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社会・時事・他認知症の行方不明者 年間1万5,000人 鉄道事故から今学ぶこと 2017年7月14日08時00分

 警察庁の発表によると、昨年1年間で届け出を受理した行方不明者は8万4,850人。そのうち、認知症が原因とみられる人は1万5,432人に上り、4年で5,000人以上増加している。

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 名古屋市で先月、開催された日本ケアマネジメント学会の中で市民公開講座が開かれた。テーマは「2007年に起こった認知症徘徊の鉄道事故から何を学ぶのか」。当事者、研究者、元介護行政職らの発表に、現場で認知症者を支えるケアマネジャーは熱心に耳を傾けた。

 
翌日以降の届け出 死亡7 

「いかに早く警察へ届け出るかが鍵」。厚生労働省の認知症徘徊に関する実態調査の研究班長を務めた鈴木隆雄氏(桜美林大学大学院教授)はこう指摘する。鈴木教授の研究によると、行方がわからなくなった当日に警察へ届け出がされた場合の死亡率が39%だったのに対し、翌日以降では7割に上る。「どのデータでみてもはっきり差があった。速やかに届け出ること。現時点ではそれが最も重要といえる」と鈴木教授は強調する。家族が届け出をためらうケースもあるが、「ケアマネジャーは相談を受けたら、迅速な行動を心掛けてほしい」と呼びかける。

 また鈴木教授は「警察や自治体職員の捜索以外に、一般市民が声掛けをして発見されたケースも多い」ことや「発見までの平均時間が、見守りネットワークに登録していた人が15.8時間だったのに対し、していなかった人は43時間と3倍近い」ことなども報告。市民への普及啓発、地域ネットワークや自治体の取組みなどの重要性を強調した。

「認知症の人は危険な存在ではない」

 高井隆一さんは07年に愛知県で起きた鉄道事故で、列車に跳ねられ亡くなった認知症男性(当時91歳、要介護4)の長男。遺族の賠償責任を巡る裁判は、最高裁まで争い、メディアでも大きく取り上げられた。

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 男性は02年ごろから認知症が進み、高井さんの母親が夫を介護した。高井さんの妻も東京から引っ越し、介護を手伝った。週末は高井さんも東京から駆け付け、「家族総動員で介護していた」という。男性は外出願望が強く、事故以前も2度、夜間に外へ出て行ってしまいパトカーで帰ってきた。玄関にカンヌキをかけたり、庭のフェンスに南京錠をしたり、「監禁」を試みた時期もあったが、興奮させるだけでうまくいかなかった。諦めて開けっ放しにしたところ、「いつでも出られるとわかったからか、それからは落ち着いていた。監禁は父にとって最悪の対応だった」と高井さんは振り返る。それ以来、身に着けるものに名札を付けたり、玄関にセンサーを設置するなどの対応に切り替えた。

 07年12月、男性はデイサービスから帰宅した後、妻がうたた寝をした数分の間に徘徊し、JR共和駅(愛知県大府市)の線路上で列車に跳ねられ死亡した。ホームの端には階段があり、そこから線路へ降りて行ったとみられる(写真)。

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高井さんは「寒い時期でおそらく排尿する場所を探し、父は線路に降りたのだろう。現場を見てそう思った」と話す。

 「徘徊という言葉がよく使われるが、認知症の人は目的なくむやみに歩き回っているわけではない。父の『一人歩き』には、かつての職場であったり、生まれ育った実家であったり、いつも目的地があった。ただ自分が覚え

ている当時の景色と違うので、不安になって立ち止まってしまう。そこで声をかけると、安心して、素直に戻ってくれた。事故当時は、認知症の人がむやみに歩き回る、とても危険な存在であるように報道された。そうではないと声を大にして言いたい」(高井さん)

 高井さんは現在、父親の仕事を継ぎ、不動産業を営む。事務所から、周りをきょろきょろと見渡したり、不安そうに立ち止まっている高齢者を見かけたときには声をかける。2年間で3人に声かけをした。「やってみてなかなか難しい。父もそうだったが、初めの3分くらいなら上手く話すので、認知症の人かどうか判断がつかない」と苦笑いする。しかし、「『今日はいい天気ですね』『どこに出かけるんですか』。この2つの質問で反応を見守る」とし、地域住民として自分ができる役割を果たしていきたいと話した。

介護保険で救済の仕組みを

 この事故では、JR東海は約720万円の賠償を求め提訴。最高裁は支払いを命じた一審、二審の判断を覆し、遺族に賠償責任はないとする判決を下した。しかし、介護する家族に賠償責任があるかは生活状況などを考慮して決めるべきだとし、今後の判断には含みを残している。元厚生労働省老健局長の堤修三氏は、「最高裁の判決は、社会的に意義深いものだったが、今後同様のケースが起こったとき、遺族が監督責任を問われない保証はない」と指摘。堤氏は「介護保険の地域支援事業で、認知症の人が第三者に被害を与えたときなどに、見舞金が家族や被害者に支払われる仕組みを創設してはどうか」と介護行政を運営していた経験からの提案を行った。

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