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社会・時事・他本人の生活上の望みを実現する作業療法を確立したい(2)2011年6月17日14時43分

 今回のシンポジウムでもそれを教えられる発表がある。80歳代の女性の入院患者でADLは全介助。機能向上の意欲もなかったが、息子の墓参りをしたいという希望を引き出せた。そこで墓参りを実現させたところ、さらに自宅の仏壇に手を合わせたいと願望が表面化し、機能訓練に励み退院が可能になったという。ならば病院に仏壇セットを置き、そこまで移動することでADLが高まるかもしれないと演者は結んでいる。

 本人にとって意味のある作業とは望みを聞き、それを引き出す作業でもある。仏壇を拝むことが本人にとって意味のある作業であるならば、それを実現する作業療法を考える、ということだろう。

 機能障害や活動制限がありながらも、本人にとって意味のある作業を実現できる可能性は高い。仏壇に手をあわせるという作業を、本人にとっての意味が成立する形で実現させるためだけの特別な練習や環境設定があるかもしれない。それを工夫することが作業療法士としての役割の一つではないだろうか。

 残念ながら標準的、医学的なADLのチェックでは何が本人にとって意味のある作業かは分からない。うまく聞き出せればよいが、現場ではそれが難しいケースも少なない。聞き方の技術や聞く場所など方法論の考察も必要だろう。

またセラピスト間の連携も重要である。リハビリは急性期から回復期、維持期と連続して行われる必要がある。それは身体状況に応じた区分であり、しかもそれぞれが違う場所、違うスタッフによって行われる。現在のリハビリの連携には最終的に患者さんが何をしたいのか、その希望を実現させるという一貫性に乏しいという指摘も聞く。患者さんの希望をつなぐ連携が求められており、それを考えるシンポジウムも企画した。急性期、回復期、維持期どの段階でも本人にとって意味のある特定の作業を目的とした実践でなければならないと思う。

 特に急性期においてはOTとPTの区別はあまりなく、ボトムアップ、単なる機能回復が目的になりがちですあるという話も聞く。仮にコンビニに行きたいと希望する患者さんがいても、急性期病棟でのリハでコンビニが医学的な目標とはならないだろう。しかしOTが本人の希望がコンビニに行くことであることを知り、それを意識した対応をすることで本人のリハビリに対する意欲は向上するかもしれない。むしろ急性期の段階から本人の生活上の目標を明確にしたほうが良いと考える作業療法士もいる。

 すでに日本作業療法士協会では意味のある作業のための介入実験を行っており、効果も証明されつつある。

 今学会で今後の作業療法のあり方について、「意味のある作業の実現」という言葉を大事にした表現が多くの作業療法士に共有されれば、その意図するところが鮮明になり、ひいては、対象者の皆様により満足のいくサービスが提供できるようになると信じる(談)。

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略歴

1982年国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院卒業。国立下総療養所(現・下総精神医療センター)、88年千葉県作業療法士会会長、91年国立仙台病院附属リハビリテーション学院厚生教官、95年宮城県作業療法士会会長、98年英国イーストロンドン大学作業療法修士課程留学、03年国立病院機構花巻病院、06年現職。 

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