ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

施設・住まいケーススタディ⑤リハビリ 機能回復・生活範囲拡大の視点で2013年1月31日16時32分

西江井島病院

 兵庫県明石市の西江井島病院(医療法人双葉会、藤原仁志院長)は、一般病棟44床、回復期リハビリ病棟60床を備える総合病院。回復期リハ病棟では、脳血管疾患や大腿骨頚部骨折などの患者に対し、医師や看護師、リハビリ専門職が協働し、患者一人ひとりに合わせたリハビリ計画を立て、身体機能や日常生活能力の回復・向上を目指すリハビリが提供されている。

ヘルパー・家族と移乗方法を改善

 同院は訪問リハビリにも意欲的だ。訪問リハに従事する理学療法士の西田武史氏は、要介護1~5まで様々な身体状況の利用者宅へ日々訪問している。「ご利用者個別の身体状況に合わせた、適切なリハビリの提供には、担当主治医やケアマネ、他のサービス提供者などとの日頃からの連携が重要です」と話す。

 西田氏が週に1回40分の訪問リハを提供するAさんは、60代前半の男性。昨年2月に脳出血を起こし入院、その後本人の強い希望により、回復期病棟を経ずに、急性期病棟から直接自宅へ戻った。

 要介護認定を申請すると、介護度は5と判定。後遺症の四肢まひにより手足に強い拘縮がみられ、特に当初は伸びきって固まった膝を40度以上曲げようとすると激痛が走るという状態だった。身の回りの介護は奥さんと娘さんが担い、訪問リハの他に訪問介護、訪問看護、デイサービスなどを限度額近くまで利用している。

 Aさんはデイサービスを週2回利用しているが、送迎車に乗り込むためには車いすに移乗しなければならない。その際、男性ヘルパーがAさんの肩のあたりと脚を支えて「お姫様だっこ」のような形で抱え上げ、同時に娘さんがAさんの膝が曲がりすぎないように脚を支えながら、リクライニング式の車いすへ移していた。

 ある時娘さんからこの話を聞いた西田氏。「これでは、介助者の負担が相当大きく、ヘルパーが男性でないと対応できません。そして何よりこの移乗方法では、ご本人が大変怖がっておられ、デイサービスへ行くこと自体を嫌がっておられました」。

 そこで西田氏は担当のケアマネジャーにこの状況を説明し、解決策を話しあう場をもつことにした。そして訪問リハの時間に、ケアマネとヘルパーにも集まってもらい、安全で介助負担も本人の不安も軽減できる移乗方法を検討した。

 その結果、ベッド上のAさんの身体の下にバスタオルを敷き、肩口からふくらはぎにかかるあたりまでをタオルで支えて、頭側と脚側からの2人でタオルごと身体を少し持ち上げ、ベッドに横付けしたリクライニング車いすへスライドさせて移乗する方法をとることが提案された。

 これにより、今では女性のヘルパーと娘さんの介助で安全に移乗できるようになり、Aさんの移乗に対する不安も軽減することができた。この移乗方法は昨年5月ごろから始め、今でも続けられている。

 この一連の取り組みは、訪問リハの「訪問介護計画を作成する上での必要な指導及び助言を行った場合」の加算を算定できる可能性があった。しかし、訪問介護の生活機能向上連携加算100単位に加え、3カ月に1度の300単位の加算は、介護保険の利用が限度額ぎりぎりまで迫っているAさんには負担が大き過ぎると判断し、加算の取得は見送った。「報酬改定間もなくの時期で、現場レベルでは加算の算定要件の解釈もあいまいな状況だったこともありました。今後このような取り組みを続ける中で、要件に該当する手続きの流れがはっきりと確立できた時に、算定を検討することにしています」と西田氏は話す。

 Aさんは、移乗への不安が減ったことで、訪問リハの際にも椅子に移ることへの拒否も減った。徐々に膝の曲がる角度も拡がってきており、今後は座位から車いすへの移乗、そして外出の実現へ取り組みたい、と西田氏。「Aさんの全身の固さや拘縮は徐々に和らいできて、生活の幅をより拡げる方向へと進んでいます。これはリハビリの力だけでなく、ご家族はもちろん、ケアマネ、訪問介護、訪問看護など皆さんとの協働で、Aさんの生活をサポートできた結果だと思います」と話す。

介助方法をヘルパーへ指導

 同じく訪問リハ担当の作業療法士、山田誠氏も「ケアマネを軸として、各サービス提供者からの利用者に関する情報を集約し、より良いサービスに活かすことが重要」と話す。その中で、リハビリの指示書を出す主治医との関わりが薄いことが課題だという。そこで山田氏は、白紙の指示書を主治医のところへ直接持って行き、少しでも医師から直接情報を得る機会を作ろうとしている。「しかし実際にはなかなか時間が合わず、紙だけでの情報のやりとりになっている場合が多いのが現状です」と話す。

 利用者の身体機能維持の観点から、訪問介護の後に訪問リハが入っている時に早めに訪問し、ヘルパーへ本人の残存機能を活かした移乗方法などを直接アドバイスすることもある。これにより、ヘルパーと顔なじみの関係になり、ヘルパーから積極的に山田氏へ質問をしてくるようにもなるという。

 訪問看護のナースとは、同じ日にサービスが組まれていない場合が多く、連携をとるのが難しいという。そこで、利用者の身体状況を記すメモを利用者宅に用意し、それぞれが記録をつけて情報共有を図る工夫もしている。また、空いた時間に地域の訪問看護ステーションに顔を出すこともしている。「ALSなどの特定疾患がある方の場合、病気の進行に伴い歩行や座位が難しくなっていくのに合わせ、より姿勢保持機能の高い車いすやリフトの導入など、生活環境を変えていく必要があります。その都度、ケアマネや特定疾患の療養上の相談を担う保健師、ご家族に対して、新たに導入した福祉用具の使い方など、適切な介助方法などについてご説明しています」。

 「訪問リハビリは、リハビリそのものだけでなく、話を聞いていま抱えている不安を取り除くなど、ご家族のフォローも視野に入れた支援という視点も重要だと思います」と山田氏は話す。

 同院で入院患者のリハビリを担当する作業療法士の本村圭司氏は、「訪問リハのスタッフと情報交換し、退院された方の情報を得ることで、生活機能の回復状況や退院時に行った住宅改修の効果などを確認でき、いま入院されておられる方のリハビリや在宅復帰支援にも活かすことができます」と、入院スタッフと訪問スタッフの連携の重要性も話した。

  • 理学療法士の西田武史さん(左)と作業療法士の山田誠さん.JPG
  • 理学療法士の西田武史さん(左)と
    作業療法士の山田誠さん

「施設・住まい」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • 福祉住環境コーディネーター検定試験
  • SSL グローバルサインのサイトシール