半歩先の団塊シニアビジネス
「家族市場」の動向と今後(その3)村田裕之
11月22日に東京・お台場にある日本未来科学館の常設展示がリニューアルされ、ロボットをテーマにした展示が公開され、話題を呼んだ。
日本未来科学館で展示のロボット
はペットに近いものばかり
完成度が高かったのは、セラピーロボットの(知能システム)「パロ」、コミュニケーションロボットの(ソニー)「アイボ」と(Groov X)「ラボット」だ。これら3つの共通点は、限りなくペットに近いことだ。パロはアザラシの子供がモデルで外見は動物のようだ。
アイボは犬をモデルにした外観と動作を行う。ラボットはあえて特定の動物に似せてないが、限りなく生き物に近い動作を行う。
ペット型ロボットは疑似家族になれるか?
前号でペット(特に犬)が疑似家族になる条件として、人とペットとの間で「愛着形成ができる能力」があることを述べた。学術的検証度から前掲のロボットを見てみる。
まず、パロについては、オーストラリアのグリフィス大学により認知症と診断された60歳以上の415人を対象としたランダム化比較試験が報告されている。AI機能有りのパロが被験者の前に置かれた場合、パロへの話しかけや視線を向ける「愛着行動」が統計的有意に多く見られたとのことだ。ただし、この試験では被験者のオキシトシン分泌量の計測は行われておらず、愛着形成に関わる生化学的な反応は不明だ。
次にアイボについては、国立成育医療研究センターによる小児医療現場における長期療養中の子供に与える癒やし効果検証の報告がある。行動観察により子供への癒やし効果は見られるものの、「愛着行動」とこれに伴うオキシトシン分泌量に統計的有意な数値は見られない。
最後にラボットについては、開発元のGroov Xと資生堂による共同研究が報告されている。
ラボットのオーナー群(女性、25〜45歳)24人、非オーナー群(女性、30〜39歳)23人を対象に定常オキシトシン濃度を計測した結果、オーナー群では有意に高いことが報告されている。
ただし、この研究ではラボットと生活する前のオキシトシン濃度が不明であるため、ラボットとの生活による変化かどうかは不明とのことだ。検証手順も医学的厳密性を欠くために結果の信憑性はそれほど高くない。
以上より、国際的にも定評のあるペット型ロボットでも、ペット並みの「疑似家族化」能力は現時点では明らかではない。
ペット市場は「家族化」の進展とともにさらに広がる
これまでペット市場は、ペットの「家族化」と「高齢化」により拡大してきた。ペットの家族化に対応してペット同伴可能なレストラン、カフェ、ホテルが増えた一方、飼い主の留守中に預かるペットシッターも増えている。高齢化に伴い、飼い主のペットに対する健康管理意識が高まり、栄養にこだわったフードや年齢に合わせたフードなどが登場してきた。
また動物病院の需要が高まり、高額な医療費を賄うためのペット保険市場も拡大した。さらにペット用の介護用品や老犬ホーム、葬儀サービス、墓地なども増えた。ペットの家族化とは、ペットが「家族のように扱われること」なので、人間社会に存在する商品・サービスは段階的にペットにも適用される。
今後は人間が既に使用しているが、まだペットに適用されていないものに新たな市場可能性があるだろう。
「家族化」しないロボットはペット市場
とは異なる方向に向かう
ペットに比べたロボットの利点は、そもそも生き物ではないので死なないことだ。この点がペットロスを避けたい一部の人に「代替ペット」としてニーズがある。また、ペットアレルギーの人やマンションなどペット禁止の環境でペットを飼いたい人の代替にもなっている。
ペット型ロボットは、疑似家族ではなく、あくまで代替ペットとしての位置づけであり、この傾向は今後もしばらく続くだろう。
はペットに近いものばかり
完成度が高かったのは、セラピーロボットの(知能システム)「パロ」、コミュニケーションロボットの(ソニー)「アイボ」と(Groov X)「ラボット」だ。これら3つの共通点は、限りなくペットに近いことだ。パロはアザラシの子供がモデルで外見は動物のようだ。
アイボは犬をモデルにした外観と動作を行う。ラボットはあえて特定の動物に似せてないが、限りなく生き物に近い動作を行う。
ペット型ロボットは疑似家族になれるか?
前号でペット(特に犬)が疑似家族になる条件として、人とペットとの間で「愛着形成ができる能力」があることを述べた。学術的検証度から前掲のロボットを見てみる。
まず、パロについては、オーストラリアのグリフィス大学により認知症と診断された60歳以上の415人を対象としたランダム化比較試験が報告されている。AI機能有りのパロが被験者の前に置かれた場合、パロへの話しかけや視線を向ける「愛着行動」が統計的有意に多く見られたとのことだ。ただし、この試験では被験者のオキシトシン分泌量の計測は行われておらず、愛着形成に関わる生化学的な反応は不明だ。
次にアイボについては、国立成育医療研究センターによる小児医療現場における長期療養中の子供に与える癒やし効果検証の報告がある。行動観察により子供への癒やし効果は見られるものの、「愛着行動」とこれに伴うオキシトシン分泌量に統計的有意な数値は見られない。
最後にラボットについては、開発元のGroov Xと資生堂による共同研究が報告されている。
ラボットのオーナー群(女性、25〜45歳)24人、非オーナー群(女性、30〜39歳)23人を対象に定常オキシトシン濃度を計測した結果、オーナー群では有意に高いことが報告されている。
ただし、この研究ではラボットと生活する前のオキシトシン濃度が不明であるため、ラボットとの生活による変化かどうかは不明とのことだ。検証手順も医学的厳密性を欠くために結果の信憑性はそれほど高くない。
以上より、国際的にも定評のあるペット型ロボットでも、ペット並みの「疑似家族化」能力は現時点では明らかではない。
ペット市場は「家族化」の進展とともにさらに広がる
これまでペット市場は、ペットの「家族化」と「高齢化」により拡大してきた。ペットの家族化に対応してペット同伴可能なレストラン、カフェ、ホテルが増えた一方、飼い主の留守中に預かるペットシッターも増えている。高齢化に伴い、飼い主のペットに対する健康管理意識が高まり、栄養にこだわったフードや年齢に合わせたフードなどが登場してきた。
また動物病院の需要が高まり、高額な医療費を賄うためのペット保険市場も拡大した。さらにペット用の介護用品や老犬ホーム、葬儀サービス、墓地なども増えた。ペットの家族化とは、ペットが「家族のように扱われること」なので、人間社会に存在する商品・サービスは段階的にペットにも適用される。
今後は人間が既に使用しているが、まだペットに適用されていないものに新たな市場可能性があるだろう。
「家族化」しないロボットはペット市場
とは異なる方向に向かう
ペットに比べたロボットの利点は、そもそも生き物ではないので死なないことだ。この点がペットロスを避けたい一部の人に「代替ペット」としてニーズがある。また、ペットアレルギーの人やマンションなどペット禁止の環境でペットを飼いたい人の代替にもなっている。
ペット型ロボットは、疑似家族ではなく、あくまで代替ペットとしての位置づけであり、この傾向は今後もしばらく続くだろう。