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介護を身近に捉え、関わってもらいたい/厚労省 柴田拓己さん【介護人材 3】

介護を身近に捉え、関わってもらいたい/厚労省 柴田拓己さん【介護人材 3】

 高齢者や障がい者を支える介護人材。社会的な意義、やりがいのある仕事ですが、人材確保が課題です。「介護の日」をきっかけに、介護の仕事についても考えてみませんか。

地域の支え合いを促す

 ―――「介護の日」とは、どのような日ですか。
 高齢化に伴って、介護が必要な方が増えてきています。さらに、認知症高齢者、高齢単身世帯・高齢夫婦のみの世帯の増加、世帯構成の変化、社会経済状況の変化、障がい者の社会参加や地域移行の推進により、地域で暮らす障がい者が増加し、生活支援も含めた介護ニーズが複雑化・多様化・高度化してきています。
 このため、介護を身近なものとして捉えてもらい、それぞれの立場で考え、関わってもらうことが大事になっています。
 介護についての理解や認識を深めてもらおうと、厚生労働省では2008年から11月11日を「介護の日」と定めています。「いい日、いい日」と覚えやすく、親しみやすい語呂合わせにしています。
 ――どんなことが行われるのですか。
 11月11日を中心に、その前後2週間を啓発活動の重点実施期間として、国、地方公共団体、関係機関・団体が連携し、全国各地で介護にまつわる様々な取組みを実施しています。
 例えば、介護に関する市民向けの公開講座や、介護・福祉に関する相談、介護技術の講習、介護の仕事体験、福祉機器展の開催などが実施されています。
 地域によっては、最新の介護ロボットの体験や介護映画の上映、高校生による介護実技発表など、「介護の日」にふさわしい、多彩な取組みが行われていますので、是非、調べて参加してみてください。
 ――若い人などにとっては、介護はあまり実感が持てない、遠い存在なのではないでしょうか。
 自分が置かれた状況によって介護との関わりは異なってきますが、例えば、私は今年の3月まで自治体で保健福祉行政に携わっていましたが、地域に出てみると、ゴミ捨てに困っている人や、買い物ができなくて困っている人が、おられました。
 直接的な介護というよりは、少し広い捉え方になりますが、身近な範囲でそうした人たちのお手伝いをすることで、介護を必要とする人やその家族が助かるだけでなく、地域が変わってきたりもします。
 「介護の日」では、介護についての理解や認識を深めてもらうとともに、自分をとりまく地域社会の支え合いや交流を促進する日にしてもらえればと考えています。

介護を身近に考え、関わってもらう

 ――現在、介護の現場では、不足する人材をいかに確保していくかが課題になっています。
 介護人材の確保については、現在、国を挙げて取り組んでいます。今年4月からは介護職員に対し、月額平均1万円相当の処遇改善を実施しているほか、就業促進や離職防止などにも取組み、総合的な介護人材確保対策を進めています。
 具体的には、介護福祉士を目指す学生に、返済免除付きの奨学金制度や、いったん介護の仕事から離れた人が、再び仕事に就く場合の準備金の貸付制度を設けたり、介護の現場でロボットやICTが活用されるように支援しています。ほかにも、子育てしながら働く人のことを考え、介護施設などで保育施設の設置や運営に対する補助制度もあります。
 また、介護分野への参入促進では、来年度から入門研修を導入し、介護人材のすそ野を拡げていくことも考えています。
 ――介護分野にはすでに初任者研修がある中で、新たに入門研修を導入する狙いは何ですか。
 介護を経験したことがない人が、介護分野に参入するきっかけをつくるためです。未経験者が介護の仕事に就くための障壁になっていることを調べてみますと、介護保険等の制度に関する内容や、トイレへの誘導等の移動や衣服の着脱などの基本的な介護の方法、認知症に関する基本的な理解、緊急時の対応方法などに不安を感じていることが分かりました。このため、入門的な知識や技術を修得するための研修を導入することで、そうした不安を払拭でき、中高年齢者も含め、多様な人材の参入が期待できると考えています。
 ――介護の仕事の魅力をどのように考えていますか。
 3つの言葉で表現すると、「深さ」「楽しさ」「広さ」だと思います。
 「深さ」と言うのは、専門性に基づいて高齢者や障がい者の尊厳の維持と自立を追求していく部分です。「楽しさ」は自ら考えて工夫した結果、本人の生活の質が高まり、ひいては地域のまちづくりなどにつながっていくという楽しさ。「広さ」は、働き方の選択肢の多さ、さらには産業としての広がりの可能性があることです。
 ――介護の深さ、楽しさ、広さですね。
 また、介護というのは、その人のこれまでの人生を受け止め、その人の生き方を理解した上で、これからの生き方を支援し、その人の生活を創り上げていく仕事だということです。もちろん、一人だけでできる話ではありませんが、他の専門職や家族あるいは地域などとチームになって、生活の質に向き合っていく非常にクリエイティブな仕事だと思います。
 もう一つは、社会を支える仕事であることです。直接的には目の前にいる人に介護を行うことや周囲で介護をする家族などの人に対して、どのように介護をしていけばよいかという相談やアドバイスをする役割も担っています。介護する人がいなければ、自分らしい暮らしを続けることができなくなる人や、介護のために仕事が続けられない人がたくさんでてきます。目の前の人や家族への支援が、ひいてはその地域、社会を支えている重要な仕事になっています。
 そうしたことを国、地方自治体、関係団体、現場が一丸となって、介護の魅力として発信していく必要があると思っています。
(しばた・たくみ)厚生労働省 福祉人材確保対策室長 
 1999年厚生省入省。社会保障参事官室、雇用・均等家庭局、保険局、国際課等を経験し、2010年~ 13年まで在中国日本大使館に一等書記官として出向、14年岡山市保健福祉局副局長(保健医療衛生分野を担当)、17年より現職

(介護の日しんぶん2017年11月11日)


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