インタビュー・座談会

多彩なレクで心身機能を支える 参入10年目の新機種

多彩なレクで心身機能を支える 参入10年目の新機種

 「JOYSOUND」をはじめ、各種カラオケ・音楽コンテンツの提供を手がけてきたエクシング(名古屋市、水谷靖社長)。2013年に音楽療養コンテンツ「健康王国」を搭載した「JOYSOUND FESTA」を発売し、介護・ヘルスケア市場へ本格参入した。今年4月には機能訓練への実用性をさらに高めた「健康王国DX」をリリース。個別支援とケアの可視化、業務効率化のソリューションとしての期待値は大きい。水谷靖社長に展望を聞いた。

 ――音楽療養コンテンツ「健康王国」開発の経緯は。

 以前より、業務用カラオケ機器は地域の公民館や介護施設への導入実績も多かった。介護施設では娯楽の時間や集団レクリエーションにお使いいただくなかで、「歌う以外にもレクのコンテンツを広げたい」との声を聞く機会が増えてきた。

 利用者が意欲をもって活動・参加し続けるには相応のコンテンツ作りが求められ、ともすれば職員の負担増になりかねない。こうした現場をサポートできる機能を提供したいと考えたのが「健康王国」誕生のきっかけだ。

 2013年、トータルヘルスケア支援機器として健康王国を搭載した「JOYSOUND FESTA」を新発売。18年には新機種「JOYSOUND FESTA2」で機能訓練に活用できるコンテンツをより充実させた。

 ――現在では900以上の豊富なコンテンツが揃います。

 「楽しい」と「飽きない」を常に念頭に置き、音楽エンタテイメント業界でのノウハウを活かしたコンテンツが強みだと自負する。具体的には①体を動かす②観る・癒す③遊ぶ④歌う――の4つに分類され、いずれも映像を見ながら行うのが基本。「体を動かす」は、高齢者に馴染みのある歌謡曲などにあわせて体操する、人気コンテンツの一つだ。

 加えて、介護現場では心身機能のトレーニングにつながることが非常に重要。理学療法士による肩こり・腰痛予防体操や、言語聴覚士による飲み込み・食べる力を鍛えるトレーニングなど、専門職監修のコンテンツも強化している。

 本体はHDMIケーブルでテレビに接続できるので、大画面に映して集団・小集団での機能訓練に活用いただいている現場も多い。

 ――今回リリースした「健康王国DX」は、個別機能訓練をより具現化した仕様となっています。

 最も大きく変わったのは、置き型の機器からタブレット端末になった点。持ち運びやすく、居室での使用も想定した個別機能訓練への利便性を高めた。利用者個々の自立支援に大きく舵を切った21年改定、また新型コロナの影響で集団レクが難しい状況において、ニーズに合致した新サービスだ。

 また、機能訓練の目的に応じて、自動で複数コンテンツを組合せプログラム化する機能を新たに搭載。業務効率化の促進もはかった。従来の「カラオケ+レク」のイメージを脱却し、より機能訓練・リハビリ支援ツールとしての有効活用を期待している。

 製品名の「DX」(デジタルトランスフォーメーション)には、業務のデジタル化で暮らしを豊かにしたいとの思いを込めている。生産性向上・業務効率化だけではなく、利用者の健康増進、地域・社会貢献に叶う製品としての価値を高めていきたい。
 ――40年に向け人材不足が一層厳しくなる中、貴社が貢献できる部分など今後の展望をお話しください。

 健康王国はそもそも、介護現場の工数を減らすことを目的の一つに開発された。対人で行うべき業務には人を重点化し、それ以外を支えるソリューションとして引き続き提案していく。

 ヘルスケア市場は注力すべき分野であることは今後も変わらない。特にこの2年間、コロナ禍でカラオケ業界が大きなダメージを受けたことで、その重要性をより認識した。

 現在は施設・通所系サービスが中心だが、今後は在宅への展開も視野に入れている。例えば、通所介護での機能訓練プログラムを、非利用日に自宅で「宿題」として行い、ケアマネジャーなどが進捗をサポートするようなしくみが想定される。

 また、当社は家庭向けカラオケ機器も取り扱っている。ここに健康増進のコンテンツを展開することも可能だ。要介護認定を受けていない人へのアプローチも、社会貢献への課題だと考える。

 ――一般向けでは、被災地でのコミュニティ形成にも取組んでいました。

 岩手では東京大学の研究のもと、大槌町で多世代の交流拠点(コミュニティプレイス)づくりに参画した。震災が原因で住民が散り散りになってしまった地域に、集まる場所・楽しむ場所を設けることが目的。地域のカルチャーセンターにJOYSOUND FESTAを設置し、1時間ほどのプログラムを提供したところ、高齢女性を中心に1回10~20人ほどのグループで利用いただくケースが多かった。

 また、16年の地震で甚大な被害を受けた熊本では、仮設住宅の集会所に設置し閉じこもり予防をサポート。ここでは自治会など地元の人にプログラム進行を一部任せるなど、担い手の養成も試行的に行った。

 今後目指すべき介護予防、通いの場の一つの形となるだろう。

個別機能訓練加算の運用効率化に

エクシング 技術戦略部 伊藤秀樹 部長

エクシング 技術戦略部 伊藤秀樹 部長

 これまで機能訓練・レクの企画は、各現場がコンテンツを工夫して組合せ、1日や1週間のメニューを作成していた。しかし900以上のコンテンツから絞り込むのは負担が大きく、職員のスキルにも左右されやすい。また、例えば「入浴のADL向上」に対し、最適なコンテンツが分かりづらいといった課題もあった。

 「健康王国DX」の開発にあたっては、理学療法士が現有のコンテンツを見直し、目的別の機能訓練プログラムに整理。「起き上がり」「屋外移動」「嚥下」など16種類のADLに応じた48のプログラムを用意した。1プログラムにつき3~4コンテンツ、10~15分ほどで構成される。利用者個々に応じた機能訓練を提供し、かつ現場のさらなる省力化を実現する新機能だ。アプリ化したことで、報酬改定などにも柔軟にバージョンアップが行える点も利便性が高い。もちろん、これまで通りカラオケとしても利用できる(約7万曲収録)。

 コンテンツの実施結果については、指導員・利用者・日時とともに記録され、自立支援・重度化防止へのPDCAが管理しやすい。「レポート機能」は家族等への報告に使える。

 さらに今回、オプションとしてMoff(東京都港区、土田泰広社長)が開発した、心身機能を測定するウェアラブル端末や、バーセルインデックスの測定・管理アプリ「モフトレBI」などアウトカム評価を効率化する各種アプリとの連携も可能にした。

 また、健康王国DXのサービスイン時には、機能訓練の支援サービスを展開しているフリーケア(大阪府羽曳野市、和田峻介社長)のアプリケーションを初期搭載する。アプリケーションでは機能訓練に関する研修動画やQ&A集、必要書類のセルフチェックなどを行うことが可能。今後も有用なアプリケーションサービスを提供している企業と健康王国DX端末をプラットフォームとしたアライアンスも検討を進めたい。

収益改善ツールに

 従来機種は「カラオケ機器」が主体だったことで、導入費が障壁になっていた。タブレット化した「DX」は初期費用無料の月額定額制。通信はSIMを内蔵し、Wi-Fi等の環境整備も不要だ。

 何より、個別機能訓練加算の取得、ひいては介護経営の新たな支援ツールとして、ぜひご活用いただきたい。

■「健康王国DX」公式サイト
https://kenkou-oukoku.com/product/js-dx

■問い合せはこちら
https://kenkou-oukoku.com/contact

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