座談会

ケアマネマイスター広島 ケアマネ育成に腕振るう事

ケアマネマイスター広島 ケアマネ育成に腕振るう事

 2012年11月11日「介護の日」を記念して、第1回「ケアマネマイスター広島」の認定式が開催された。以来10年が経ち、これまで広島で活躍する22人のケアマネマイスターが認定された(表)。広島県が独自に、ケアマネジャーの指導的役割を期待し、医療・介護の専門職から認定してきた。コロナ禍でここ2年間新規の認定者はなく、残念ながら、県は今年4月に新規に認定しないことを決めた。第1回認定の米澤一志氏、第3回認定の尾野真由美氏と邑岡志保氏の3氏に、地域包括ケア発祥の御調町のある現尾道市で、LIFE(科学的介護情報システム)導入など時代の転換点にあるケアマネジャーの現状と今後について忌憚なく語っていただいた(収録6月21日、尾道福祉専門学校)。

 ――広島県独自の「ケアマネマイスター広島」の新規認定が終了になりました。

 米澤 広島県では、地域と職種から、2012年から22人のケアマネマイスターが認定され、ケアマネジャーの研修会などに出向いて、人材育成などに取り組んできました。高齢化がさらに進み、支え手が減少していくなかで、介護保険制度が生んだケアマネジャーを重要な社会資源として活用していく、いわばそのロールモデル的な存在にケアマネマイスターを認定したのです。
ケアプランよりしま介護事業部長 米澤一志さん

ケアプランよりしま介護事業部長 米澤一志さん

 尾野 中学校区に1生活圏域でしょうか。広島県23市町には、日常生活圏域125圏域があります。ケアマネマイスターは広い圏域から選ばれています。
福山市地域包括支援センター 三吉町南主任ケアマネジャー 尾野真由美さん

福山市地域包括支援センター 三吉町南主任ケアマネジャー 尾野真由美さん

 米澤 提唱者の山口昇医師(今年3月30日死去、89歳)は、地域包括ケアシステムの軸にある医療と介護の連携などにおいてもそれぞれの地域の個性があってよいと言われていました。

 邑岡 ここ尾道市は7圏域です。平成の大合併で、市街地の旧尾道市と、山間部の御調町、橋で結ばれた瀬戸内の島嶼部向島、瀨戸田、因島が一つになりました。御調町では山口先生が行政と国保病院、介護サービスなどを一つにまとめ、高齢者から障がい者まで地域の多様なニーズを受け止める、日本初の地域包括ケアシステムを展開。旧尾道市では尾道市医師会主導で民生・児童委員なども含めた地域の多職種がカンファレンスという形で在宅高齢者を支援する取り組み(「尾道方式」)を行い、因島では医師会が中心となり多職種連携の体制を整えるなど、地域の歴史と特性があります。ケアマネジャー同士は、研修などを通じて、日常的にも広くつながってきました。
尾道福祉専門学校校長 邑岡志保さん

尾道福祉専門学校校長 邑岡志保さん

 米澤 広島県介護支援専門員協会では、15~18年にかけて県内を29の地域ブロックに分けて、どこにいてもケアマネジャーとして勉強ができる仕組みになっています。私のいる広島市安佐南区もそのひとつで、「多職種連携・ケアマネジメント・施設部会」があり、定期的に事例検討などを行っています。

 この地域ブロックごとでケアマネジャー養成を協力支援する方向ができたことが、今回のケアマネマイスター新規認定の終了の理由のひとつだと思います。新規認定はなくなっても、すでに認定された人は、これからもケアマネマイスターの称号が使え、活躍が期待されています。

 安佐南区の高齢化率は21%、県内で最も若いのですが、一方、県北に行くと高齢化率が50%を超える自治体もあり、町の人口減少スピードが激しいと言います。サービス確保など地域ごとのマネジメントは必須ですね。

 ――みなさんの経歴を教えてください。

 米澤 当初特養の生活相談員(当時は生活指導員)を8年間していました。入居者50人が一つの社会を築いていて、住所もそこにあり日々の生活から選挙まである。同室者でトラブルもあれば、まとまりもある。男も女もいる。当時認知症は痴呆症と呼ばれ、ほぼ分類もなく、進行を抑える薬もない。認知症ケアの知識や技術が今のように分かっていれば、もう少しは対応できていたのではと悔やまれます。いま私のケアマネジメントの基本になっています。

