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介護保険部会 24年改正に向けた見直し策を提言
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会(菊池馨実部会長=早稲田大学理事・法学学術院教授)は12月20日、介護保険制度の見直しに関する意見書をとりまとめた。次期制度改正に向け、「地域包括ケアシステムの深化・推進」「介護現場の生産性向上、制度の持続可能性の確保」の大きく2つの観点から、多岐に渡る見直し内容が明記されている。
訪問・通所の複合型サービス創設
「地域包括ケアシステムの深化・推進」の観点からは、在宅サービスの基盤整備として、「複数の在宅サービス(訪問や通所系サービスなど)を組み合わせて提供する複合型サービスの類型などを設けること」を明記。次期改正で複合型サービスに訪問・通所を一体的に提供する類型を設けることを検討していくことが記された。
また、定期巡回と夜間対応型訪問介護など、機能が類似・重複しているサービスについても、将来的な統合・整理に向けて検討を行う。議論は介護給付費分科会に引き継がれる。
また、定期巡回と夜間対応型訪問介護など、機能が類似・重複しているサービスについても、将来的な統合・整理に向けて検討を行う。議論は介護給付費分科会に引き継がれる。
適切なケアマネジメント手法の普及・定着
ケアマネジメントの質の向上では、「法定研修のカリキュラムの見直しを見据えた適切なケアマネジメント手法の更なる普及・定着を図る」と明記。法定研修の中に「適切なケアマネジメント手法」のカリキュラムを組み入れ、初任者からベテランまで、すべてのケアマネに対し、普及・定着を図っていく。また、「介護サービス全体として、科学的介護が推進されている。ケアマネジメントについてもケアプラン情報の利活用を通じて質の向上を図っていくことが重要」として、4月から本格稼働する「ケアプランデータ連携システム」を活用し、ケアマネジメントの業務負担の軽減と質向上を目指す。
福祉用具貸与・販売のあり方、継続検討
福祉用具については、9月14日にとりまとめられた「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の中間整理を踏まえ、「福祉用具貸与・販売種目の在り方や福祉用具の安全な利用の促進等について、引き続き検討を行う」とされた。
「福祉用具のあり方検討会」では、一部の貸与種目について貸与・購入の選択を可能かどうかの検討が行われているほか、2004年に策定された「介護保険における福祉用具選定の判断基準」について見直しが検討されている。この2つの項目を中心に、引き続き見直しに向けた検討が行われることになった。
「福祉用具のあり方検討会」では、一部の貸与種目について貸与・購入の選択を可能かどうかの検討が行われているほか、2004年に策定された「介護保険における福祉用具選定の判断基準」について見直しが検討されている。この2つの項目を中心に、引き続き見直しに向けた検討が行われることになった。
特養の特例入所実態調査へ
施設サービスの基盤整備では、「特養の入所申込者数は、全体としては減少傾向がみられ、地域によっては空床が生じている場合や、人手不足により空床とせざるを得ない場合などもある」と記載。その中で、要介護1・2の特例入所については、地域によってばらつきがあるとして、「特例入所の運用状況や空床が生じている原因などについて早急に実態を把握の上、改めて、特例入所の趣旨の明確化を図る」と、実態調査を行うとともに、特例入所が円滑に進むよう、改めて厚労省から自治体へ周知・徹底していくことになった。
介護予防支援の指定、居宅にも
地域包括支援センターの体制整備では、センターの業務負担軽減を進める観点から、「地域包括支援センターの一定の関与を担保した上で、居宅介護支援事業所に指定対象を拡大することが適当」と明記。委託ではなく、居宅介護支援事業所が直接予防プランを作成する形に見直される。
また、総合事業において、従前相当サービス等として行われる「介護予防ケアマネジメントA」について、利用者の状態像等に大きな変化がないと認められる場合に限り、モニタリング期間の延長などを可能とすることも明記された。
また、総合事業において、従前相当サービス等として行われる「介護予防ケアマネジメントA」について、利用者の状態像等に大きな変化がないと認められる場合に限り、モニタリング期間の延長などを可能とすることも明記された。
有料ホーム等の人員配置基準の緩和検討
「介護現場の生産性向上、制度の持続可能性の確保」の観点からは、実証事業などで得られたエビデンスなどを踏まえ、テクノロジー(介護ロボット・ICT)を活用した先進的な取組を行う介護付き有料老人ホーム等の人員配置基準を柔軟に取り扱うことの可否を含め、検討していくと記載した。
