連載《プリズム》

HCR11万人の思い

 9月27日~29日の3日間、東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展(HCR2023)には、昨年の8万8000人を大きく上回る11万3139人が来場した。障がい者から高齢者までの様々な福祉用具が展示され、年々品質と機能が向上している。バイタルセンサーや通信機能のある福祉用具など利用者状況が即時に把握できるものが増えた印象だ。

▼デンマーク大使館では厚生大臣が来日して、労働力不足と高齢者増大という両国の共通課題を、優れた福祉用具の開発と普及で乗り切ろうと語った。同国では年齢を問わず税金で必要な福祉用具がレンタルを基本にして供給されている。大使館で行われたシンポジウムに日本から参加した産業技術総合研究所の山内閑子さんは、「デンマークでは、道具を上手く使うことに力を入れ、そのための情報活用・評価の技術開発が盛ん。福祉テクノロジーの介護現場への導入の成功には、その理解と教育が重要と認識されている」と話した。

▼日本では、テクノエイド協会の福祉用具情報システム(TAIS)の登録件数は、1万6491件。このうち約1.3万件が福祉用具貸与の対象。区分支給限度基準額の中での自由価格制とケアマネジメントによる原則貸与の仕組みが、これだけの多種多様な用具を介護保険で活用できるようにした。

▼往年の名作映画「2001年宇宙の旅」で登場する長方形の物体、モノリスは、人類を人類たらしめた道具の活用を象徴している。これから全都道府県に設置される予定の「介護生産性向上総合相談センター」は、まさに道具(テクノロジー)の活用推進に他ならない。人の歴史は、モノによって人でしかできない範囲を狭めてきた。HCR11万人の来場者も介護現場を変えたいとの一心に違いない。
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