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能登半島地震 高齢被災者の「次の施設」探しに奮闘

能登半島地震 高齢被災者の「次の施設」探しに奮闘

 日本介護支援専門員協会(柴口里則会長)は1月12日から、「能登半島地震における介護支援専門員ボランティアの募集」を開始、15日に現地対策本部長、七種秀樹氏と同副本部長、小林広美氏が関係機関と調整し、同県より被災高齢者等把握事業を受託した。16日から現地入りしている、同協会常任理事で徳島県協会理事長の山口浩志氏に現地の様子を聞いた。(取材=1月23日・24日)

――支援に入っている場所は。

 現在、金沢市の「いしかわ総合スポーツセンター」に設置した「1.5次避難所」にいる。輪島市、珠洲市、七尾市などから避難してきた高齢者らが避難している。

 能登半島北部の高齢者施設は、ライフラインが十分に復旧していない状況で、感染症なども発生している。在宅の要介護者や高齢者の衛生環境も悪く、厳しい環境で生活している人がたくさんいる。

 仮設住宅もまだないし、避難所も同様だと聞いている。その人たちが県内の2次避難所に行く前の避難場所として設けたのが、石川県が運営する1.5次避難所。厚労省の発案だと聞いている。滞在1~2日間に2次避難所をマッチングする想定だが、現実は滞在が長期化している。

――ケアマネジャーの役割は。

 保健師チームが高齢者等の情報を収集し、そのファイルをケアマネに渡し、ケアマネは個別に、ADLや服薬状況、疾患名、どこの特養から来たか、在宅なのか、食事、排泄、口腔(入れ歯)はどうかなどと聞き取っていく。医療ニーズの高い人は、メディカルチェックを受ける仕組みができている。

 ケアマネチームは1.5次避難所でアセスメントなどを行うグループと施設探しを行う県庁にいるグループが連携する。
ここでは毎朝、避難所をラウンドし、高齢者の入退所を確認して、県庁のケアマネグループに情報シートをパソコンで送る。「今日は30人が新規だった」とか「5人が退出した」など、日々の状況を共有する。

 そして、県庁グループが県内の福祉施設に電話し、空き状態を確認する。1日に80~100件くらい電話をかけている状況だ。全国から集まる専門職の支援者の状況も毎朝確認する。

 利用者の個別のニーズによって選ぶ施設も異なるし、施設にはもともと地元の利用者がいて、簡単には見つからない。

 医療チームのシートに家族の情報が載っているので、家族へ連絡する。受入れ先が決まったら移送方法を考えて、DMATチームがドクターヘリやストレッチャーなどを手配する場合もある。

 退出が決まると、ホワイトボードにその予定日と退出先を一覧で表記する。施設が迎えにくる場合もある。移動時の荷物まとめなどは、介護系の専門職が担っている。

 家族が県外にいる場合には、県外の自治体に相談し、空いている施設を探してもらう。家族に地域包括を紹介することもある。岐阜県から10人、愛知県から15人の受け入れもあった。

――避難所の状況は。

 Aさんがここに移動してきた時、リハビリシューズが脱げていた。リストに家族の情報があったので、すぐに家族に電話したが、家が倒壊しているので靴は探しようがない、と言われた。

 能登半島からここに来たMさんには、県外に住む息子のいる地域の施設を探してほしいと言われた。調整したが、すでに定員に空きがなく入れなかったので、息子が住む県内の地域包括支援センターに繋いだ。

 1.5次避難所では、滞在スペースを大きく3つのゾーンに分けている。

 マルチパーパス(多目的室、40床)は、中重度者で認知症状がある人、医療ニーズのある人を想定する。

 サブアリーナ(106床)は、中・軽度者で、ある程度は介助が必要な人。メインアリーナ(240床)は、2~3日の滞在でホテルや家族の元などに移動できることを想定している人。

 しかし実際には、避難者の9割は65歳以上で、メインアリーナには1月22日時点で、1週間以上も滞在している人が50数人いる。必ずしもゾーニング通りにはいかず、とにかく空いているところに入ってもらう状況も生まれている。

 最初は要介護1でも、避難所生活で重度化し、区分変更が必要な人も出ている。今後も長期滞在者が増える見込みで、高齢者の機能低下が大きな課題になってくる。
高齢避難者の滞在長期化が大きな課題だ (いしかわ総合スポーツセンター玄関)

高齢避難者の滞在長期化が大きな課題だ (いしかわ総合スポーツセンター玄関)

(シルバー産業新聞2024年2月10日号)

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