 その後、医療法人ユア・メディックの居宅介護事業所ケアプランよりしまに入り、ケアマネジャーのほかに法人の総合的な事務や人事などを担っています。

 尾野 理学療法士としてリハビリテーションセンターで働いたのですが、ケアマネジャーになって気づいたのは、生活の場面での専門職の役割でした。

 なぜ、医療介護に多職種が存在するのか。自分にない視点に気づかされるのです。自分の中の固まった部分が、多職種の中で解きほぐされていく感じです。その後、福山市医師会に入り、訪問看護ステーションで働きました。訪問看護には、痛みのコントロールや生きる希望、呼吸器や循環器の疾病対応など複合的な課題がある。医療と介護の連携の大切さを認識し、生活期のリハビリをめざしました。

 ただ、現場は急性期医療の機能訓練のイメージで在宅介護へ向かうリハ職が多いように感じています。昨年、医師会が運営する福山市地域包括支援センター三吉町南に異動しました。

 邑岡 私は、これまで25年間、社会福祉法人尾道さつき会一筋です。特養やデイサービスの生活相談員、居宅介護支援や地域包括支援センターの主任ケアマネジャーなどを担い、今年から法人が運営する尾道福祉専門学校の校長をしています。

 常々思うのは、医介連携といった場合に、介護職がもっと表舞台に出てきてほしい。利用者の生活を見るという視点において、介護職の存在は不可欠です。その知見を医介連携の場でもっと発揮できるようにしたい。

 当法人は、高齢者や障がい児・者、多様なニーズの現場があり、それぞれの人の生活と人生があります。自分がこの環境から多くを学んだように、本校の学生にも現場から多くを知り、自分たちがすべきことは何かを学んでほしいと思いながら、人材育成に取り組んでいます。

 ――ケアマネジャーとして大切にしていること

 邑岡 ケアマネマイスターとして活動したことが大きな転換期でした。それまでは限られた範囲だけに目が向きすぎて、発想も視点も限られていたと思います。色んな職種、立場の方々と繋がると、今までなかった視点や方法を知ることになる。それは全て利用者や家族への支援の糧になります。利用者のニーズと必要な資源をつないでいく。

 米澤 ケアマネジャーは、いかに多くの引き出しを持っているか。地域の中で知り合いが多いことも、もちろん本をたくさん読むことも大切です。

 尾野 先ほど邑岡さんが介護系の人に焦点が当たりにくいと話されました。生活の場面を一番知っているのは、生活を支えているヘルパーだと思います。医療系と福祉系で何が違うのかと考えると、ひとつは表現する力。医療介護連携は、双方向のものですが、いつの間にか、医療から介護へという、医療が介護職に指示をする場面が際立つ。従わなければならない医療的な判断は当然にありますが、生活に関わる部分については個人的な価値観が合致しないこともある。医療と介護をつなぐケアマネジャーが、しっかり伝えていく。

 どの職種にもいえるのが、しゃべろうとする人のことばを聴く力です。何を発信しているのか、音声にならない部分まで聴く。ケアマネジャーはコミュニケーション力が大切ですね。

 ――LIFE(科学的介護情報システム) の推進へどう向かい合う。

 邑岡 私たちは「なぜこの支援を行うのか」を根拠を持って言語化することです。昨年、広島、宮崎、静岡の3県による厚労省の「適切なケアマネジメント手法」実践研修に参加しました。「なぜ利用者の水分量をチェックするのか」「何を目的にこの情報を集めるのか」等を明確にして、情報を深掘りしていく実践でした。

 「なぜ」の理由が明確にあると、私たちは利用者に分りやすく伝えることができ、利用者とその目的を共有できるようになりました。数値化し比較する方法、思いや希望を支援するために情報を深掘りする方法、双方をバランスよく操作できるようになることがケアマネジャーとして重要かもしれません。

 米澤 ケアマネジャーは、生活の言葉に落とし込み分かりやすく説明する。「あなたがこういう生活をしたいので、こうした水分摂取が必要ですよ」と。選択肢を示しながら生活に還元した例え話などにして伝えていく。ケアマネジャーの専門的技術のひとつだと思っています。

 尾野 摂取する水分量や室温などは、心疾患などにかかわる要素です。再発すると重度化するおそれがある疾患だけに再発は避けたい。そのためケアマネジャーは抜け漏れがない情報収集をする。そのパズルのピースのようにばらばらな利用者情報を組み合わせていく。そのプロセスこそがアセスメントになる。情報を統合する力が求められる。

