぐらしのいえ(千葉県松戸市)

 千葉県松戸市内の閑静な住宅街に佇む「ひぐらしのいえ」(安西順子社長)は、生活リハビリを中心とした小規模デイ。利用者自身の力で、食事、歩行、排泄などを行えるように生活に根差したリハビリを実践している。隣に併設された年中無休の宅老所「ひぐらし荘」では、利用者それぞれの状況に合わせ柔軟に対応し、ターミナルケアまでを行う。「最期まで当たり前の生活を送れるように」との思いで日々尽力している。

生活リハビリの実践

 安西さんがデイサービスを始めたのは12年前。きっかけは看護師として病院施設で働いていた時の経験と、当時デイサービスに通っていた父親から施設の現状を聞いて疑問を感じたこと。「当たり前の生活が送れるデイ」を目標に普通の民家を利用して始めた。

 事業所内はあえてバリアフリー化せず、玄関の上り框は18㎝の段差を残す。「みんな家に帰れば段差もあるし、階段もあるでしょ」と話す安西さん。

 利用者は同事業所にいる間、調理補助や、洗濯物を畳むなどの生活リハビリを自然に実践している。要介護度は、2から5まで様々。個人差はあるが、スタッフと一緒に包丁を使って野菜の皮をむいたり、具材を切ったりすることもしばしばだ。食器洗いや食器拭きを手伝っている利用者もいる。

 安西さんは「特別なことはなにもしていない、普通の生活を送ることが一番のリハビリになる」と語る。

通い慣れたデイサービスで最期を

自宅にいるように自然とくつろぐ利用者

自宅にいるように自然とくつろぐ利用者

 併設されているひぐらし荘の1階部分にあたるリビングは日中デイサービスとして利用され、2階部分には宿泊用の個室9部屋がある。宅老所の利用者のほとんどが日中のデイを利用しており、必要であれば夜間も宅老所内で過ごすことができる。

 宅老所の要介護度は平均4・5以上。利用者の家族からは「顔なじみのスタッフさんが見てくれるから安心」と信頼も厚い。家族がいつでも会いに来られるように、面会時間外の訪問にもできる限り対応する。

 同宅老所内では日中看護師が常駐し、医療ニーズのある利用者も受け入れて、ターミナルケアにも対応。開設当初から今までで45人の利用者を看取ってきた。

 12年前にデイサービスに入所し、先月末に亡くなったある利用者は、自分のことを「おばあちゃん」と呼び、スタッフのことを「お母さん」、「お姉さん」と呼んで家族のように接していたという。通いなれたデイサービスの人々と、家族が見守る中で、人生最期の時間を過ごした。

当たり前の生活を送る

 基本的にどんな困難ケースも受け入れてきたという同事業所。利用者の中には、以前いた施設で認知症の症状を抑えるために睡眠薬を服用していた人も多いが、同事業所内では一度も服用していない人もいる。グループホームから移ってきたある利用者は、興奮してなかなか寝ることができなかったが、強制せずに本人が自然に眠くなるのを待った。

 「別になんてことはないんですよ。人の生活習慣はそうそう変わるものではないし、私だっていきなり7時に寝ろって言われても眠れませんから」と安西さん。要介護度や病名などでその人を判断せず、常に「その人らしい生き方」を送れるように支援している。

 地域包括ケアシステムの構築が急がれる中、「ひぐらしのいえ」のように最期まで「その人らしさ」を支える事業所が社会全体にとって必要だと感じた。
家族が見守れるターミナルケアを提供

家族が見守れるターミナルケアを提供

 (シルバー産業新聞 2015年6月10日号)

関連する記事