千田透の時代を読む視点

介護保険20年を総括した上で、給付と負担の議論を/千田透(連載74)

介護保険20年を総括した上で、給付と負担の議論を/千田透(連載74)

 次期介護保険制度改正に向けた本格的な議論が、社会保障審議会介護保険部会で始まっている。

 8月29日に示された資料では、今後の検討事項として、「持続可能な制度の再構築」がテーマに掲げられ、その中で給付と負担の見直しについても検討していくことが挙げられている。

 具体的な項目として示されているのは、①被保険者・受給者範囲②補足給付に関する給付のあり方③多床室の室料負担④ケアマネジメントに関する給付のあり方⑤軽度者への生活援助サービス等に関する給付のあり方⑥高額介護サービス費⑦「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準⑧現金給付――の8項目で、中には制度の根幹に踏み込む項目も含まれている。

 制度の創設から19年が経ち、高齢化の伸展とともに、介護保険サービスを利用する人は当初の3倍になり、それに伴って介護費用も11兆7000億円と約3倍に膨らんでいる。

 今後、団塊の世代が本格的にサービスを利用しはじめる2025年、さらに日本の高齢化がピークに達する2040年を見据え、給付と負担のバランスをいかに図り、制度の持続性を高めていくのかを議論することになる。

 そうであるならば、その前提として、20年という節目を迎えた介護保険制度で、何が実現できて何が実現できなかったのか、その総括が必要であろう。例えば社会的入院の解消という当初の制度の導入目的で見た時に、それがどの程度達成できているのかなどである。そうすれば、介護保険の中にある医療の部分をどのように考えるかといった論点も出てくるはずだ。そうしたことも含めて議論していく必要があるだろう。

 個人的には、①被保険者・受給者範囲については、高齢者に限定せず、介護を必要とするすべての人にサービスの給付を行う「制度の普遍化」を目指すべきであり、保険料を負担する年齢を引き下げるべきだと思っている。

 もちろん、介護サービスと障害福祉サービスでは、対象者やサービス内容に違いがあるので、介護サービスがあてはまる部分は、それを利用し、あてはまらない部分は障害福祉サービスで給付するといった2階建ての形なら、関係者の理解も得られるのではないだろうか。いまでも65歳以上は、障がい者も含めてまずは介護保険で支援が行われ、それを超えて必要な部分は障害者総合支援法で支援する形になっているので、年齢を引き下げるイメージだ。

 また、いまは第一子を産む年齢も高齢化しており、介護保険が創設された2000年の時点では親が65歳以上になった時の子どもの年齢は40歳だったのが、2017年では32歳に低下してきている。こうしたことも含めて、若い人にも納得してもらう形で介護保険が普遍化していくことを期待している。

 千田透(全国生活協同組合連合会 常務理事)

(シルバー産業新聞2019年10月10日号)

関連する記事

2024年度改定速報バナー
web展示会 こちらで好評開催中! シルバー産業新聞 電子版 シルバー産業新聞 お申込みはこちら

お知らせ

もっと見る

週間ランキング

おすすめ記事

人気のジャンル