未来のケアマネジャー

報酬改定を見るうえで伝えたい3つのメッセージ/石山麗子(連載25)

報酬改定を見るうえで伝えたい3つのメッセージ/石山麗子(連載25)

 介護給付費分科会は2021年度介護報酬改定に関する審議報告(以下、「審議報告」という)を行った。21年度介護報酬改定は今年3月、まさに新型コロナウイルスの感染拡大と並行してスタートした。未曾有の厳しい環境下で22回にわたり、真摯な議論を展開し、審議報告作成に至るまでの多くの人の熱意に頭の下がる思いである。心からの敬意を表しながら審議報告を読んだ。

 報酬改定の議論に着目する際、単価はいくら?加算はどうなった?という観点で見ることは多いだろう。経営上、ケアの展開上きわめて現実的な視点である。それを承知したうえで伝えたいメッセージが3つ。①報酬改定を先に観るのではなく法改正からの流れを確認すること②報酬改定の柱に着目すること③制度改正の過去・現在を確認し、その文脈から次期改正を確認すること――である。まず、メッセージ①③の観点から、表1を確認しよう。
 介護保険改正法の正式名称を比較することで、時代は着実に変遷していることを感じられるだろう。つまり地域包括ケアシステムから、地域共生社会への流れである。

 では、次にメッセージ②③の観点から、報酬改定の柱を比較しよう(表2)。
 柱は一つ増えた。新型コロナウイルス感染拡大、毎年各地で絶えない災害は、日常の対応として取り扱われるようになった。

 最後に居宅介護支援における具体的改定事項である。画期的なのは表3のIである。ケアマネジメントは提供しても、利用開始前に死亡するケース等の業務の評価を得ることは、20年来、ケアマネジャーの悲願であった。Lの加算の廃止には著しい算定率の低さが要因にある。なぜ居宅介護支援事業所から(看護)小規模多機能型居宅介護への連携は進まなかったのか。3年前は居宅介護支援のケアマネジャーの知識不足を批判する意見があった。本当にそうだろうか。廃止される加算に関心を寄せる人は少ないかもしれないが、これは大切な議論である。なぜなら認知症の方は今後も増加し、生涯未婚率が上昇するなかで介護者の仕事と介護の両立支援も望まれる。それを支え得る重要なサービス種別の一つだからだ。加算が廃止されたことと、連携の重要性とは切り離して考える必要があろう。
 私たちは、決定事項だけに目を奪われず、残された課題もあることを忘れてはならない。なぜなら決定事項だけに着目すれば視野の狭窄と同義で、羅針盤(進むべき方向)を見失うからだ。大切なのは流れとしての制度の文脈を理解すること。つまり制度の過去・現在・未来という時間軸に着目する視点である。そうすれば自らのあるべき姿も描くことができる。

 石山麗子(国際医療福祉大学大学院 教授)

(シルバー産業新聞2021年1月10日号)

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