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「リラックス」を可視化して商品の信頼を高める/村田裕之(186)

「リラックス」を可視化して商品の信頼を高める/村田裕之(186)

 《その商品・サービスで本当にリラックスできている?》
 長引くコロナ禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻と円安による物価高で先行き不安感が増大し、精神的なストレスを感じる人が増えているようだ。
 こうした状況のせいか、「リラックスできる」ことを効能としてうたう商品・サービスが増えている。「リラクゼーションマッサージ」「リラクゼーション音楽」「リラクゼーションドリンク」など枚挙にいとまがない。
 だが、こうした商品・サービスで利用者が本当にリラックスできるのか、科学的に検証されていないものが多いようだ。

リラックスできているかは自律神経の状態でわかる

 私たちがリラックスできているかどうかは、実は生体情報の収集と解析で評価できる。

 一つ目の方法は「自律神経」の状態を心電図による「心拍変動」から評価する方法だ。自律神経には交感神経と副交感神経の二つがあり、ストレス状態では交感神経が優位となり、リラックス状態では副交感神経が優位となる。

 心拍変動とは心電図で見られる心拍間隔の周期的な変動をいう。これには呼吸変動に対応する高周波変動(HF)と、血圧変動に対応する低周波変動(LF)が含まれる。

 リラックス状態、つまり副交感神経が優位なときには、HF成分とLF成分が現れる。一方、ストレス状態にある場合、つまり交感神経が優位なときには、LF成分が現れるものの、HF成分が減少する。

 従って、LF/HFの値はリラックス状態で小さくなり、ストレス状態で大きくなる。このLF/HFの値をストレス指標として評価する。

脳活動の状態でもリラックスできているかわかる

 二つ目の方法は、安静時の脳活動の左右差からストレス状態を評価する手法だ。脳活動計測にはNIRS(近赤外光計測装置)という装置を使う。

 計測の結果、脳の右側の反応が高いと眠気や疲労が大きい状態で、逆に脳の左側の反応が高いと眠気や疲労が小さい状態であることが知られている。

 この原理を利用した「安静時左右差指標」(LIR:Laterality Index at Rest)によって、リラックスできているかどうかを評価できる。

美容室の施術でどれだけリラックスできるか?

 写真は、私が役員を務める東北大学ナレッジキャストと東北大学と日立ハイテクらによるハイテクベンチャー、NeU(ニュー)が、美容室のヘッドキュア施術でどれだけリラックスできるかを実際に検証した時の風景だ。

 ヘッドキュアとは美容室向け化粧品の販売を行うイーラルが開発したオイルマッサージとシャンプーによる独自の施術だ。施術を受けている利用者のストレス指標(LF/HF)が徐々に低下し、リラックスしていく傾向が統計的有意に見られる()。

きちんとリラックスできると認知機能も向上する

 本検証では施術の前後で認知機能検査も行った。興味深いのは施術によってきちんとリラックスできると、認知機能の一種である「集中力」も向上することだ。

 ヘッドスパ施術を提供する美容室は数多くあるが、施術による健康増進効果を科学的に検証した例はこれまでほとんどなかった。

 リラックス状態を可視化する技術により、科学的エビデンスを取得して効果の信憑性を高めることで、顧客からの高い信頼を得られるだろう。
(シルバー産業新聞2022年10月10日号)

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