連載《プリズム》

状態像ではない要介護度

状態像ではない要介護度

 今春、厚労省「福祉用具貸与・販売の種目のあり方検討会」がこれまで4回開かれた。昨年12月23日の政府の経済財政諮問会議「新経済・財政再生計画改革工程表」を受けての開催で、改革工程表の中では、「福祉用具の在り方について、要介護度に関係なく給付対象となっている廉価な品目について、貸与ではなく販売とするなど、引き続き検討する」とされた。

 介護保険上の福祉用具の貸与と販売の制度上の違いは、「貸与」はケアマネジメントの対象であり、モニタリングが行われ、利用者の心身状況などの変化に応じて用具を変えることができる仕組みであるのに対して、「販売」は買ってしまうとモニタリングがなく取り替えができない点。「要介護度に関係なく給付対象」となる品目とは、要介護度によって給付基準を定める「介護保険における福祉用具の選定の判断基準」(2004年)で給付制限とならなかった、歩行器、歩行補助つえ、手すり、スロープの4つの歩行支援関連を指す。

 同検討会では、今夏にも中間まとめが出される見込みで、次期24年改正を審議する介護保険部会に引き継がれる。これまでの議論は、利用者の心身状況の変化に応じて最適な福祉用具を活用できる、福祉用具貸与制度を維持する意見が大勢を占めた観がある。一方の「販売」移行については、何らかの形で課題であるモニタリングの確保を実施する折衷的な案も出されている。
 注目は、5月26日開催の第4回で、先の「福祉用具の選定の判断基準」の見直しが提起されたことだ。今年度から新たに特定福祉用具販売の対象となった「排泄予測支援機器」の留意事項で、「要介護認定『排尿』の直近結果が『介助されていない』『全介助』の者は利用が想定しにくい」と規定された。しかし、利用者の要介護度に依ってだけで用具の利用の是非を決めなかった。要介護度は要介護認定において「介護に要する時間」の推計であり、状態像を示すものではないからだ。科学的介護の推進をめざす介護保険らしい仕組みに見直すチャンスだと思う。

(シルバー産業新聞2022年6月10日号)

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