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社会・時事・他【座談会】チームケア推進し介護の質向上に寄与2012年10月11日18時57分

特別座談会~チームケアを推進し、介護の質向上に寄与する福祉用具サービス計画書~

<出席者>
日本福祉用具供給協会理事長 山下一平氏(司会)
千葉福祉総合研究所社長 助川未枝保氏
介護ショップひまわり 理学療法士 正木健一氏


 今年4月から義務付けられた福祉用具サービス計画書。山下理事長は福祉用具サービスの質の向上を目指して、福祉用具サービス計画書の導入に全身全霊を傾けてきた。作成自体が福祉用具専門相談員の質向上に寄与すると共に、計画書を通じてチームケアに参加し、その能力を十分に発揮するよう期待したいと、ケアマネジャーの助川、理学療法士の正木両氏は口を揃える。そのことは多職種個々のレベルアップにつながり、さらにチームケアそのものの質を高めるからだ。今後は介護と医療の連携にも福祉用具専門相談員が活躍する機会も増えてくるだろうという展望で座談会出席者の意見は一致した。

計画書の作成によりサービス担当者会議への出席が増加

 山下 今年の4月から福祉用具に対して福祉用具サービス計画書の作成が義務付けられました。これまであまり評価の対象にならなかった福祉用具提供の質に関して、厚労省が初めて着目したわけで、今こそ事業者や福祉用具専門相談員の質を高める絶好の機会です。

 日本福祉用具供給協会の理事会では全国どの地区でもケアマネジャーさんの反応が良く、九州地区などでは9割近くのケアマネジャーに対してサービス計画書が示されているそうです。

 正木 当社は義務付けがはじまる4月直前頃から計画書をつくりケアマネジャーさんに渡し始めました。これまでは利用者の問題点を明確にし、それをどう改善し、具体的に何をするのか、ポイントを分けて考えることが不慣れだったと思います。そこでまず問題点と目標を分けて、作成するようにしました。

 助川 私は福祉用具の事業者に対し「サービス担当者会議に呼ばれるようになりましたか」と必ず聞くようにしています。計画書は書くだけではなく、サービス担当者会議に出席しチームの一員として行動することに計画書の大きな意義があると考えるからです。嬉しいことに最近では呼ばれるケースが増えているそうです。他の職種と意見交換し情報を共有する。逆に会議では専門相談員としてのスキルに期待しています。書くだけでも大変でしょうが、その内容を説明することはさらに難しい。でも会議で計画書の内容をきちんと説明することでますますレベルアップするでしょう。

 正木 確かにサービス担当者会議に呼ばれる頻度は増えましたね。しかも会議では「この用具は利用者の生活をこのように向上させている」と具体的に説明が求められるようになりました。その意味でも良いツールになったと思います。計画書の作成自体により勉強の場が広がっているのです。

 助川 計画書作成で現場には負担感が生じているでしょう。しかし最初から満点のレベルにこだわらず、まずは誰が読んでも分かる程度に書くという気持ちで臨んだら良いのではないですか。

継続的なモニタリングで利用者の変化に柔軟な対応を

 助川 現場のもう一つの負担感は丁寧なモニタリング。これまで業務の流れでモニタリングを軽視してきた事業者にとっては重たいテーマでしょうね。ただ会社として仕事の流れを見直し、アセスメントからモニタリングまできちんとした流れを定着させる良い機会です。

 山下 私も今回の改正で最大のポイントはモニタリングの義務付けではないかと考えています。利用者の状態像は一定ではなく、本来モニタリングをきちんと繰り返さないとその時点での最適の福祉用具が提供できているかは確認できないはずです。

 助川 最適な福祉用具を導入すると、多くの利用者の状況は改善します。利用者の状況は必ず変化するということを大前提に考えておく。モニタリングにより状況の変化があれば福祉用具専門相談員だけではなく、PTやOTなどのアドバイスを得るなどして対策をチームで考えるべきでしょう。

 正木 モニタリングをしているとコスト面で悩むケースもあります。用具の性能がその人の身体機能にうまくマッチしていない。ただマッチした福祉用具を提供するとレンタル料金が上がる場合、利用者、家族に対し費用がかさむとは言いづらいのが現場の福祉用具専門相談員の心情です。だからこそ担当者会議でそれを皆に伝え、チームで何とか改善の方向性を探って欲しいのです。

 助川 正木さんがおっしゃるように福祉用具専門相談員からそのような相談があればケマネジャー自身の勉強にもなりますね。ケアマネジャー1人の能力には限界があり、能力アップのために他の専門職の方からのアドバイスは非常にプラスになります。

 必ずしも適切ではない福祉用具を利用していても、それに慣れてしまうと、高齢者の場合は変えたがらない傾向にあります。それだけになおさら最初に最も適切な福祉用具を提供しておく必要がありますね。

