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《ねんりん開催地》建長寺のけんちん汁 「もったいない」

《ねんりん開催地》建長寺のけんちん汁 「もったいない」

 食はいのちをつなぎ、料理はひとをつなぐ。臨済宗建長寺の創建は、鎌倉時代の1253年。日本最初期の禅寺として知られる。中世、中国に渡るのは命がけ、お金もかかるが、鎌倉の建長寺に行けば、中国から来訪した高僧の有り難い教えが聴ける、と全国から1000人もの修験僧が集まった。そこで振る舞われたのが「建長汁」、けんちん汁だった。修行僧は国々へ帰り、けんちん汁を広めたのではないかという。


 そう話すのは建長寺で広報を務め、いまもけんちん汁を作り続ける三ツ井修司和尚。「根菜たっぷりの澄まし汁です。こころも体も温めます」と話す。三ツ井さんは20代前半まで板前をめざし、料理ばかりを考えて過ごしてきた。建長寺の末寺の娘と結婚したことから、人生が変わった。出家し建長寺で4年間の修行時から当然のようにけんちん汁の担当となった。

 「捨てるような根菜の切れ端をきざんで、油でいためて、やわらかくして具にします。もったいない精神です」。そして「こんにゃくや豆腐なども入れます。とうふ(大豆)は修行僧にとっては大切な栄養源です。味付けは塩と醤油。型崩れしないよう、ちょっとみりんを加えます。味噌なし、砂糖なし。今風に言えばSDGsに通じるでしょうか」と、三ツ井さんは作り方を説明する。
 2013年、ユネスコ(国連教育科学文化機関)が「和食」を日本の伝統的な食文化として世界無形文化遺産に登録した。昨年、農水省HP「うちの郷土料理」で建長寺のけんちん汁が紹介された。神奈川県で選ばれたのは、他に「かて飯」(混ぜご飯)、「石垣団子」(サイコロ状のさつまいも)など。

 昨年末、鎌倉小学校が農水省のモデル事業の1校に選ばれ、担当した鎌倉小学校の奥平直子先生は、「もったいない」と「和食」の2テーマから地元のけんちん汁を選び、建長寺に伺い、三ツ井さんからけんちん汁を取材した。

 「三ツ井さんのお話は、けんちん汁が洗鉢(せんぱつ、食べ終わったお椀をお茶で洗って飲み干すこと)など、思っていた以上に『もったいない』『和食』というテーマに沿った郷土料理でした。ゲストで給食の時間に三ツ井さんに来ていただき、子どもたちといっしょにけんちん汁を食べていただきました」と、奥平先生。この日はスペシャルデイとして、いつもは包丁で切る豆腐もこの日は崩したと言う。

 けんちん汁は、建長寺の修行僧の健康を支え、郷土料理として広く地域の人々に愛されている。今は次代を担う子どもたちに引き継がれようとしている。

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