コラム

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【段差解消機編】(連載12)

これからの福祉用具提案 根拠ある複数提示【段差解消機編】(連載12)

 昨年4月から義務化された福祉用具貸与の「機能や価格帯の異なる複数の商品の提示」。本連載では現場で想定されるケースから、具体的な複数提示の例を解説します。今回のテーマは段差解消機です。

Mさんの事例

 自宅で夫と二人暮らしのMさん(65歳女性・要介護3)は、糖尿病が原因で右足をひざ下15㎝で切断しました。家の中は自走式車いすで移動しています。また持ち上げ型歩行器を使って立ち座りの練習や義足を着けて数メートルの歩行訓練も行っています。家から出るのは夫に付き添ってもらって行く月1回の通院だけです。Mさんの希望は、車いすを利用して一人で外に出かけて買い物などを楽しむこと。住環境は、玄関は十分広く、上がり框の段差30㎝、リビングと庭の段差が40㎝です。

設置場所などで複数提案

 Mさんのニーズから、選定提案の「福祉用具が必要な理由」は「一人で外出し、買い物などをしたいので段差解消機を利用します」と設定します。段差解消機の選定では、車いすの操作や移乗などの動作が自立しているかと、段差などの住環境に対するアセスメントが特に重要です。Mさんの動作をアセスメントしたところ、ベッドから車いすへの移乗などは問題なさそうです。また自分で段差解消機のリモコン操作ができるかどうかも確認しました。住環境をみると、玄関にも庭にも段差解消機を設置できるスペースがあります。

 選定提案には、玄関に設置するパターンでは「玄関の上がり框段差(30㎝)に対応でき、玄関土間にも設置できるコンパクトな機種です」、庭に設置するパターンでは「リビングと庭との段差(40㎝)に対応し、庭から門まで移動しやすいよう四方向から乗り入れ可能な機種です」としました(表)。また、今回のケースではいす型の昇降リフトも提案できそうです。いすに座ったまま、電動昇降、座面回転し、上がり框の段差を超えることができます。選定提案は「玄関土間に設置し、屋内用車いす、屋外用車いすへの移乗ができるいす型昇降リフトです」とします。

 これらの複数案を示し、Mさんに生活上、一番利便性が高いパターンを選んでもらうようにしましょう。この際、庭に設置した場合はリビングの外から施錠できる鍵が必要になったり、庭に電源がなければそれも必要になったりと、具体的に設置後、使用するイメージを利用者・家族が持てるよう説明しなくてはいけません。段差解消機は生活範囲の維持拡大に繋がるとても有用な福祉用具です。生活範囲を広げる視点から目標設定することで、利用者のQOL向上に繋がることを意識して支援していきましょう。
高齢者生活福祉研究所所長 加島 守

(シルバー産業新聞2019年4月10日号)

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