 正木 ケアマネジャーのみならず確かにチームで動くことは全職種のレベルアップにつながると思います。

 山下 本来そうあるべきなのに、福祉用具専門相談員はなかなかチームケアに参加できていませんでした。福祉用具計画書の導入で参加する環境が整い、真に力のある人が徐々にクローズアップされることを望みたいですね。

 さらに福祉用具が人的負担を軽減するという認識が日本ではまだまだ希薄です。現状でも介護職の人材が確保しにくい状況にあるのに、今後支えるべき人たちはさらに増えます。介護職が活き活き働くためにも福祉用具や住環境などの環境整備が求められますね。

作成ソフトを賢く利用しよう

 山下 質の高い福祉用具サービス計画書作成のために具体的に何が求められますか。

 正木 まずは福祉用具専門相談員が文章を書くことに慣れることです。次いで利用者、家族に説明するために問題点を把握し、目標を立てる。その目標を達成するために具体的な計画を立てる。利用者が現在の環境でどのような暮らしをしたいのかを明確にし、そのためには福祉用具がこのように寄与できると文書化することです。それらが誰が見ても分かるような表現で書き込まれていれば、福祉用具専門相談員が何をしたいのかがチーム全員で共有できます。

 山下 福祉用具サービス計画書はカンファレンスで共通言語として使用されるというメリットもありますが、基本的には利用者、家族に示すものです。業界用語などはどこまでやさしく表現すべきなのでしょうか。

 助川 まずは利用者、家族の理解力がどの程度あるのかを把握します。あまりにくだけた表現だと馬鹿にされていると思われるケースもあるでしょう。レベルに合わせてやさしく説明できる能力を身につける。さらに利用者、家族の方から不明な点を聞ける関係を構築することも大事です。

 基本的には利用者向けに制作されているパンフレットに使用されている文章のレベルですね。パンフレットの表現は非常に分かりやすく書かれてありますからね。もちろんそれでも理解できない人もいるでしょう。そういう人には口頭で何回も説明します。

 正木 用具を選定するときに利用者、家族がカタログを見て「一番安いので構わない」と言われることが多々あります。負担金額が600円の製品がベストと判断しても利用者からより安い製品を求められる。その時には計画書の中で「乗り降りのために足の部分や肘掛部分がはずれます」と書き込み、きちんと説明し納得していただく。同時にその理由をチームで共有できればよりベターです。

 山下 現在個別サービス計画書が簡単に作成できるソフトが次々と発売されていますが、ソフトはどのように位置づけられますか。

 正木 当社も現在請求業務機能を兼ねたソフトを検討中です。ただ利用者の問題点と目標設定に関してはソフトを導入しても解決できません。相談員が利用者をきちんとアセスメントし、それらを入力するしかありません。ただソフトの導入により省ける業務はあります。

 例えば当社では福祉用具個々の効果や適性を独自につくりました。アセスメントの結果、福祉用具の機種が決まると、目的や理由が自動的に記入されるように工夫したソフトです。選定したその福祉用具が身体機能や環境にマッチしていないと、理由が的外れになってしまいます。そうすることで間違った福祉用具を選定しないようにもなっているわけです。

 助川 それは素晴らしいシステムです。教育的効果も備えていますね。福祉用具の目的や選定の理由を読むだけでも勉強になりそうですね。ガイドライン的なベースを会社で準備し、その上で利用者の個別性をきちんと観察するわけですね。ソフトの問題点はどうしてもパターン化してしまうことであり、どこかで個別性を意図的に担保する必要があります。

 正木 課題と目標設定の部分はソフトでは何も書かず、白紙のまま。逆に言えばその部分はIT化できません。

計画書でリスク管理が徹底される

 助川 リスクが福祉用具サービス計画書の留意点に書かれていれば大きなリスク対策になると思われます。福祉用具にはさまざまなリスクがあり、ヘルパーさんや家族以外の人が使うケースも少なくありません。リスクがきちんと文書化してあれば、他の人が使用しても事故が起こる可能性も低くなります。

 山下 危険が伴なうことを利用者にきちんと理解してもらうことも大切です。福祉用具サービス計画書の作成はリスク管理の意味合いも大きいと判断しています。

 助川 製品を購入すると取扱説明書のまず最初に注意事項が明記されています。その注意事項が留意事項に相当すると思います。モニタリングの時に福祉用具専門相談員が利用者、家族に再度、留意事項について念を押すことが大事です。

 山下 福祉用具事業者の場合サービスエリアが広いこともあり、訪問介護や訪問看護に比べ訪問頻度は少なくなります。逆に言えばだからこそ3カ月に1回程度きちんと訪問すべきなのです。また福祉用具のレンタル料金は商品コストより、モニタリング、そして定期点検を含むリスク管理などサービス部分が大きな割合を占めます。そのことを広く利用者、家族の方に認識をしてもらうことも大事で、個別サービス計画書はその一助にもなるでしょう。

