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社会・時事・他相模原障がい者施設殺傷事件 再発防止検討チーム立上げ2016年9月26日07時00分

防犯強化へ 「開かれた施設」との両立求める

0916topix.jpg 7月26日未明、神奈川県相模原市の障がい者支援施設「津久井やまゆり園」で、元職員の植松聖容疑者(26)が窓ガラスを割って侵入し、入所者を相次いで殺傷する事件が起きた。容疑者は事件発生前から「障がい者なんていなくなればいい」などの発言を度々繰り返していたことがわかっている。国は事件を未然に防ぐ手だてがなかったかの検証と、法改正なども視野に入れた具体的な対応策に着手すべく、8月8日に専門チームを立ち上げた。施設の防犯対策、措置入院のあり方などを議論の焦点としている。国は施設の防犯カメラなどの導入費用補助を補正予算に盛りこむなど、防犯体制整備を支援することを決めた。

新制度策定なども踏まえ議論

 19人が死亡し、職員3人を含む27人が負傷した。殺人事件としての犠牲者数は、戦後最大規模。

 事態を重く見た安倍晋三首相は、事件2日後の28日に関係閣僚会議を主宰し「事実を徹底的に究明し、再発防止・安全確保に全力を尽くしていかなくてはならない。厚労大臣を中心に、さまざまな観点から必要な対策を早急に検討し、速やかに実行するよう指示を出した」と、国をあげて取り組む方針を示した。

 これを受け厚生労働省は、成城大学法学部の山本輝之教授を座長とする「相模原市の障害者支援施設における事件の検証及び再発防止策検討チーム」を設置。全国社会福祉法人経営者協議会の岩崎俊雄副会長や千葉県精神科医療センターの平田豊明院長など、さまざまな分野の専門家で構成されている。行政からは、内閣府▽警察庁▽法務省▽文部科学省▽厚生労働省▽神奈川県▽相模原市――の担当者が、それぞれ出席している。

 塩崎恭久厚労大臣は8月10日の初会合で「まず何が起きたのか、どういう経緯を辿って事件発生に至ったのかなど、あらゆる事実関係を精査することが何より重要。その上で、現行制度の下で何をしていれば防げたのかを検証するとともに、いかなる政策や制度が必要なのかなどを、今後の再発防止策として提案していく」と述べた。

防犯対策 措置入院が論点

 現在、同チームでは①福祉施設における防犯対策②警察等の関係機関との情報共有のあり方③精神保健福祉法の措置入院に係る手続④退院後のフォローアップ――の4点を議論。今秋には具体的な再発防止策を提示する方針を示している。

 ①については、外からの侵入に備えた警備強化が、地域に開かれた施設のあり方と矛盾する点が指摘されている。住民や警察との連携の観点からも、対策や情報共有のあり方を練る必要があるとの意見もあがった。

 ③と④については、容疑者が障がい者への攻撃的な発言により措置入院となったものの、すぐに退院となった経緯があったことから「医療観察法下で行われている、自傷他害のおそれに関するリスクアセスメントの考え方が参考になるのではないか」との意見や、措置入院の運用が自治体ごとにばらつきがあることから、標準化を図っていくべきとの提案がなされている。

 事実検証については本来8月中に終える予定だったが、8月30日の第3回会合で、事実関係の確認がまだ不明瞭である点を同省が説明。取りまとめは9月以降に延期となった。

「対策」「政策」分けるべきとの意見も

 知的障がい者の権利擁護と政策提言を行うための団体、全国手をつなぐ育成会連合会(久保厚子会長)は、今回の事件を明らかに特殊な条件下で発生した極めて特異なものであるとし、特有の事象に着目した短期的対応である「対策」と、共生社会の実現を目指すために中長期的に継続すべき「政策」の峻別を求める意見を、チームの検証・検討における資料として提出した。

 特に措置入院のあり方については「焦点を当てるならば、あくまで今回の事件特有の事象に着目した対策であることを、明確にした方が良い」と提案した。

 一方で政策として検討すべき点には「差別や偏見を増長させない環境づくり」「施設・事業所職員に対する人権擁護意識向上」「施設・事業所職員の処遇」などをあげ、事業者団体と共に検討する必要があるとしている。

防犯対策に補正予算118億円

 3回目の会合では防犯対策として、防犯カメラや窓ガラスの強化フィルムの導入費用補助を求める意見も出た。これに対しては、8月24日に閣議決定された今年度補正予算案の中へ「障害福祉サービス等の基盤の整備推進、防犯対策の強化」として、118億円が計上されている。高齢者施設に向けては、スプリンクラーや耐震化の補助をするため「高齢者施設等の防災対策等」として計上されている44億円で、防犯体制整備の補助も行う旨が記されている。いずれも秋の補正予算案として、成立が見込まれている。

 また、各施設が必要な対策を練るためのヒントとなるよう、防犯体制の自己確認ができるチェックリストの策定を求める意見もあった。同省は「できるだけ早急に検討する」と答えている。地域交流面との兼ね合いを図りながら行う予定だ。

 地域との関わりについては、同じく塩崎大臣も措置入院のあり方の視点から「厚生労働省としては、精神障がい者の(病院から)地域への移行というのは、大きな流れとして従来とってきた方針。この流れに全く変更はない」と会見で発言。再発防止策は、さまざまな観点から地域とのつながりを重視しつつ、策定されると見られる。

<事件の経緯>

 植松容疑者は2012年12月から同施設で勤務していたが、入居者への暴言・暴行を繰り返すなど問題行動が目立っていた。

 今年2月に、重度の障がい者への安楽死を容認する発言をし、咎められてもなお主張を変えなかったため、施設は警察に通報(同日、自己都合により容疑者は退職)。警察も他害の恐れがあると判断し、精神保健福祉法に基づいて相模原市長に通報し、措置診察の結果、緊急措置入院となった。

 また同月、大島理森衆議院議長に宛てた犯行予告とも取れる内容の手紙を、衆議院議長公邸の職員に手渡していたこともわかっている。

 入院後は大麻の陽性反応が出た。しかし「他人に危害を加える恐れがなくなった」と医師が診断したため、2週間ほどで退院。その約4カ月後に事件をおこし、同日自首した。

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