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介護保険・行政緑風園 菊地雅洋さんに聞く 要介護2までの給付制限2015年10月28日08時00分

00000009.jpg「事業者団体として反対を」


 ――政府の要介護2までの給付制限案をどう判断されますか。

 これまでも給付制限に介護現場は声を上げてきたが、なかなかその声を吸い上げてくれるところがなかった。介護保険料を強制的に徴収されている被保険者の給付の権利を奪い取られる事態は、国民にとって間違いなく不利益だ。当然に痛手を被る事業者団体も、介護現場からの声をしっかり受け止めて、国の給付制限の提起に反対する姿勢を示さなければならない。

 中重度に給付をシフトして軽度者の給付を制限すれば、劇症化して中重度になる人も増えるだろう。いま「カジノ型デイ」のあり方が問題視されているが、それが制限されると、男の人の引きこもりが増えるおそれも出てくる。

 介護保険制度創設時、保険料方式を主張した厚生省に対して、大蔵省は最終段階で公費方式を掲げたが、政治的に保険料方式に決まったという経緯がある。現制度は介護以外に財源を使うことを認めない特別会計で運用されている。うがった見方だが、厚労省が財務省の要介護2までの給付制限の提言に真っ向から反対できないでいるのは、特別会計である介護保険制度の現行の仕組みを守りたい一心か。介護保険をなくして別の仕組みと言われるのを嫌っているのかも知れない。

 ――15年改正で特養は原則要介護3以上になりました。

 保険給付を原則要介護3以上にするという縛りは徐々に広がってきた。私は15年改正論議で特養は原則要介護3以上という話が出たときに、これは特養だけに留まらないので、いま反対しなければいけないと声を大にして警鐘を鳴らしてきた。そして昨秋、財政等制度審議会で18年改正に向けた給付抑制策が提起された。給付抑制策が「地域包括ケアシステム」という言葉で覆い被されている。特養の現場では原則要介護3以上となり、行き場のない人たちが出てきている。地域では孤独死、ひとり死が増える。地域包括ケアシステムが単なる地域丸投げシステムであってはならない。

 ――14年診療報酬改正で各病棟に在宅復帰率が設定されました。要介護3以上に介護給付を重点化するとどうなると予想されますか。

 退院して在宅復帰というのは、重度者というより、むしろ軽介護の人が多いのではないか。在宅復帰率の「在宅」の対象には、自宅のほか、特養、グループホーム、有料老人ホーム、在宅復帰型の老健なども含まれる。介護保険給付を原則要介護3以上に限定してしまうと、要介護2までの軽度者は介護保険給付制限を受けて、いずれの「在宅」にも戻れなくなり、早期退院の仕組みが機能しなくなるだろう。新設した地域包括ケア病棟も崩壊せざるを得ない。次期16年診療報酬改定でどう見直すのか。

 ――15年改定での居宅介護支援で特定事業所集中減算が強化されました。

 これは私の認識だが、09年改定でケアマネジャーの標準持ち件数が50件から35件に引き下げられたが、介護報酬のアップはほとんどなかった。その見返りとして居宅介護支援に特定事業所加算が創設されたのだが、特定事業所集中減算も同時に求められた結果、対象サービスを訪問介護、通所介護、福祉用具貸与の福祉系3サービスに限定することで決着した。パブコメで「なぜ3サービス限定か」という質問が相次いだが、国はこれに答えなかった。

 今回15年改定になって、特定事業所集中減算の見直しを行い、占有率を下げ、対象を全サービスに広げた。問題は、囲い込みの防止だろう。退院後、同法人の在宅サービスなどが担うといった医療の囲い込みこそ問題だと思っている。減算のしくみがあることで、本当は利用したいデイサービスがあるのに利用できないでいる利用者の現状がある。

 加算・減算の中には質の担保に役立っていないものもある。財政的にどこを切るかという観点から生まれた加算・減算も多い。介護報酬が複雑になり一層国民に分かりづらいものになってきた。

 ――川崎の老人ホームで虐待があり、転落で3人の利用者が亡くなりました。介護保険制度のほころびがこうした虐待や介護殺人などに表れているのでしょうか。

 プロの介護職がいる施設でこうした虐待が起こるのはまったく許されることではない。虐待はどのような状況でも介護でお金をもらっている人がやることではない。虐待をしないのは最低限のルールであって、その上に介護職としての職業倫理がある。誰しも川崎の事例は明らかな虐待だと分かるが、日々の言動などから少しずつマヒが始まり、虐待につながることもある。人員不足や、お金儲けにしか関心のない管理者の存在が背景にあるが、介護は介(助ける)と護(まもる)ということを忘れないでほしい。介護現場では、そうした基本から教えている。


(プロフィール)きくち・まさひろ

1960年北海道下川町に生まれる。北星学園大学社会福祉学科卒業。社会福祉士、介護福祉士。特養「緑風園」(社会福祉法人登別千寿会)総合施設長。「介護福祉情報掲示板」管理者。著書に「人を語らずして介護を語るな」(ヒューマン・ヘルスケア・システム)。

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