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24年度介護報酬改定 訪問+通所の新しい複合型検討

24年度介護報酬改定 訪問+通所の新しい複合型検討

 厚生労働省は8月30日、社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭・国立社会保障・人口問題研究所所長)を開催し、「新しい複合型サービス」のテーマについて初めての検討を行った。事業所数が多い訪問介護と通所介護の組み合わせが念頭に置かれているだけに、事業者団体からは参入しやすい基準や十分な報酬設定が要望された。一方で、サービスの質低下を招かない仕組みを求める声や、「これ以上、制度を複雑にすべきでない」と創設自体に反対する意見も少なくない。

 24年介護報酬改定で提起された「新しい複合型サービス」は、訪問や通所系サービスの組み合わせを念頭に置く、複合型サービスの新類型。2040年の訪問介護の見込み利用者は152万人、通所介護は297万人で、それぞれ20年間で3割超の増加が試算されている。これに対し、足元の事業所数は訪問介護で微増、通所介護は横ばい。またヘルパーの有効求人倍率は15.5倍で、8割の事業所がヘルパー不足と感じている状況だ。

 こうした背景から、介護保険部会が昨年末にとりまとめた意見では、「複数の在宅サービスを組み合わせて提供する複合型サービスの類型の創設を検討することが適当」と明記された。既存の事業者を活用し、複合的な在宅サービスの整備を進める方針だ。

 複合型サービスは介護保険法上、地域密着型サービスに位置づけられている。
 さらに複合型サービスの一類型である看多機は、厚労省令で「訪問看護および小規模多機能型居宅介護の組合せにより提供されるサービスとする」と定めている。厚労省は「現行の仕組みでは、看多機のように省令で新類型をつくることになる」と説明した。

半数の事業者が両サービス提供

 訪問介護利用者のうち、通所介護(地域密着型含む)を併用するのは46.7%と、半数近い。また事業所ベースでも、半数以上が両サービスを提供している。

 併用するメリットについて「利用者と接する時間が長い通所介護で利用者の性格やニーズを把握し、訪問介護側にフィードバックできる」「独居の利用者に朝の服薬の確認をしており、訪問介護と連携して吸入薬の回数の確認をしている。通所介護に行くための準備を訪問介護でしてもらうこともあり効果的」などの声が訪問系、通所系サービス事業所から挙げられている。

 一方で、訪問系サービスと通所系サービスを併用する際、居宅介護支援事業所が感じる課題として、「急なキャンセルなどのサービス変更があった場合の事業所への連絡調整が煩雑である」が46.1%と最も多く、「急なキャンセル等のサービス変更があった場合の連絡調整が難しい」(42.3%)、「事業所間での情報共有が難しい」(36.1%)などが挙がっている。

参入呼び込む報酬と基準、求める声

 新類型創設に肯定的な委員からは、十分な報酬設定、参入しやすい基準などを求める声があがった。「新しい複合型サービスの創設には意義がある。ケアマネの位置づけ、報酬のあり方、柔軟に運営できる人員基準などについて、サービスが有効に活用されるような制度設計が必要だ」(古谷忠之委員・全国老人福祉施設協議会参与)、「人材の有効活用などに繋げるには、一定数以上の事業者参入が前提となる。そのためには、収益が確保できる仕組みや報酬の設定、思い切った基準の緩和が欠かせない」(稲葉雅之委員・民間介護事業推進委員会代表委員)。

 また通所系の事業所が、訪問サービスを提供する際の、職員のスキルや適切な提供量の確保などについて、検討や対応が必要という声もある。「訪問サービスの質を担保するため、従来の訪問介護に課している初任者研修等の受講やサービス提供責任者の要件についてしっかりと担保するなどの対応が重要」(及川ゆりこ委員・日本介護福祉士会会長)。

 一方で、制度の複雑化から、創設そのものに慎重だったり、異を唱える委員も少なくなかった。日本経済団体連合会専務理事の井上隆委員は「厚労省が説明する既存の訪問、通所サービスを併用する際の課題は、いずれも事業所間の情報連携ができれば足りること。なぜ新しいサービスが必要なのか。制度の複雑化にもつながるため、十分に整理して検討する必要がある」と主張し、全国老人保健施設協会会長の東憲太郎委員も同調した。日本慢性期医療協会常任理事の田中志子委員も「サービスを増やして複雑にするのではなく、既存サービスの規制緩和を先行してはどうか」と慎重な検討を求めた。

(シルバー産業新聞2023年9月10日号)

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