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ケアマネアンケート LIFE「期待する」59%

ケアマネアンケート LIFE「期待する」59%

 4月の介護報酬改定で、今年度から科学的介護情報システム(以下LIFE)の本格運用が始まった。LIFEを通じてデータを集積・分析し介護事業所へフィードバックすることで、科学的介護を促進していくのが狙い。6月からは提出データのフィードバックが始まっている。これを受け、本紙では8月~9月にかけて全国のケアマネジャーを対象に「LIFEの利活用」についてアンケートを実施。106件の回答が得られた。調査の結果「LIFEの運用」について「期待している」と回答したケアマネジャーは59%で、「期待していない」は41%と評価が二分した。「期待している」とした意見の多くが効果的な介護が実現できるとする声だった。一方で「期待していない」とした意見で多かったのはLIFEが適切に運用されるかを疑問視する意見だった。

 LIFEはリハビリテーション・機能訓練、口腔ケア、栄養改善等の自立支援に資する取組のデータを収集・分析し、その結果をもとに得られるフィードバックを各事業所が活用することで、科学的な根拠を持ったケアを実践することを目的とするもの。21年改定の目玉とされ、科学的介護推進体制加算やADL維持等加算、排せつ支援加算、自立支援促進加算など一部の加算算定の際には活用が要件となっている。

 アンケートではLIFEの運用について期待しているかどうかを尋ねたところ「期待している」と答えたケアマネジャーが59%、「期待していない」と応えたケアマネジャーが41%となり評価が分かれる結果となった。

 その理由を自由記述で尋ねたところ、「期待している」と答えたケアマネジャーから多く上げられたのが、効果的な介護が実現できるとする意見。「フィードバックされる情報で、利用者と状況が似ている人のADLや栄養状態を比較することで、その人に適したケアの内容が示され、参考にすることができると思う」(栃木県、女性)や「データとして、取り組み結果が分かり、改善点などが分かりやすくなる」(京都府、男性)といった意見など、データにより有効性が裏付けられたケアの実践に期待を寄せていることが分かった。

 また、ケアの標準化につながるとする意見も多く上げられた。「データ化、分析が今までされてなかったので、LIFEの活用により、自立支援、重度化防止のヒントが分かれば、ある程度介護をマニュアル化できると思う」(栃木県、女性)や「感覚に頼るのではなく、客観的な証拠に基づいた介護ができることで、良い成果や効率化が期待できる」(和歌山県、女性)など、経験を問わず一定の質を担保できるとする意見が寄せられた。

 一方で「期待していない」とした意見で多く上げられたのが、LIFEが最適に運用されるかどうかを疑問視する声。「LIFEを通じて、何らかのエビデンス等を抽出することはできると思うが、それらのエビデンスや、エビデンスをもとにした科学的介護の方法が現場に行き渡るには、相当の年月と労力が必要と思うため」(大阪府、男性)など効果的な運用が行われるまでまだ時間がかかるといった声が多く寄せられた。

 また、「LIFEをどのように活用しているか分からない。勉強会などあれば参加してみたい」(栃木県、女性)など、LIFEについてまだ理解できていないとする声も多かった。

 関連して、「LIFEのフィードバックに従った結果、必要なサービス利用を控えることにより、悪化が考えられるケースもあると思う」(京都府、女性)など、質の向上につながるかを疑問視する意見も上げられた。

 その他の意見では、「パソコン入力の手間が増えることで他の作業が終わらなくなる。最終的には机上の空論になるだけで、現場の意見や現状が必ずしも反映されていると思えない」(茨城県、男性)など、データ入力により業務が増えることを懸念する意見もあった。

 アンケートでは今後フィードバック情報をケアマネジメント業務に活用したいかどうかを聞いた。

 その結果、61%のケアマネジャーが「今後活用してみたい」と回答。「有益な情報が現場にフィードバックされることで、『ただ身の回りの世話をしてくれる』だけの介護ではなく『未来に希望が持てる』介護へと、つないでいきたい」(和歌山県、女性)や「まずは、どんなものなのかを知るために、いろいろな事に取り組みたいと考えている」(栃木県、女性)など、現在は不明瞭な点もあるが、将来へ向けて前向きに取り組みたいと好意的にとらえる意見が多く上げられた。

 一方で、活用したいと回答したケアマネジャーの中でも、「デイサービスのスタッフが、LIFEの仕組み、フィードバックについて理解していない。相談員が分かっていても、他のスタッフは関心がなかったりする」(東京都、女性)など、ほかの事業所との関心度の差を感じている人もいた。

 国は、システムや相談窓口の対応の遅れを受け、4月~6月分のデータ提出を8月10日まで猶予する措置をとっており、今回のアンケートで寄せられた適切な運用への懸念が現実となっている。科学的介護の実現は、エビデンスの確立につながり、介護サービスの評価の標準化ができることが期待されることから、早期のシステムの最適化が望まれる。

(シルバー産業新聞2021年10月10日号)

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