退院患者の住環境整備に福祉用具専門相談員の能力を活かせ

 助川 地域包括ケアがこれからの主眼になってきますが、そのベースは住まいです。実は福祉用具は住まいに大変密着しており、住まいの環境を整えるために大事な役割を果たしているのです。ところがこれまではそうした観点が弱かったのではないでしょうか。地域包括ケアが推進されると福祉用具が住まいの観点からも重視されていくと思います。

 山下 今後は病院からの退院時に自宅の環境整備のために医療機関から福祉用具専門相談員が呼ばれるケースも増えてくるのではないでしょうか。そのためにはさらに知識が求められます。

 助川 ケアマネジャーも退院時のカンファレンスに参加すると加算できるようになり、今後ケアマネジャーが病院に呼ばれるようになると思うのです。その時に福祉用具専門相談員も同行して住環境整備について、ぜひアドバイスしてほしいですね。患者さんの在宅環境は病院のPTには十分に把握できないと思います。

 正木 入院前に生活していた環境のままでは、退院後、同じように生活できなくなることは頻繁に起こります。急性疾患で入院して退院時の身体状況は大きく変わっているわけですから当然です。病院サイドはどちらかというと在宅での事故を心配するあまり、かなり大がかりな住宅改修を求める傾向にあります。しかし実際に退院後の生活をアセスメントすると、余分なオーダーが見かけられます。

 そこで当社はとりあえず、お試し用に手すりとか踏み台、スロープなどを利用してもらい、その後の生活に本当に必要な福祉用具を判断するようにしています。生活が落ち着き明確にどういう暮らしを望むかがはっきりした時点で、本格的に必要な福祉用具を整えていきます。

 助川 ケアマネジャーは福祉用具や住宅改修は身体的負担を軽減するだけと思いがちです。しかし身体と精神は密接な関係にあり、介護者の負担軽減だけではなく、本人も精神的に楽になります。退院直後は特に利用者さんの精神的負担が大きいかもしれません。福祉用具は身体的な部分だけではなく、精神面でも寄与していることを訴えていく必要があります。

 山下 最近私もそのことを訴えるようにしています。自立支援により介護者の肉体的負担が軽減される。介護者の負担が軽減されれば本人が迷惑をかけているという精神的負担を軽減させるのです。福祉用具の導入で周りの人の負担が軽減され、家族の顔が明るくなると、本人の気持ちも明るくなると思います。

質向上にはモチベーションを高めなければならない

 山下 最後に福祉用具専門相談員のレベルアップのための提言をまとめてください。

 助川 やはり多職種と顔の見える関係を構築し、一緒にアセスメントを行い、利用者の目標を共有していくことが求められます。そのためには訪問が重要で、訪問で得られた情報をチームで共有していく。そうすれば私たちケアマネジャーも教えていただくことがたくさんあるはずです。双方のレベルアップになります。

 正木 私も今まで以上にチームケアに貢献してほしいですね。

 福祉用具専門相談員は自分の守備範囲にきちんと責任を持ち、多職種と情報を共有していくことで、その範囲をさらに広めていくべきでしょう。同時にこれまで以上に利用者が心を開いてくれるよう努力が必要です。そうすることで福祉用具サービス計画書のレベルアップも進んでいくと思います。

 山下 福祉用具専門相談員協会(ふくせん)では、国の助成を受け、今年から福祉用具専門相談員の研修ポイント制度構築に着手します。全国の研修機関から福祉用具専門相談員協会に申請いただき、研修内容に合わせてポイント化し、協会のホームページで発表します。例えばテクノエイド協会が実施している福祉用具プランナーの研修を認証ポイント化するようなものです。

 そして、どの地域の福祉用具専門相談員が何ポイント得ているかまで、ホームページ上に掲載する。地方の研修機関もホームページ上で掲載されることで、受講生の確保につながります。

 利用者やケアマネジャーはホームページを見て高ポイントの人に仕事を頼めるようになります。また研修を受けることでポイントが付与され広く周知されることは、福祉用具専門相談員の質向上のモチベーションが高まることにもなります。

 さらに「福祉用具専門相談員実力ランキングテスト実行委員会」が主催している福祉用具専門相談員のランキングテストも注目です。貸与事業者の団体申込みによる参加も毎回増えています。このテストは福祉用具に関する知識はもちろん、在宅におけるマナーや医療、保険制度などの知識を問うもので、年に2回、今年2回目を11月18日に全国8カ所で実施予定です。ポイント制と同様にランキングを発表することで優秀な福祉用具専門相談員がどこにいるのかが利用者はもちろん、ケアマネジャーの方の参考にもなるはずです。

 一度、上位にランキングされると、いい加減な仕事はできませんし、さらに勉強する。ランキングが低い人は上位を目指してやはり勉強する。そういう相乗効果があると思います。

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