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施設・住まい介護職員の防災士取得を推進 特養ながまち荘2019年12月 3日10時08分

 広い範囲で被害をもたらした台風19号。10月29日時点の厚生労働省の報告書によると、高齢者関係者施設では、浸水で入所者が避難している施設が39カ所ある。山形市にある特養「ながまち荘」での対応と、介護職員の防災士取得推進の取り組みについて聞いた。

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 山形市の特別養護老人ホームながまち荘(運営法人=済生会)の近くには、馬見ヶ崎川(まみがさきがわ)が流れており、台風19号の接近時に氾濫の恐れがあった。馬見ヶ崎川は水位が6m程度になると氾濫する可能性が高く、台風19号接近時は3mまで水位が上がっていた。

 峯田幸悦施設長は「川の水位は一見少なく見えるが、上流の雨量等によって短時間で一気に水位が上昇することもある」として、水位が3.9mに達したら、同施設では全職員を召集して対応を検討することを決定。最終的に水位は3.5mまできたが避難せず対処できた。峯田施設長は「河川の氾濫は地震と異なり、水位を見て今後が予測できる。しかし『いつ氾濫し、いつ逃げるか』の判断が難しく、避難が遅れるケースもある」と指摘する。

 さらに、平屋建てと2階建て以上の場合でも避難方法が変わる。複数階ある施設ならば上の階へ逃げる「垂直避難」。平屋の場合は近隣の建物や、水が届かない地域へ移動する「水平避難」が必要。かかる時間や労力も異なる。

 ながまち荘は平屋建てで河川が氾濫した場合は、500m離れた先に同法人が運営する病院へ避難する予定だった。全入所者を避難させる場合、数時間かかるため、移動手段として車を6台用意するなど、事前準備も行っていた。

 「近年、地震だけではなく水害被害も多数発生している。現在、当施設の隣に100人程度の利用者が避難できるスペースを設けた、2階以上の建物の建設を検討している」と峯田施設長は今後の対応を話す。介護と防災知識の両立 同法人では、2012年から被災した特養等を支援するため、介護職員からなる独自の災害派遣福祉チーム「DCAT」を設置している。DCATは、全国約100の特養・老健・障がい者施設の職員で構成され、熊本地震や、台風被害にあった岩手県岩泉町、西日本豪雨災害等で出動した。

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 ながまち荘では災害発生時に早期対応ができる介護職員の育成のため、防災士資格取得を推進。現在30人以上が資格を持っている。

 「災害対策はなによりもスピードが命。現場でリーダーとなる人が、1人でも防災士の資格を取得して介護だけではなく、防災の知識と技術をしっかり取得し、対応できるかが重要となる」と強調する。

 峯田施設長は山形県老施協会長で、県防災士会の筆頭副会長も務める。防災士の活動を通じて、地域の介護施設や医療機関のほか、行政や消防団との連携も強化している。

 峯田施設長は「災害発生時に、サポートできる関係を地域で作っておくこと、施設内で的確に防災対応できる職員の育成、被災地支援ができる体制作りを継続し、今後は全国へ広げていきたい」と語る。

災害発生時に早期支援に繋げる動き

福祉現場を支える「全国老施協D-WAT」

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 全国老人福祉施設協議会(平石朗会長)では、2017年より大規模自然災害発生時に被災した施設へ派遣する福祉チーム「全国老施協D―WAT」を設置している。

 各自治体の老施協から派遣要請があった場合、各地域の老施協を通して全国老施協D―WATの派遣依頼を行い、災害が発生した自治体の高齢者施設で支援活動を行う。1チーム4~6人で、介護職員や看護師、生活相談員、ケアマネジャー、施設長などで構成される。

 今回の台風19号の影響により床上浸水した施設が多く、入居者の避難もあった。避難者を受入れた埼玉県の特養で人手が不足したことを受け、2人のD―WATを派遣した。

 現在は▽福島県15人▽茨城県58人▽千葉市42人▽愛知県3人▽和歌山県72人▽鹿児島県20人▽香川県11人▽岐阜県15人▽岡山県60人▽広島県7人▽山口県32人▽石川県19人▽山形県26人▽大分県16人▽徳島県11人――の14県1市、407人が登録している。

避難所で要配慮者をサポートする各自治体のDWAT

 各自治体でもDWATの発足が進んでいる。全国老施協D―WATと異なる点は、施設ではなく避難所にいる要配慮者のサポートを中心に行うところ。

 京都府は14年に「京都DWAT」を発足。府内の各地域に12チームを編成し、約140人が登録している。

 チームは▽社会福祉士▽介護福祉士▽ケアマネジャー▽生活相談員▽看護師――などで構成され、地震などの大規模災害が発生した際に、被災自治体からの派遣要請を受けて、避難所で活動する。避難所で生活を送る、「要配慮者」の体調や心身状況悪化等の二次災を防ぐことを目的にしている。

 同府担当者は「要配慮者と聞くと高齢者や障がい者、子供などを想定されるが、慣れない避難所での生活は一般の人も心身面で大きな負担になる。ここでいう『要配慮者』とは避難生活を過ごす中で体調を崩されている人も含み、多くの人のサポートを目的としている」と話す。

 これまで、16年熊本地震発生時に15人、18年西日本豪雨時に24人を派遣した。避難所では、要配慮者のニーズ聞き取り(写真1)や、視覚障がい者などへの寄り添い支援、相談所の運営(写真2)などを行う。

 この他、避難所生活の負担が軽減できるよう、ダンボールベッドや仕切りの設置、段差解消等の整備など幅広く取り組む。

 「避難して来た人が安心して過ごせるよう、避難所全体をサポートし、適切な支援につなげていきたい」(同府担当者)

 災害派遣福祉チームの名称については、各自治体・団体の判断に委ねられている。現在、名称統一が検討されている。

災害協定結び、 避難所や事業所へ福祉用具支援

 全国の福祉用具貸与事業所が加盟する日本福祉用具供給協会(小野木孝二理事長)では、自治体と災害協定を結び、被災地で不足している福祉用具等を支援する取り組みを行っている。

 台風19号の対応では、協定を結んでいる千葉県大網白里市が台風15号の被災を踏まえ、事前に協定を発動。同市の要請を受けて台風19号が上陸する前の、10月11日時点で避難所に介護ベッド10台を納入した。

 避難所に導入した介護ベッドなどの福祉用具は、在宅にいる高齢者のほか、施設の停電により避難してきた高齢者が使用していた。

 避難所ではブルーシートやダンボールを敷いて雑魚寝するケースがほとんど。災害発生直後は要配慮者が安心・安全に過ごせる環境は整えられていない。

 現在130の自治体と協定を締結しているが、今後もより多くの自治体との締結に向け普及を進めている。

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