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次期介護報酬改定の審議がスタート、来年1月に諮問答申
2024年度(令和6年度)介護報酬改定の審議が5月24日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会(分科会長=田辺国昭国立社会保障・人口問題研究所所長)でスタートした。新報酬は来年1月頃に示される予定だ。
同分科会では、訪問介護や通所介護といったサービスごとの審議のほかに、分野横断の柱となるテーマを設定して検討を行うのが通例となっている。厚労省は今回、①地域包括ケアシステムの深化・推進②自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進③介護人材の確保と介護現場の生産性の向上④制度の安定性・持続可能性の確保――の4項目を提案した。前回(2021年度)改定で柱の一つだった「感染症や災害への対応力強化」のテーマは、これまでの新型コロナウイルス感染症への対応の経験などを踏まえ、今回外している。
今後の審議のスケジュール
厚労省が示した同分科会の今後のスケジュール案は以下の通り。
2023年6月~夏頃 主な論点について議論
9月頃 事業者団体などからのヒアリング
10~12月頃 具体的な方向性について議論
12月中 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ
※地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う。
2024年1月頃 介護報酬改定案の諮問・答申
報酬の新単価や加算の算定要件などは来年1月頃に示される予定。その後、算定の留意事項やQ&Aなどが発出され、4月に改定される。
2023年6月~夏頃 主な論点について議論
9月頃 事業者団体などからのヒアリング
10~12月頃 具体的な方向性について議論
12月中 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ
※地方自治体における条例の制定・改正に要する期間を踏まえて、基準に関しては先行してとりまとめを行う。
2024年1月頃 介護報酬改定案の諮問・答申
報酬の新単価や加算の算定要件などは来年1月頃に示される予定。その後、算定の留意事項やQ&Aなどが発出され、4月に改定される。
各委員の発言要旨(発言順)
長内繁樹委員(全国市長会、豊中市長)
・処遇改善加算の対象拡充など、職員全体の賃金水準の底上げが必要
・ケアマネジャーの確保の議論も必要
鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)
在宅の認知症高齢者を支えるためには訪問介護の充実を求めたい。そのために、まず居宅サービス、特に訪問介護の充足率の調査をすべき
𠮷森俊和委員(全国健康保険協会理事)
分野横断テーマに、医療介護連携を個別テーマとして追加すべき。同時改定は医療介護連携を深める最大のチャンス
石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事)
「生産性向上」というフレーズに対する介護現場の抵抗感は小さくない。業務改善と表現を変えた方が現場の共感を得られ、取り組みの推進に繋がる
小林司委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)
介護現場で働く人に処遇改善が行き渡るよう、介護報酬体系の簡素化も意識しつつ、処遇改善を行うための議論を行うべき
古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)
・分野横断テーマ「介護人材確保と介護現場の生産性の向上」の推進には、介護事業所で働く全ての職員の処遇改善が必須。「介護人材の確保及び処遇改善と介護現場の生産性の向上」と処遇改善のフレーズを明示した上で議論すべき
・物価高騰が事業所運営に多大な影響を及ぼしている。基本報酬での対応や基準費用額の物価スライドなどの対応が不可欠
井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)
・給付の適正化や重点化を徹底していかなければならない。スクラップ&ビルドできる部分がないか、地域ごとに給付のバラツキがないのかどうかなどの検証を進めるべき
・処遇改善は、昨年度まで実施された改定の検証をしっかり行ってもらいたい。処遇改善のために他でのメリハリ付けが重要
【代理出席】寺原朋裕参考人(全国知事会)
・配置医師による急変時の対応については、配置医師緊急対応加算の算定率が低い。緊急時の相談対応や往診といった医療機関との連携促進によって、施設での医療提供体制の強化につながる評価の検討が必要
・処遇改善加算をさらに簡素化し、事業所・自治体の事務負担を軽減すべき
・現行では訪問系や多機能系に限定されている離島等の特別地域加算の適用対象を拡大すべき
伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)
現役世代は、これ以上の負担増に耐えられない。テクノロジー活用、タスクシェアリング・シフティング、経営の大規模化、老健・医療院の多床室の室料負担導入、福祉用具貸与・販売のあり方などについて、制度の持続可能性の確保を前提に検討すべき
及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)
