コラム

AI取り入れ、生活と意欲を支えるサービスを実践

AI取り入れ、生活と意欲を支えるサービスを実践

スコアがモチベーションに

 「八木さん、今回も先月と同じ20点中17点です。しっかり維持されていますよ」「下がっていない?うれしい!先月1点上がったばかりだからね」。ヤマシタ焼津営業所の福祉用具専門相談員・南條真徳さんから報告を受けた利用者の八木とみさん(87)の顔がほころんだ。

 スコアは、同社が導入するAI「CareWiz(ケアウィズ)トルト」(以下、トルト)が八木さんの歩行を解析した結果だ。スマホで5mの歩行動画を撮影すると、2分ほどでAIが解析結果をフィードバックしてくれる。南條さんは、プリントアウトした結果とともに「歩行の維持・向上にAIがおすすめする運動がこちらです」と運動の手順を丁寧に説明していく。スマホも使いこなす八木さん。YouTubeでも運動のやり方が視聴できると聞き、「早速観てみるわね!」 と意気込んだ。
おすすめの運動の手順も丁寧に説明

おすすめの運動の手順も丁寧に説明

細やかな助言や調整で生活を支える

 要支援1の八木さんは、歩行動作も自立だが、過去に自宅のカーペットにつまずき、転倒した経験がある。自宅では歩行器を使用し、出かける時には念のために杖を持っていく。「息子がすごく心配して、カーペットやつまずきそうなものは全部とってしまったの」と八木さんは苦笑いする。

 南條さんから提案された歩行器は、屋内用のかご付きの機種。広い一軒家の自宅で、身の回りのことは何でも自分でする八木さん。洗濯物を運んだり、疲れたりした時にレンタルしている歩行器がとても役立っているのだという。また取材当日は、外出用の杖を新調。南條さんは「もう少し高さを上げたほうが安定しますね」と調整やアドバイスを行っていた。八木さんは、新しい杖の落ち着いた色やデザインに満足げだった。
新調する杖を適切な高さに調整。より安全な歩行をサポートする

新調する杖を適切な高さに調整。より安全な歩行をサポートする

 八木さんがトルトの測定を受けたのは1年前。「自分ではうまく歩けているかなんてよくわからないじゃない?こうして動画や点数でみせてもらえると、ちゃんとわかるし、やる気も湧いてくるの」と評価する。16点と元々高いスコアだったが、先月さらに1点改善した八木さん。「ふらつきが小さくなったっていわれて、すごくうれしかった。でも、(トルトから)外出時には転倒に気を付けるようアドバイスされたから、それはちゃんと気を付けているわよ」と南條さんへ笑いながら話していた。

 「一番の望みは、今の状態と生活を維持すること」と話す八木さん。AIによる測定をうまく取り入れたサービスで、八木さんの暮らしや意欲を支えている。

(シルバー産業新聞2023年1月10日号「現場から生まれる科学的介護」)

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