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たんぽぽクリニック 四国最初の在宅特化型クリニック

たんぽぽクリニック 四国最初の在宅特化型クリニック

 たんぽぽクリニックは2000年、四国で初の在宅医療専門クリニックとして開設した。2年後に医療法人ゆうの森を設立し、同年訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所を開設。12年には、閉鎖の決まった西予市のへき地診療所を引き取り、新たに「たんぽぽ俵津診療所」を開院した。永井康徳院長(法人理事長)を含めスタッフ4人でスタートした法人は現在、約100人が在籍。常勤医師は10人、在宅患者は約600人で年間の看取りは200人を超える。

 「当時は看取りの8割以上が病院だった。訪問診療を行うクリニックは幾つかあったが、外来の空き時間に提供する形が多く、夜間・休日は対象外。患者も状態が落ち着いている人が中心で、人工呼吸器装着患者や重度者はほとんどいなかった」と永井院長は話す。これまで自身が看取りに関わるなかで、自宅を希望しつつも、在宅医療への不安を口にする患者と多く出会った。「医師の都合にあわせた在宅医療は必要ない。患者の不安を取り除くには24時間体制が不可欠」と開院を決意したという。

 24時間の在宅医療には複数医師の確保が必要。同氏は最小ラインと考える4人体制をめざし、活動をホームページで発信、同志を募った。今でも永井氏はSNSやYouTubeを駆使し、在宅医療のポイントやケア、経営と多面的な発信を続けている。同法人オリジナル「全国在宅医療テスト」は昨年まで13回開催。昨年は約3000人が受験した。

 在宅患者の獲得には、地域の病院や民間の介護事業所をひたすら訪問した。「警戒、否定的な反応も珍しくなかった」と永井氏。結果、紹介を受ける患者の多くは困難事例だった。それでも「1回の訪問で信頼関係を築くスキルを磨くことができた。今でも在宅訪問の基礎としている」と永井氏。ポイントは、「今一番困っていること」を聞きとり、その手助けをする意思表明だという。「医師や看護師が来ると、『病院と同じで、何か制限される』と思われがち。まずはその壁を取り払わなくてはならない」。

 同氏が在宅で大切にしているのが「ビーイング(Being)」の医療。本人の「どう過ごしたいか」「どう最期を迎えたいか」に寄り添い、不安や痛みを取り除く。「医療は最小限にする。例えば点滴は食欲低下を招き、痰も発生しやすくなる。口から食べる支援を追求すれば、こうした処置は見直すことができる」。

後方支援のホスピスも

 看取りの実績に連動し、病院からの紹介も増えた同クリニック。患者の9割を在宅で看取る。「それでも残りの1割は入院・入所になる。本人の不安が拭いきれない場合や、家族の介護疲れなどが多い」と同氏。介護力を理由に在宅を断念しなくてもいいよう、16年に在宅療養支援病床「たんぽぽのおうち」を開設した。

 在宅が難しくなった患者へ同じ医師や看護師が最期まで緩和ケアをサポート。一時入院や、病院・施設から在宅復帰する際の中間的役割も担う。多職種による摂食・嚥下支援も受けられる。「こちらが病床をもつことで、地域の病院も重度者の再入院リスクが軽減され、退院させやすくなった」(同氏)。

 現在、松山市内で在宅医療専門クリニックは10カ所以上。「それでも病院看取りがまだ7割ほどある」と同氏。その理由を「患者・医療者双方が、死に向き合っていないから」と指摘する。「おそらく、がんが治らないこと、いつか死ぬことまでの話ができていない。それで亡くなると、家族が後で思い悩むことになる。いつか来る死を受け入れ、それまで何をしたいかを全員で考える。そのプロセスが大切」。
(シルバー産業新聞2023年8月10日号)

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