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社会・時事・他フィンランド福祉視察①プロが教える障がい者の芸術学校2012年11月 7日18時00分

 特殊衣料社長・社会福祉法人ともに福祉会理事長の池田啓子さんら一行は、今年6月、フィンランドの障がい者・高齢者の施設を視察した。視察記を3回で連載する。第1回は障がい者の芸術学校、カーリシルタ学園。

彼の地のケアを就労支援に活かしたい

 今年6月に1週間、藤本欣也商品企画部長とフィンランドに福祉の視察に行った。そもそもの始まりは、2011年にフィンランドの福祉研究者の山田眞知子さんが札幌に帰ってきた時の懇親会の席上で、来年フィンランドに行こうという話がでた。その場で日程を決め、1年後に実行に移したというわけである。団長は藤女子大の橋本伸也教授で、札幌だけでなく九州や東京からも福祉関係者が集まっての視察の旅だった。

 私がはじめてフィンランドに行ったのは98年冬で、フィンランド独立記念基金(シトラ)の招待であった。当時シトラはバリアフリーワールドプロジェクトを立ち上げ、日本との福祉による経済交流を目指していた。山田さんは当時シトラのプロジェクトメンバーで、リハビリテーション施設や高齢者施設などを案内していただいた。後に彼女は北海道の大学で福祉を教えるようになり、以来親しく交流している。

 わが社では積極的に知的障がいのある人たちの雇用をしている。140人の社員のうち23人が障がいのある人たちで、主にクリーニングの仕事に従事する。障がいのある人たちと働くうちに彼らの就労への道をもっと支援したいと思うようになった。そこで06年に会社の敷地内に社会福祉法人「ともに福祉会」を立ち上げ、高等養護学校を出た若い人たちのための就労支援事業を開始した。現在43人が通ってきて就労訓練を行い、ジョブコーチングを受けつつ就職している。今回のフィンランドの視察で福祉先進国といわれるフィンランドの障がい者ケアから多くを学びたいと考えた。

カルチャー学習おこなうカーリシルタ学園

 はじめに訪れたのは、ヘルシンキから100㎞ほど離れた農村地帯にあるカーリシルタ学園である。ここは、87年に知的な障がいを持つ子供たちの親たちが設立したアクティビティーセンターである。普通の子供が学ぶようなことをわが子にも学ばせたいとの親たちの意思で、授産活動よりもカルチャー学習に重点をおいている。

 通ってくる利用者55人は、義務教育を終えた人から老齢年金生活に近い年齢の人までの主に知的障がいを持った人たちで、音楽、絵画、手芸、陶芸、演劇、スポーツなどを学ぶ。学園とサービスの契約を結んだ近隣の自治体が利用者を決め、学園に措置費(1日85~135ユーロ)を支払う。本人が希望し自治体が措置を認めれば利用は続く。作品が売れればその一部は本人に還元される。(写真1)

 何よりも驚いたのは環境の素晴らしさだ。もとの庄屋屋敷を買い取ったという12ヘクタールの敷地にある立派な建造物で、牛舎は温水プール付きのスポーツセンターに、鶏舎は手芸・陶芸室に改造されている。その購入・改造費用の約70%が国の助成と聞いてため息がでた。(写真2)

40㎡個室のサービス付き住宅

 ほとんどの利用者は自宅から通ってくるのだが、近隣に障がい者用のサービス付き住宅も運営している。すべて個室でバルコニーと車椅子仕様のバスルームつきの40㎡ぐらいの大きさだ。共同のバリアフリーサウナもあった。食事サービスも提供され、家賃は障害年金で支払える範囲だということだった。はじめは夜間のケアはなかったが、年々入居者の障がいが重くなり、今では24時間のケアがあるそうだ。視察団の中には「私の部屋より立派」と言った人もいたくらい素敵な住居だったが、山田さんによると、決して特別ではないということだった。

芸術家めざす4年間の寄宿学校設置

 カーリシルタ学園は03年には知的障がい者の美術と音楽の職業学校も設立して、これは全面的に国の補助金で運営されている。全国から33人が入学し、芸術家になるために4年間勉強しているそうだ。授業料は無料である。コスキネン校長によると、現実には障がい者が芸術家として生計を立てることは難しいが、全員障害年金で暮らしているので生活保障はあり、卒業後も演奏活動や展覧会に積極的に参加していると聞いた。感銘を受けたことは、ボランティアに頼らざるを得ない日本の現状と違って、学園も職業学校も教員は現役の音楽や美術のプロで、障がい者教育の資格を持っていることだった。(写真3)

 カーリシルタ学園は北海道の江差福祉会と音楽交流の姉妹提携を結んでいるときいた。私たち、ともに福祉会も絵画活動を積極的に行っているので、交流を申し出て学園から快諾を得ることができた。これからの交流を楽しみにしている。(写真提供:藤本氏)

(特殊衣料社長・社会福祉法人ともに福祉会理事長 池田啓子)

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  • カーリシルタ学園の利用者の
    作品の前で(筆者の池田さん)
  • fin2.JPG
  • 牛舎を改造したスポーツセンターで
    コスキネン園長(中央・右)から説明を聞く
  • fin3.JPG
  • 日本の漫画の大ファンでもある職業学校
    美術部の卒業生ヤーナさん(中央)と
    クリスト君(右から2人目)といっしょに

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