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施設・住まい東京海上日動BLS 尊厳守る介護の徹底2019年12月 9日11時49分

全事業所で3年間、 身体拘束ゼロ達成

 東京海上日動ベターライフサービス(東京都世田谷区、中村勇社長)では、身体拘束ゼロや、「鳴るから動かないで下さい」など、職員による行動抑制につながらないようにセンサーに頼らない介護など、入居者の尊厳を守る介護に取り組んでいる。同社が運営する有料老人ホームのキャッチフレーズは「老いて豊かと語れる暮らしの提供」。その理念を振り返り、利用者ごとの暮らしを考え、適切なケアの実践につなげることで尊厳を守る介護の考え方が文化になっている。

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 同社常務執行役員で施設介護事業部の山田真弥部長は「入居者の尊厳を守ることは、同時に、社員の尊厳を守ることにも繋がる。そして社員が介護という仕事に誇りを持つことができる」と取組みの効果を説明する。

 尊厳を守る介護の実践に向け、同社ではまず、経営(運営)方針と組織としての対応を固めた。

 取組みの支えとなる仕組みとして①入居者の尊厳を守る風土づくり②異変や芽の早期発見③専門性の向上④労働環境の改善――の4つを柱に位置付けた。

採用段階~新卒研修で理念を共有

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 山田部長は「入居者の尊厳を守る風土作りが何よりも重要だと考えており、採用段階にも組み込んでいる」と話す。

 同社では転職希望の経験者の面接時に「身体拘束をした経験があるか、その時どのように考え行動していたか」「虐待や身体拘束についてどう考えるか」の質問を必ず行う。

 「当社に限らず、介護業界は慢性的な人材不足の状態にある。入職希望者は出来る限り採用したいという気持ちがあるのも事実だが、人手不足だからと言って当社の文化に賛同できない場合は無理に採用を進めることはせず、当社の理念に沿ったケアができるかを採用段階でしっかり見極めるよう心がけている」と山田部長は強調する。

 新人研修では、尊厳を守るうえでの基礎的な考え方を学び、勤務中はですます調で会話することを基本としている。「言葉使いや身だしなみの乱れは相手への敬意に欠くことで、虐待の芽にも繋がる。相手の尊厳を守る考え方に加えて、ご入居者=お客様であるという意識を持つことは、虐待の芽を生まないことの第一歩だ」と山田部長は話す。

早期発見の仕組み

 入居者の尊厳を守るための意識を高める仕組みの一つとして、第三者による外部の眼を入れる機会を作ることにも積極的に取り組んでいる。

 まず「社外の眼」として学生のインターンシップを受入れ、「社内の眼」として新人の配属先事業所以外での研修。このほか、来訪する入居者の「家族の眼」がある。

 山田部長は「社内の他事業所で実習を行うことで、外部の眼に近い感覚を持つ大切さに気付き、自らのケアを振り返りより良くする力を養うことができる」と取組みの理由を説明する。

 実際に研修に行った新人職員から「研修で学んだことより、現場職員の言葉使いが砕けている」と気付きがあり、改善に繋がったケースもある。

 この他、▽傷やアザ、内出血を見つけた際は全て事故として取り扱う▽1.5対1と手厚い人員配置▽年1回のお客様満足度アンケートによる意見収集▽内部と外部のホットラインの設置――等に取組み早期発見に繋げている。

 支援・教育部兼施設介護事業部の大川百合子課長は「小さな内出血でも事故として扱うことで、施設内のリスク軽減など、次の対策に繋げることができる。また、些細な変化や違和感もすぐに発見・報告できる体制を常に整えているため、虐待の芽を生まないことにも繋がる」と話す。

専門性の向上や労働環境の改善

 虐待防止には、入居者の状態を適切に判断し、ケアに繋げる能力を身に付けることも有効だ。同社では施設に勤務する職員のうち約8割が介護福祉士の資格を取得している。資格取得の手当の整備や、社内の委員会・多様な研修など、職員が幅広く学べる環境を提供している。

 また、5連休や計画的な有給休暇の取得を推進し、職員がしっかりと休める労働環境づくりにも取り組んでいる。

 現在同社の平均残業時間は月約15時間。年5回の評価面談や、社員満足度アンケートを行い、職員の意見収集にも努めている。

家族への理解の重要性

 山田部長は「施設で身体拘束ゼロを達成していくには、職員だけではなく入居者家族からの理解も重要だ」と強調する。

 「入居検討者には、まず尊厳を守る介護の実践を理解してもらってから入居へと繋げている」(山田部長)

 この他、過剰・理不尽な要求やハラスメントは職員のストレスに繋がる危険が大きいことから、提供できるサービス内容を職員と入居者・家族でしっかり共有。ハラスメントが発生した際には、すぐに本社の担当者も入って適切に対応する。

 「職員の過剰なストレスは虐待の芽を生む恐れがある。入居者の尊厳を守る介護の実践には、働きやすい環境づくりは欠かせない」と大川課長は説明する。

全入居者の身体拘束ゼロ

 2019年4月末時点で「やむを得ない身体拘束」は入居者454人中0件で16年2月より全事業所でゼロを継続、センサーも2014年4月からは全事業所で新規ゼロを継続している。

 身体拘束以外にも、入居者の自由を守るために全事業所でゼロ達成したこととして▽エレベーターロックゼロ▽共用部のサッシロックゼロ▽居室サッシロックゼロ▽施設側の都合による勝手な居室ドア開放ゼロ――などがある。

 これまで同社が運営する施設には「身体拘束をしない施設に入りたかった」と入居を決めた入居者や、「尊厳を守る介護を実践している施設で働きたい」と転職してきた社員もいるという。

 山田部長は「入居者が本当に望む生活をサポートすると共に、職員が自信を持って働ける施設作りを継続していきたい」と意気込む。

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