I C Fからの福祉用具アプローチ

特殊寝台編/加島守(連載6)

特殊寝台編/加島守(連載6)

 福祉用具に関わる専門職には、環境が変われば参加や活動を促し、そして福祉用具の活用で生活が変わる可能性をしっかりと利用者・家族へ示し、提案することが求められています。本連載では「ICF(国際生活機能分類)」の考え方をモデルに、活動・参加、生活を変える福祉用具支援を解説します。今回は特殊寝台の導入事例について、ICFの考え方から読み解いてみましょう。

歩行の自立を特殊寝台導入で実現

膝上げ・背上げ機能で痛みを緩和

 自宅で奥さんと2人で暮らすEさん(67歳男性)は脊柱管狭窄症により、左大腿部と足の外側に痛みがあります。病院から痛み止めを処方されていますが、それほど緩和されていないようです。特に歩行時に痛みが強くなり、屋内移動は伝い歩き、外出は近場であればT字杖を使って、なんとかたどり着けますが、距離があるとタクシーで移動します。痛みを気にして、通院以外は家のそばのドラッグストアにたまに出かけるくらいです。日課だった愛犬の散歩も奥さんが行っています。

 また痛みのせいで、夜に何度も目覚めてしまうため、日中も倦怠感があります。「まずは熟睡したい」というのがEさんの希望でした。

 そこで、特殊寝台の膝上げ・背上げ機能で「セミファーラー位」をとることで、就寝中の痛みを和らげる方法を提案しました。セミファーラー位は15〜20度くらい背を起こした姿勢で、腰痛や足の痛みの緩和してくれることがあります。Eさんは要介護1だったため、ケアマネジャーと主治医に相談し、例外給付で特殊寝台をレンタルすることにしました。

外出意欲向上で歩行器も活用

 しっかりと眠れるようになったEさんは日中のだるさも解消されたせいか、「外出したい」という気力や意欲が湧いてきました。痛みが出現したときに休憩をとれるよう、座面に腰掛けられるタイプの屋外用歩行器の利用を決めました。導入後は、しばらく足が遠のいていたスーパーでペットの餌などを買いに行くようになったEさん。しばらくするとT杖で愛犬と散歩もできるようになりました。

 この事例では、いきなり歩行支援用具を提案するのではなく、まずは夜しっかりと睡眠をとれるようにしました。熟睡できるようになり、Eさんの意欲が高まったタイミングを見逃さずに次の支援へと繋げています。ICFの体系的な視点から、利用者の状況を整理することで、複数のステップに分けた支援も計画しやすくなるでしょう。
 加島 守(高齢者生活福祉研究所・所長/理学療法士)

(シルバー産業新聞2019年11月10日号) 

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