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介護保険・行政神戸市・兵庫県 「アミューズメント型デイ」規制へ2015年9月14日08時00分

「新総合事業」でも自治体に抑制求める

パブリックコメントでは賛否分かれる

0916amu.jpg 神戸市は、介護保険事業でありながら、実質的に麻雀やパチンコ、カジノなどのゲーム提供が大半の「アミューズメント型デイサービス」の規制に乗り出した。同様に、兵庫県も介護施設にまで対象を広げた規制を予定している。関東・東海でアミューズメント型デイの指定が相次ぐ実態を受けての予防措置。議会に諮り、神戸市は9月中に、兵庫県も10月中の実施を目指す。ただ、神戸市の実施したパブリックコメントでは賛否が分かれた。

社交性や意欲を喚起する「アミューズメント型デイサービス」

 日本エルダリーケアサービス(東京都港区、森薫社長)は、身体機能訓練・認知機能向上・脳機能活性化を目指したゲーム主体の「デイサービスラスベガス」を、関東地方を中心に8店舗展開する。

 取材した足立店は本場ラスベガスのようで、パチンコや雀卓などもある社交場の雰囲気。1日20人定員で7~9時間営業。平均要介護度は2弱。職員数4人と機能訓練指導員が配置される。利用者の6割が男性で平均年齢は80代半ば。

 事業所の雰囲気は自然体で、食事は好きな時に、好きなものから選ぶことができるスタイル。利用者を年寄り扱いしないことがモットー。女性利用者が多いデイサービスにあって、男性利用者の割合が多いのはゲームがあることも関係しているようだ。

 利用者の一日の流れは、送迎車両で事業所に到着後、血圧や体温計測など健康チェックを受け、スポーツトレーナー監修の運動「ベガストレッチ」に取り組む。その後、施設内通貨「ベガス」が2万ベガス配布され、個別機能訓練を含むサービスメニューから活動を選択するが、多くの人はレクリエーションとして用意されたカジノ台でのゲーム、パチンコ、麻雀などに興じる。施設内通貨を使って増やすことを目指しうれしいくやしいなど感情豊かにゲームに取り組む。1日の終わりに、その日一番勝った人を表彰し写真撮影。送迎車で自宅まで送ってもらう。

「ゲームはきっかけ作りの一つ」

0916amu2.jpg アミューズメント型デイサービス規制の動きが神戸市・兵庫県であることについて、森薫社長は、出店していないのでコメントする立場にないとした上で「あくまでも、ゲームはきっかけ作りの一つ」と力説する。

 施設内通貨についても、賭け事以外には使えず、施設内サービス等との交換もできない。用途としては貯めていくだけという。

 既存事業所についても「店舗ごとに行政の事業指定をきちんと得て運営している」とし、「今後も出店拡大を目指すが、出店を予定する行政と連携を密にしながら、法令遵守をモットーに、適正に事業を継続していく」と説明した。

神戸市「介護保険の趣旨を逸脱」したものを規制

 神戸市が事業指定の規制を検討するのは「日常生活を著しく逸脱して遊技を利用者に行わせること」「疑似通貨等、射幸心を著しくそそり、依存性が著しく強くなるおそれがあるものの使用」「賭博又は風俗営業等を連想させる名称又は内容の広告」について。介護保険で求められる「尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるサービス」から著しく逸脱するためと説明する。ゲーム実施時間や、ゲーム参加者割合、遊技台・雀卓の台数などの詳細基準は示さず、常識的な判断を行うとしている。

 デイサービスで言えば「入浴、排せつ、食事等の介護、生活等に関する相談及び助言、健康状態の確認その他の居宅要介護者に必要な日常生活上の世話と機能訓練をおこなうこと」(施行規則第10条)とされることから、アミューズメント型デイサービスは、公費や保険料で運営される事業としては認められないという立場。

 市の担当者は「現行では、申請があれば指定せざるを得ない状況。現時点で市内にアミューズメント型デイサービスはないとの認識だが、今後に備えて条例化を目指す」と説明する。

賛否相半ば「サービスの多様性」「利用者の笑顔を奪う」も

 市が規制条例に先駆けて実施したパブリックコメントには12件の意見が寄せられたが、賛否は分かれた。

 約半数は「介護保険財政の適切な利用を進めるべき」と市の見解や規制の流れに同調するものだったが、半数は「利用者は笑顔を浮かべて喜んでいるのに」「サービスの多様性を奪う」と、利用者本人の喜びや意欲を奪いかねない規制への反対意見が寄せられた。

 市担当者は「誤解があるようだが、デイサービスのレクリエーションとして、こうしたゲームを取り入れることを規制する趣旨ではない。あくまでも程度論。制度趣旨から逸脱しているものを規制する」と主張する。

 また「ゲームで認知機能の改善効果があったとしても、生活行為の獲得などの自立した生活に向けた取り組みがない。施設内通貨を導入するなどしている場合、射幸心が煽られて、ほかのデイサービスより利用回数が多くなると考えられる。保険財政面とともに、本人にとってもギャンブル依存症すら疑われる症状になりかねない」と規制の必要な理由を挙げる。同市は17年度から市町村事業である新総合事業を始めるが、同事業の「通所サービス」についても同様の規制を予定する。

兵庫県「特養、老健施設も規制」「別途考え方を示す」

 兵庫県でも同様の規制趣旨・内容を予定するが、デイサービスのほかに、特養施設、老健施設についても広く規制対象とする。介護保険課担当者は「主にデイサービスが対象になると考えるが、今後の可能性も含め、対象を広くとらえた」と説明する。

 また規制内容も、神戸市の内容に加えて「賭博又は風俗営業等を想起させるような施設の内外装、設備、レイアウトとしないこと」「賭博又は風俗営業等を想起させる名称又は内容を広告しないこと」と一歩踏み込んだ規制を敷く。

 県担当者は「条例ができ次第、より具体的な考え方を別途作成する必要があると考える」と、明確な基準設定も予定しているとした。

 また、県の規制の及ばない中核市の姫路市、西宮市、尼崎市についても、情報提供を行うことで協調を呼びかける。

「多様性の喪失」、行き過ぎた「カジノゲーム排除」に懸念も

 関東で介護保険行政の第一線で活躍する自治体担当者は「規制に賛成。むしろ規制が遅すぎる」とし「そもそもアミューズメント型といった機能改善に即しないものを、保険給付の中で行うのはおかしい。常識的に考えればわかること」とした。同時に「(しっかり節度をもって)サービスの一環としてカジノや麻雀に取り組む事業者が、今回の件で縮小を考えるようになるのであれば残念」と、アミューズメント自体が批判に晒されることを危惧する。

厚労省「事業者の工夫と、保険者のサービスの在り方の折り合い」必要

 デイサービスの指定権限は都道府県(政令市・中核市を除く)であるが、15年改正により、介護予防給付は15~17年度中に地域支援事業(市町村事業)に完全移行することや、16年度より小規模デイサービスは地域密着型サービスとなるなど、指定権限が市町村に移管する。自治体により、地域実情に合った、多様で利用者に求められるサービス提供が期待される反面、指定の可否判断が求められる場面も増える。

 厚労省老健局振興課長の辺見聡氏は「兵庫県や神戸市は、保険者として、サービスの在り様という観点から問題意識を持たれたということだと思う。疑似通貨が問題ではなく、射幸心を煽るのがだめということだろう」とし、「お泊りデイのように、事業者の工夫にどういった折り合いをつけていくかということだろう」と、事業者の創意工夫に対して規制的になり過ぎず、保険者としての考え方が活かせるあり方を探っていくことの大切さを強調した。

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