さらに、在宅サービスでもテクノロジー活用の調査研究を進めるなど、「現場での利活用に当たって有用な取組を推進していくことが重要」とした。
さらに、在宅サービスでもテクノロジー活用の調査研究を進めるなど、「現場での利活用に当たって有用な取組を推進していくことが重要」とした。
介護助手の導入促進
介護助手については、介護職員の業務負担軽減、介護サービスの質の確保の観点から、「介護助手に切り分け可能な業務や切り分けたときに効果が高いと見込まれる業務の体系化、同じ職場で働く構成員としての介護助手の制度上の位置付けや評価・教育のあり方も含め、サービス特性を踏まえた導入促進のための方策を引き続き検討」と記載。介護助手の人員基準上の取り扱いは、介護給付費分科会で議論される予定。
介護サービス事業者の財務状況を公表
財務状況等の見える化では、介護サービス情報公表制度で、社会福祉法人や障害福祉サービス事業所と同様、介護サービス事業者についても財務状況を公表することを明記。
併せて、一人当たりの賃金等についても公表することも決まった。
併せて、一人当たりの賃金等についても公表することも決まった。
1号保険料負担の多段階化
「給付と負担」の観点からは、1号保険料負担の在り方について、既に多くの保険者で9段階を超える多段階の保険料設定がなされていることも踏まえ、「国の定める標準段階の多段階化、高所得者の標準乗率の引上げ、低所得者の標準乗率の引下げ等について検討を行うことが適当」と明記した。
具体的な段階数、乗率、低所得者軽減に充当されている公費と保険料の多段階化の役割分担などについて、「次期計画に向けた保険者の準備期間等を確保するため、早急に結論を得ることが適当」とした。
具体的な段階数、乗率、低所得者軽減に充当されている公費と保険料の多段階化の役割分担などについて、「次期計画に向けた保険者の準備期間等を確保するため、早急に結論を得ることが適当」とした。
2割負担の対象拡大夏までに結論
「一定以上所得」(2割負担)、「現役並み所得」(3割負担)の判断基準については、それぞれで記載内容が異なる。
「一定以上所得」については、「後期高齢者医療制度との関係、介護サービスは長期間利用されること等を踏まえつつ、高齢者の方々が必要なサービスを受けられるよう、高齢者の生活実態や生活への影響等も把握しながら検討を行い、次期計画に向けて結論を得ること」と、第9期計画(24~26年度)からの実施に向けて、結論を得ることを明記。遅くとも今年の夏までに方向性が決まる。
一方、「現役並み所得」については、「医療保険制度との整合性や利用者への影響等を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当」と、こちらは第9期計画からの実施については見送りとなった。
「一定以上所得」については、「後期高齢者医療制度との関係、介護サービスは長期間利用されること等を踏まえつつ、高齢者の方々が必要なサービスを受けられるよう、高齢者の生活実態や生活への影響等も把握しながら検討を行い、次期計画に向けて結論を得ること」と、第9期計画(24~26年度)からの実施に向けて、結論を得ることを明記。遅くとも今年の夏までに方向性が決まる。
一方、「現役並み所得」については、「医療保険制度との整合性や利用者への影響等を踏まえつつ、引き続き検討を行うことが適当」と、こちらは第9期計画からの実施については見送りとなった。
老健・医療院の多床室の室料負担第9期までに結論
介護老人保健施設と介護医療院の多床室の室料負担の導入については、在宅でサービスを受ける者との負担の公平性、各施設の機能や利用実態など、これまでの部会における意見も踏まえて、「介護給付費分科会において介護報酬の設定等も含めた検討を行い、次期計画に向けて、結論を得る必要がある」と、こちらも第9期計画に向けて結論を得ることを明記。夏までに結論を出すことになった。
ケアマネジメント自己負担導入、今回は見送り
ケアマネジメントへの自己負担の導入については、利用者やケアマネジメントに与える影響、他のサービスとの均衡なども踏まえ、「第10期計画期間の開始までの間に結論を出すことが適当」と記載。こちらは第9期計画ではなく、第10期(27~29年度)計画までに結論を出す考えを明記した。
要介護1・2の総合事業への移行第10期までに結論
軽度者(要介護1・2)への生活援助サービスなどを総合事業に移す案については、現行の総合事業に関する評価・分析などを行いつつ、「第10期計画期間の開始までの間に、介護保険の運営主体である市町村の意向や利用者への影響等も踏まえながら、包括的に検討を行い、結論を出すことが適当」と、こちらも第10期計画の開始までに結論を出すこととしている。
(シルバー産業新聞2023年1月10日号)
(シルバー産業新聞2023年1月10日号)