連載《プリズム》

プリズム(2026月9月10日号) 水害への備え

プリズム(2026月9月10日号) 水害への備え

 記録的な大雨が相次ぎ、国内各地で大きな被害をもたらしている。先月は千葉県や北陸3県が豪雨に見舞われた。今月に入ってからも青森県で線状降水帯が発生するなど、河川の氾濫や浸水などの水害は、今や日本のどこで起きてもおかしくない状況となっている。

 大雨による災害への対応の難しさは、「いつ逃げるか」の判断にある。台風であれば、ある程度は進路や接近時刻を見通せる。しかし近年、大きな被害をもたらす集中豪雨は、短時間で状況が一変する。予測技術は進歩しているが、「いつ、どこで、どれほど降るか」を完全に言い当てることはできない。そのわずかな時間差が命を左右する。
 とりわけ高齢者の避難には、時間がかかる。車いすの人や寝たきりの人、認知症の人を安全な場所へ移すには、人手も車両も必要だ。大雨や洪水などの危険が高まった際、市町村が発令する警戒レベル3は「高齢者等避難」とされる。命を守るために、避難に時間のかかる高齢者などについては、一般の住民より早い段階で動き始めることを求めている。
 だが、避難情報が出されたからといって、実際に要介護高齢者を避難させるのは容易ではない。在宅であれば、誰が迎えに行くのか。どこへ避難するのか。移動手段は確保できるのか。施設でも、夜間の限られた職員で、多数の入所者を短時間に移動させるには限界がある。
 個別避難計画やBCPは、こうした事態に備えるための仕組みだが、計画があることと、実際に避難できることは別の話だ。誰が、いつ、どこへ、どう動くのか。実際に機能してこそ、真価を発揮する。
 「避難できるうちに避難する」--。言葉にするのはたやすいが、身体の自由がきかない高齢者にとって、その一歩を支えるには多くの手が要る。介護現場は人手不足という現実も抱えている。現場だけに委ねるのではなく、平時から国や地域全体でどう支えるかを考えたい。

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