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プリズム・社説 「プリズム」 (2011年4月10日号)2011年5月20日12時32分

 松島で、友だちの安否を心配して、千葉県船橋市から原付でやってきた青年に出会った。インターネットで東松島市にある避難所の名簿に名前を見つけたと言う。ほとんど荷物らしいものも持たずだったので、飛んできたのだろう。しかし同姓同名で、別人だった。松島は太平洋を隔てるように、東と西から半島が突き出ていて、その間を重なるように小さな島々が覆っている。津波は半島部にあたる東松島市と七ヶ浜市を襲い、甚大な被害を及ぼした。被災状況を調査に来ていた国土交通省の職員に聞いたところ、松島市にも津波は達したが、浜から300㍍ほどに位置する国宝瑞巌寺にまでは達しなかった。多くの場所で、リアス式海岸の狭い入江が津波の高さを押し上げ、勢いを強めさせたのに対して、松島湾の形状は幸いしたらしい。問うたところ、青年は友だちは元彼女だと言って、津波で海沿いの木々が奪われ、高くまで周囲の土面が拡がった島々を静かにながめていた。

 どこをどう探せばよいのか。被災した多くの人々が、この青年のように途方に暮れながら、いまも望みを捨てずに肉親や友人を探し続けている。訪れた避難所や役場の玄関のドアや壁、柱は探し求める人の名前と連絡先を記した紙で覆い尽されていた。その1枚1枚に託された思いがどれほど重いものかは、当人でないと分からない。

 3週間たった今も、安否確認は続いている。仙台市のケアマネジャーは、利用者の安否確認に1週間を要した。固定電話は通じず、頼りの携帯電話もなかなか通じない。ガソリンがなく、自転車で回る。閉まったままの利用者宅へは、携帯電話番号を記して連絡を乞う紙を玄関に貼って帰る。しばらくして、ご近所や民生委員から、避難場所や親戚への一時移住の連絡をもらうこともあるという。青年の元彼女の住まいは、海からは少し離れた南仙台。無事を祈りたい。

(2011年4月10日号)

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