・複合型サービスの訪問と通所の組み合わせについて、サービスの質を確保されるよう、基準の検討は慎重に行うべき
・チームリーダーとしての役割を果たすため、訪問介護以外のサービスでも介護福祉士の配置を制度上の位置づけを求める
荻野構一委員(日本薬剤師会常務理事)
・薬の副作用にはふらつきなどリハビリテーションに関係するものや、嚥下機能など食生活や栄養に関するものなどもある。薬剤師との連携による対応を検討していくべき
・医療用麻薬の調剤を行うことが可能な薬局は全国に約5万2000施設あるが、麻薬の投薬は患者さんの状態の変化によって細かい調整を要するもの。必要な容量、規格の麻薬が常に薬局に備蓄されているわけではなく、厳格な取扱いが必要であるため、薬品卸からの取り寄せに時間がかかる場合もある。必要となる麻薬の備蓄や夜間休日対応は、医療機関や関係機関などとの密接な情報共有、それに基づく連携体制を構築しておくことで、薬局が円滑に対応できるので、その実現のための検討が必要
濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)
・中央福祉人材センターの「福祉分野の求人求職動向」によると、21年度のケアマネジャーの有効求人倍率は3.04倍で対前年度0.51ポイント増。介護職員、その他の職種の中で最も伸びが大きい。例えば、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算に居宅介護支援事業所のケアマネジャーも対象に含めるなど、賃金改善可能な方策によって人材確保の改善につなげるべき
・法改正により、介護予防支援事業所の指定対象が居宅介護支援事業所へ拡大される。業務量と報酬のバランス改善を考慮するとともに、現在の居宅介護支援事業所における各種の体制加算が継続でき、円滑な指定が受けられるような配慮が必要
小玉剛委員(日本歯科医師会常務理事)
誤嚥性肺炎予防は、施設だけでなく、在宅要介護者や病院・診療所に係る患者にとっても重要なこと。誤嚥性肺炎予防の一体的な実施が必要だ
田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)
・医療・介護の同時改定なので、医療と介護の連携強化についても、分野横断テーマに明示してはどうか
・介護事業所・施設での医療対応、看取り体制整備が急務。特に暮らしの場での療養継続のための体制整備、連携促進を図るため、看護職の確保や処遇改善も重要なテーマだ
東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)
・今回は6年に一度の医療と介護の同時改定。医療と介護ですり合わせないとできないような同時改定ならではのことをしっかり議論すべき
・当協会を含む介護関連11団体で、物価高騰、賃上げ人材流出に関わる調査を行ったところ、電気やガスは40~50%高騰。また、ベースアップでの賃上げを実施できた事業所は33.5%に止まり、全体の賃上げ率も1.42%と一般企業の春闘における3.69%とかけ離れている。また医療・介護分野の正社員の異業種への離職者数は前年度から3割近く増えている。このままでは、介護業界が破綻するおそれがある。適切な処遇改善を行うための財源確保が不可欠
稲葉雅之委員(民間介護事業推進委員会)
・職員の年齢分布などを踏まえた上で、今後の人材確保対策を計画していく必要がある。若い世代をもっと増やすためにも、安心して働き続けられるような処遇が極めて重要
・人材や施設整備など、限られた社会資源の需給バランスが崩れないように広域、包括的に調整を図るべき
田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)
・訪問サービスなどは移動時間に非常に大きな労力と時間を取られている
・今回はトリプル改定。医療・介護のみならず、障害福祉分野も含めた意見交換の場が必要だ
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)
報酬抑制は、人材確保にも逆行するもの。制度の安定性・持続可能性の確保のためには、財源確保が不可欠
堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)
最近の急激な物価高騰に対しては、すぐに対応しなければ経営を圧迫させ、従来の報酬改定のプロセスでは難しい状況がある。さらに物価の動向などは今後の見通しも不透明な中、どのように対応すべきかを議論する必要がある。また現行の実態調査などのタイムラグを生じてしまうので、データベースの活用などの検討も必要
・処遇改善加算の対象拡充など、職員全体の賃金水準の底上げが必要
・ケアマネジャーの確保の議論も必要
鎌田松代委員(認知症の人と家族の会理事)
在宅の認知症高齢者を支えるためには訪問介護の充実を求めたい。そのために、まず居宅サービス、特に訪問介護の充足率の調査をすべき
𠮷森俊和委員(全国健康保険協会理事)
分野横断テーマに、医療介護連携を個別テーマとして追加すべき。同時改定は医療介護連携を深める最大のチャンス
石田路子委員(高齢社会をよくする女性の会理事)
「生産性向上」というフレーズに対する介護現場の抵抗感は小さくない。業務改善と表現を変えた方が現場の共感を得られ、取り組みの推進に繋がる
小林司委員(日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)
介護現場で働く人に処遇改善が行き渡るよう、介護報酬体系の簡素化も意識しつつ、処遇改善を行うための議論を行うべき
古谷忠之委員(全国老人福祉施設協議会参与)