 ケアプランは、その人の人生をどのように演出していくかという、その人自身のものであることが常に基本です。

 ――ケアマネジメントの極意。

 米澤 基礎職が医療職か介護職かでケアプランに影響がでる場面もある。同時に所属法人による差も大きいのではないでしょうか。

 尾野 ケアマネジャーとして様々な場面にさらされてきた人は、ケアマネジメント力を身につける気づきがあったかもしれない。しかし、サービスを入れてから、ケアマネジメントに落とし込むという人も多い。

 利用するサービスという結論がまずあって、結論からプロセスを説明するのはいけないと言っても、それしか知らない。法定研修では一連のプロセスを習っても、記述の作業が多いので、アセスメントをすっ飛ばして帳票をつくってしまう。疾病の再発を引き起こし医療費を押し上げ、重度化を招くことにもなります。

 ――ケアマネジャー不足。

 米澤 国も県も人材不足への対応に一所懸命です。ケアマネジャーはどうでしょう。
 
 尾野 なり手がいない。

 邑岡 処遇が逆転。夜勤もある介護職の方が給与がよい。子育て世代で変則勤務の人がケアマネに就く場合などはあります。

 尾野 ケアマネは多忙というイメージが定着した。特定事業所加算をとると、書類作成など仕事に様々な制約がかかります。

 米澤 今年、ケアマネの実務研修の講師をしました。近年は介護職が多い中、リハ職の合格者が例年より多い雰囲気。しかし、ケアマネの実務をめざすというより、学びの延長。「今後、異動があって、ケアマネやりたいですか」と聞くと、印象ですが、100人のうち5人ぐらいしかいない(驚き)。

 邑岡 ケアマネの業務にも効率化の視点が必要だと思います。

 米澤 ケアマネジメントはやりがいのある仕事です。介護保険制度での要と言われていましたが、社会生活の中で重要な役割を果たしている職種です。

 若い人たちからも、目指す職業となるようケアマネマイスターとして展望を示したいですね(一同頷く)。

 ――ケアマネジメントの有料化。

 米澤 ケアプランの有料化に賛成です。居宅介護支援を責任もって提供し、ケアマネジャーとして選ばれる存在でありたい。一方で有料化の現実は、介護サービスの利用が増え、社会としてはマイナスの方が大きくなるのではと思う。

 邑岡 同様です。私は個人的にはすべて社会保険で担わなくてもよいと思っています。有料化により利用側のケアマネジメントへの意識があがり、ケアマネジメントの質向上が期待できるからです。反面、米澤さんの指摘にあるように、有料化によって利用者に主導権が移り「デマンドプラン」を作成してしまうリスクがあります。

 米澤 有料化になって口座引き落としにならなければ、私たちが集金に回ることも。実際「払わないから、プラン立てられません」とは言えない。そこで、サービス事業者側で「元ケアマネがいてケアプラン無料で立てます」となったり、サービス側の介護報酬に「ケアマネ配置加算」ができたり、と。包括報酬化が進む事態もありえます。

 ――防災について。

 邑岡 災害時も必要な支援を利用者に届けるためには、圏域内外の法人間、事業所間の協力体制を確保することが重要です。

 尾野 医療依存度の高い人への対応があります。広島大学の難病対策センターでは、人工呼吸器を利用する在宅の患者さんの災害時の支援を行います。ケアマネジャーとしては、離れて住む家族への災害時の連絡も大切な役割ですね。

 米澤 ケアマネは引き出しを多く持つことと言いました。災害時での地域の自主防災会議とつながり、地域のハザードマップを見て、利用者宅の危険度予測はアセスメント時に必須です。

 ――地域共生社会について。

 米澤 措置の頃、特養のショートステイを20、30代の若い障がい者が利用していました。

 尾野 「障がい者枠」と言っていましたね。

 米澤 特養入所が原則要介護3以上となった現在、要介護1、2でも、日常生活に支障を来す知的障がい・精神障がいの人の特例入所が認められています。

 尾野 障がいの分野にも「相談支援専門員」というケアマネジャーがいます。利用者が65歳になると、制度をまたいで介護保険の適用となり、居宅のケアマネジャーが引き継いでいく。

 邑岡 支援の形には時代や地域を越えて、様々な形があります。

 尾野 人材不足の中で制度をまたいでの支援には、柔軟な制度運用が欠かせないと思います。

 ――要介護になっても安心して暮らせる地域づくりに向けて皆さまのご活躍を祈念します。 
(シルバー産業新聞2022年9月10日号)

関連する記事