座談会

福祉用具とリハビリの大切さ 岩佐まり/松本琢磨/市川洌(3)

福祉用具とリハビリの大切さ 岩佐まり/松本琢磨/市川洌(3)

 在宅介護を行うフリーアナウンサーの岩佐まりさんと、「福祉用具」と「福祉用具専門相談員」の役割について考える。

介護者を守る福祉用具

 岩佐 母の気持ちがわかると少しずつ余裕が持てるようになりました。
 松本 たくさんの経験を経て、お母さまの気持ちへの理解を深めることができたんですね。現在はどのような状況ですか。
 岩佐 今は暴言や暴力も落ち着きました。ただ要介護5で、より身体介護が必要になったので、私の体がつらいですね。母は圧迫骨折も3回起こしています。体がほとんど動かない状態での、移乗や排泄介助はとても大変です。私自身も腰痛になってしまって…。
 市川 それは絶対によくありません。例えば移乗であれば、スライディングボードやリフトといった福祉用具があります。そうした道具をうまく活用して、岩佐さんの負担を減らすべきです。私は、福祉用具は介護の「インフラ」だと思っています。我が家でも、義母の介護で、数多くの福祉用具を使いました。妻を絶対に腰痛にはさせないと決めていたからです。
 松本 岩佐さんのお母さまは、今どのような福祉用具を使っていますか。
 岩佐 介護保険を使って介護ベッド、床ずれ防止のマットレス、車いす、ポータブルトイレなどを利用しています。歩行器は自費で購入しました。介護ベッドは背上げと脚上げ機能は付いているのですが、昇降機能はありません。
 市川 岩佐さんのお母さまの身体状況だと、やはり介護ベッドであれば、無理なく介助ができる位置まで高さを調整できるものがよいでしょうね。低くかがんで抱え上げる動作は腰への負担が大きすぎます。
 岩佐 そうですね。ただ介護保険は支給限度額があるので、その枠に収まるようにとなると、どうしても安いものを選んでしまいがちです。
 市川 ぜひケアマネジャーや福祉用具事業者に「腰が痛くて困っている」「介助の負担が大きくなっている」と伝えてください。もし、それで一緒に検討してくれないようなら、極端な話、ケアマネジャーや事業者を変更しても構わないと思いますよ。ちなみにうちの場合は、4つの福祉用具事業者を同時に利用していました。
 岩佐 ええ!? そんなに?
 市川 一つの事業者では品揃えが足りないこともありますからね。4カ所とまではいわなくても、事業者を比べて選ぶのは当然のことです。
 松本 そうですね。事業者でサービスの特徴や価格も異なります。
 松本琢麿さん

 松本琢麿さん

「生活や活動の幅を広げる 福祉用具の活用を」
(まつもと・たくま)厚生労働省老健局高齢者支援課福祉用具・住宅改修指導官。介護ロボット開発・普及推進室室長補佐を兼任。作業療法士。現職に就く以前は、神奈川県総合リハビリテーションセンターにて重度身体障害児・者のリハビリ訓練や福祉用具・住宅改修サービス、在宅障害者の生活相談に携わる。2018年4月より現職。

福祉用具専門相談員のサポート

 岩佐 そうなんですね。実は、福祉用具を選ぶのがいつもとても難しくて。
 市川 普通は福祉用具に馴染みがないのですから、それは当然です。だからこそ、ケアマネジャーや福祉用具事業者がしっかりとサポートしなければなりません。そのために、困りごとやわからないことは積極的に支援者に伝えていくことが大切なのです。
 松本 市川さんや作業療法士の私でも、その人に合うか、合わないかは試してみなければわからないケースもあります。合わなかったら、別の製品と取り換えやすいのも、介護保険制度のレンタルの特長ですね。もちろん、最初は合っていても、徐々に合わなくなることもありますので、そうした時もレンタルの仕組みはメリットに働きます。
 市川 それから重要なのが姿勢です。姿勢が崩れてしまうと、食事もできないし、お尻も疲れてきます。車いすはただ移動するだけでなく、この姿勢づくりにもとても役立ちます。もちろん細かく調整ができるなど、車いすの機種にもよりますが。義母は食卓のいすで姿勢が崩れるようになっても、フィッティングした車いすを使うことで、最期まで食卓に座って口から食事をとっていました。座った姿勢がちゃんととれるかが、離床や生活の質向上に繋がりますので、しっかりと目を配らなければなりません。
 岩佐 うちの母は比較的若い方なので、できる限り訓練して、物に頼らず自分でできるようになってもらいたいという気持ちもあります。
 松本 作業療法士としての立場からいえば、リハビリテーションや機能訓練が本当にいい形で行えればよいのですが、間違った訓練だったり、頑張りすぎてしまうと、より変形を強めてしまうなどのリスクが高まります。楽にできるところは、福祉用具を頼ってよいのではないでしょうか。市川さんのおっしゃったように、車いすで姿勢を保持してあげて、食事は介助でなく自分でとるなど、生活や活動の幅を広げる観点で福祉用具を活用していただきたいと思います。
 市川 リハビリテーションや機能訓練は、もちろんとても重要な要素です。だからこそ、我流でなく、作業療法士、理学療法士などのリハビリテーションの専門職と相談しながら進めることが大事ですね。
 岩佐 なるほど。
 松本 リハビリテーションも、ひと昔のようにひたすら耐えて、汗水を流して、というものから随分変わりました。いかに楽しく積極的に動いてもらい、そこから社会参加へ繋げるか。そうした支援がリハビリテーションの役割になっています。
 市川 義母が食べられなくなっても、唯一、自分から手を伸ばしたのがアルコールでした(笑)ひと口飲んで「おいしいね」と。
 松本 意欲が先にあって、動作に繋がります。意欲を引き出すのがとても大切です。何を食べたいのか、何をしたいのか、モチベーションが上がれば積極的に動いていただけます。

(福祉用具の日しんぶん2018年10月1日号)

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