在宅栄養ケアのすすめ

在宅栄養ケアのすすめ :中村育子           実践力がつく卒後研修を

 今年1月、日本栄養士会が厚生労働大臣へ「栄養政策の充実強化」に関する要望書を提出しました。内容は大きく2つ。▽管理栄養士・栄養士(以下「管理栄養士等」)の卒後研修義務化を栄養士法に規定すること▽厚労省の栄養指導室を「省令室」に昇格させること――です。

 前者では、管理栄養士等の担うべき業務がより複雑・困難になってきていることを踏まえ、具体的には①医療・福祉分野における栄養管理の推進②幅広い他分野との連携した栄養施策の推進③災害支援における栄養・食生活支援を担う体制の強化――に関する資質向上を卒後研修ではかるべきだと主張しています。

 介護分野ではしばしばケアマネジャーの更新研修の是非が話題になりますが、国家資格である栄養士・管理栄養士は永久資格、つまり有効期限もなく更新(手続、研修)も不要です。
 多くは養成課程のある4年制大学や専門学校などを卒業し、国家試験を受けるルートです。ちなみに管理栄養士国家試験は200問中120問正解(6割)が合格ラインです。

 言い換えると、資格取得後の「実践力」については基本的に職場に一任されてきました。ところが、高齢化の進展に伴い栄養施策の位置づけが国レベルで高まり、例えば①の「医療・福祉分野」では、診療・介護報酬での栄養評価・支援に関する加算が充実。昨年には、管理栄養士等が医療法上で医療職種に明確化されました。

 また、③の災害支援も強化分野の一つです。昨年閣議決定した、いわゆる「骨太の方針」では災害派遣医療チームに日本栄養士会災害支援チーム(JDA―DAT)が加わりました。防災基本計画でも、管理栄養士等が避難所の被災者の栄養・食支援に必要な措置を講じるよう努めることが明記されています。

現場任せの限界

 管理栄養士等に必要な実践力を私なりに整理すると、「臨床(対患者・利用者)」「多職種連携」「在宅・地域」の3つです。いずれも地域包括ケアシステムの中に管理栄養士等が加わるため不可欠な職能となります。
 では、こうした職能を活かせる管理栄養士等がどれだけいるか?と現場を見渡すと、あまりにもバラつきが大きい。そもそも職場が医療機関、介護事業所、薬局、給食施設、食品メーカーなど多様であることも一因です。

 卒後研修の義務化はこうした現状に対し、実践力の底上げをはかる考えです。管理栄養士等の職位、つまり処遇を高めていきたい意向もあるでしょう。
 具体的な研修内容についてはおそらく、栄養士会が運営する生涯教育制度、認定制度を活用していくことになります。病院・施設の管理栄養士等は多くが1人配置ですので、オンライン(オンデマンド)の活用など、研修時間確保への配慮は必要です。

 なお、認定制度の中には「在宅訪問管理栄養士」があります(私も講義の一部を担当しています)。実務経験5年(900日)以上の管理栄養士が対象で、eラーニングの受講に加え、在宅栄養の臨床レポートを提出しなくてはなりません。在宅栄養の実践力にかなりフォーカスした内容になっています。2011年度にスタートし、昨年4月時点で1522人が認定を受けています。
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