・分野横断テーマ「介護人材確保と介護現場の生産性の向上」の推進には、介護事業所で働く全ての職員の処遇改善が必須。「介護人材の確保及び処遇改善と介護現場の生産性の向上」と処遇改善のフレーズを明示した上で議論すべき
・物価高騰が事業所運営に多大な影響を及ぼしている。基本報酬での対応や基準費用額の物価スライドなどの対応が不可欠
井上隆委員(日本経済団体連合会専務理事)
・給付の適正化や重点化を徹底していかなければならない。スクラップ&ビルドできる部分がないか、地域ごとに給付のバラツキがないのかどうかなどの検証を進めるべき
・処遇改善は、昨年度まで実施された改定の検証をしっかり行ってもらいたい。処遇改善のために他でのメリハリ付けが重要
【代理出席】寺原朋裕参考人(全国知事会)
・配置医師による急変時の対応については、配置医師緊急対応加算の算定率が低い。緊急時の相談対応や往診といった医療機関との連携促進によって、施設での医療提供体制の強化につながる評価の検討が必要
・処遇改善加算をさらに簡素化し、事業所・自治体の事務負担を軽減すべき
・現行では訪問系や多機能系に限定されている離島等の特別地域加算の適用対象を拡大すべき
伊藤悦郎委員(健康保険組合連合会常務理事)
現役世代は、これ以上の負担増に耐えられない。テクノロジー活用、タスクシェアリング・シフティング、経営の大規模化、老健・医療院の多床室の室料負担導入、福祉用具貸与・販売のあり方などについて、制度の持続可能性の確保を前提に検討すべき
及川ゆりこ委員(日本介護福祉士会会長)
・複合型サービスの訪問と通所の組み合わせについて、サービスの質を確保されるよう、基準の検討は慎重に行うべき
・チームリーダーとしての役割を果たすため、訪問介護以外のサービスでも介護福祉士の配置を制度上の位置づけを求める
荻野構一委員(日本薬剤師会常務理事)
・薬の副作用にはふらつきなどリハビリテーションに関係するものや、嚥下機能など食生活や栄養に関するものなどもある。薬剤師との連携による対応を検討していくべき
・医療用麻薬の調剤を行うことが可能な薬局は全国に約5万2000施設あるが、麻薬の投薬は患者さんの状態の変化によって細かい調整を要するもの。必要な容量、規格の麻薬が常に薬局に備蓄されているわけではなく、厳格な取扱いが必要であるため、薬品卸からの取り寄せに時間がかかる場合もある。必要となる麻薬の備蓄や夜間休日対応は、医療機関や関係機関などとの密接な情報共有、それに基づく連携体制を構築しておくことで、薬局が円滑に対応できるので、その実現のための検討が必要
濵田和則委員(日本介護支援専門員協会副会長)
・中央福祉人材センターの「福祉分野の求人求職動向」によると、21年度のケアマネジャーの有効求人倍率は3.04倍で対前年度0.51ポイント増。介護職員、その他の職種の中で最も伸びが大きい。例えば、現行の処遇改善加算や特定処遇改善加算に居宅介護支援事業所のケアマネジャーも対象に含めるなど、賃金改善可能な方策によって人材確保の改善につなげるべき
・法改正により、介護予防支援事業所の指定対象が居宅介護支援事業所へ拡大される。業務量と報酬のバランス改善を考慮するとともに、現在の居宅介護支援事業所における各種の体制加算が継続でき、円滑な指定が受けられるような配慮が必要
小玉剛委員(日本歯科医師会常務理事)
誤嚥性肺炎予防は、施設だけでなく、在宅要介護者や病院・診療所に係る患者にとっても重要なこと。誤嚥性肺炎予防の一体的な実施が必要だ
田母神裕美委員(日本看護協会常任理事)
・医療・介護の同時改定なので、医療と介護の連携強化についても、分野横断テーマに明示してはどうか
・介護事業所・施設での医療対応、看取り体制整備が急務。特に暮らしの場での療養継続のための体制整備、連携促進を図るため、看護職の確保や処遇改善も重要なテーマだ
東憲太郎委員(全国老人保健施設協会会長)
・今回は6年に一度の医療と介護の同時改定。医療と介護ですり合わせないとできないような同時改定ならではのことをしっかり議論すべき
・当協会を含む介護関連11団体で、物価高騰、賃上げ人材流出に関わる調査を行ったところ、電気やガスは40~50%高騰。また、ベースアップでの賃上げを実施できた事業所は33.5%に止まり、全体の賃上げ率も1.42%と一般企業の春闘における3.69%とかけ離れている。また医療・介護分野の正社員の異業種への離職者数は前年度から3割近く増えている。このままでは、介護業界が破綻するおそれがある。適切な処遇改善を行うための財源確保が不可欠
稲葉雅之委員(民間介護事業推進委員会)
・職員の年齢分布などを踏まえた上で、今後の人材確保対策を計画していく必要がある。若い世代をもっと増やすためにも、安心して働き続けられるような処遇が極めて重要
・人材や施設整備など、限られた社会資源の需給バランスが崩れないように広域、包括的に調整を図るべき
田中志子委員(日本慢性期医療協会常任理事)
・訪問サービスなどは移動時間に非常に大きな労力と時間を取られている
・今回はトリプル改定。医療・介護のみならず、障害福祉分野も含めた意見交換の場が必要だ
江澤和彦委員(日本医師会常任理事)
報酬抑制は、人材確保にも逆行するもの。制度の安定性・持続可能性の確保のためには、財源確保が不可欠
堀田聰子委員(慶応義塾大学大学院健康マネジメント研究科教授)
最近の急激な物価高騰に対しては、すぐに対応しなければ経営を圧迫させ、従来の報酬改定のプロセスでは難しい状況がある。さらに物価の動向などは今後の見通しも不透明な中、どのように対応すべきかを議論する必要がある。また現行の実態調査などのタイムラグを生じてしまうので、データベースの活用などの検討も必要