コラム

ケーススタディ 「姿勢保持」で介護負担を軽減!

ケーススタディ 「姿勢保持」で介護負担を軽減!

 今年33歳になったYさんは、染色体に異常があるため、現在も生活全般にわたって全介助が必要です。特に体重が25kgを超えてからは、移乗と移動の介助負担が大きくなり、さまざまな福祉用具を活用するようになりました。

車いす、 食事、 入浴時…。福祉用具で姿勢が安定

 週3回のデイサービスや頻繁に通っている病院までの移動には、車いすと福祉車両を使っています。座位は比較的安定しているのですが、最近は側弯(そくわん)が進行し、けいれん発作による転倒が多くなったこと、さらに送迎サービスを使うようになったため、昨年の秋にティルト・リクライニング式車いすを新調しました。安全確保と姿勢を安定させるため、腰ベルトとクッション入りカットアウトテーブル(体に沿って切り込みを入れた作業机)を装着しています(写真1)
 4年前に購入した福祉車両は7人乗りのワゴンで、中央の座席は90度回転し外にスライドするリフトアップシートです。車の助手席側をリビングルームの窓の近くに寄せて駐車すると、スライディングボードとスライディングシートを使って、Yさんをリビングルームから直接車のシートに移乗させることができます(写真2)。これで車への移乗介助が安全かつ容易になりました。
 前述したように座位が不安定になったため、食事のときに座るいすを筆者がYさんの身体寸法に合わせて製作しました。床に座った状態からスライディングシートを使っていすに移乗しやすいように、シート前端の高さは床から20mmに抑え、さらに傾斜をつけています。坐骨の前には前ずれを防ぐため、厚さ30mmのアンカーサポートをつけています。クッション入りのカットアウトテーブルと左右の骨盤サポートによって座位姿勢の安定を図っています(写真3)

 入浴のときの座位姿勢も不安定になったので、アームサポート付きシャワーチェアを導入しました。Yさんは週3回の入浴サービスを受けているのですが、介護に来ているヘルパーさんが、以前のスツール型シャワーチェアより姿勢が安定し、安心して介助できるようになったと感想を述べています。折りたたみ式なので、使用しないときに邪魔にならないのが家族にも好評です。

 Yさんのように重度障害のある方を自宅で介護されている家族は、ほとんど24時間付き添いながら日常生活のあらゆる場面で心身ともに負担を強いられています。特に移乗と移動の介助は負担が大きく、事故につながることも少なくありません。車いすや移乗補助具のような福祉用具を活用することによって、安全で負担の少ない介護を実現でき、本人と介護者のQOLの向上に繋がると考えます。
東洋大学ライフデザイン学部 人間環境デザイン学科 教授 繁成剛さん

東洋大学ライフデザイン学部 人間環境デザイン学科 教授 繁成剛さん

1979年九州芸術工科大学大学院修了後、北九州市立総合療育センターにリハ工学技士として勤務。2001年に近畿福祉大学教授、07年から東洋大学人間環境デザイン学科教授に就任。96年から17年まで日本リハビリテーション工学協会理事、監事、会長を歴任。95年IKEA賞(スウェーデン)、2011年飯田賞(日本義肢装具学会)受賞。

(福祉用具の日しんぶん2018)
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