ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

介護保険・行政【本紙アンケート】地域のちから活かし、多様な主体が担う2017年8月31日07時00分

 地域包括ケアシステムの構築と介護保険制度を持続可能なものとするため、15年の介護保険改正で、自治体が取り組む地域支援事業の中に、新しい介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)が位置づけられた。

 全ての市区町村で、介護予防訪問/通所介護が総合事業へ移行するのを前に、本紙アンケートへの回答があった自治体に、総合事業の具体的な取り組み状況について聞いた。

【緩和A型】

独自研修や訪問サービス同行実習を人員緩和要件に

 訪問/通所サービスの緩和A型で、独自の研修の受講などを要件に、人員要件を緩和していると回答があったのは39自治体。

 北海道釧路市(人口17.3万人、高齢化率31.5%)では、訪問A型の生活援助の提供者の要件として、市が認める研修を修了した人も可とする。研修は、3日間の講義(計15時間)と各事業所で行う実習(のべ5時間以上)を規定。講義は、介護保険制度や総合事業について、高齢者の心身特性、コミュニケーションマナー、認知症の理解と対応、権利擁護、リスクマネジメントなど幅広い。受講者は、現在訪問介護事業所に所属しているが、ヘルパー資格を持っていない事務職員など。

 福島県会津若松市(人口12.2万人、高齢化率29.3%)では、訪問A型の生活援助の提供者要件に市が定めた一定の研修を受講した人も認めている。研修は、介護職員初任者研修の中で総合事業での生活支援サービスに必要な部分にポイントを絞り、事業所各自で3日間の講義と1回の実習を行う。研修内容は、事前に市と事業所が打ち合わせする。研修はこれまで、1事業所が資格を持たない従業員のために実施した。

 福井県敦賀市(人口6.7万人、高齢化率27.0%)でも、市による研修修了者をA型の生活援助の提供者として認める。研修は、介護職員初任者研修を参考にした内容の2日間で計15時間程度の講義と、3時間の現場実習。現場実習は、訪問介護事業所の協力を得て、実際のサービス提供に同行する。

 なお敦賀市では通所A型で、利用者の体調異変などに対応するため、看護師または心肺蘇生法の方法を学ぶ「普通救命講習」の修了者を必置とする。「今後A型に特化した事業所が出てきた場合等に、看護師の確保に苦労することも想定され、救命講習修了者も可とした」(同市担当者)

 徳島県鳴門市(人口5.9万人、高齢化率32%)では、生活援助に特化した緩和型訪問サービス(A2型)にシルバー人材センターが参入する。サービス提供者の資格は不要だが、市が認める研修を修了することが必要。2日間(計15時間)行われる研修は、旧ヘルパー3級程度の内容をベースに、認知症や介護保険、コミュニケーション、緊急時の蘇生法などについて行う。

【短期集中C型】

セラピスト関与し訪問・通所一体提供 終了後の受け皿も整備

 青森市(人口29万人、高齢化率28%)では、訪問C型と通所C型を一体的に行う「元気わくわくサポート事業」を、現在5つの通所介護/リハビリ事業所で実施。訪問C型として、通所サービス提供の前に、利用者の自宅OT、PT、ST、看護職員などが訪問。屋内外の環境を確認したり、本人の生活動作や歩行状況を確認し、生活面での支障を把握し、改善に向けた目標を設定する。3カ月間にも訪問し、改善状況を確認する。

 C型実施後の受け皿ともなる通所A型の「元気アップサポート事業」は、現在15の通所介護/リハビリ事業所が提供中。体操や転倒予防運動、脳トレストレッチなどを行う。管理者と従業員(資格問わず)の配置だけでよい。「青森市では、要介護状態となる原因の第1位が生活不活発による『高齢衰弱』。また要介護認定を受けていなくてても、『虚弱』や運動機能低下、『物忘れ』のリスクが全国平均よりも高い。特に多くの積雪がある冬場に、自宅に閉じこもりがちになってしまうことが要因では。そのため、日頃から身体を動かす習慣を身に着けてもらうために、短期集中サービス後の受け皿づくりを、地域包括と連携して進めている」(同市担当者)

 徳島県鳴門市では、訪問C型は県の作業療法士会に、また通所C型は県OT会と県の理学療法士会に委託して実施する。通所では、公民館や集会所などで運動指導や脳トレ、介護/認知症予防の講義などを行う。訪問では、自宅内での運動や屋外での歩行訓練や外出訓練などを行う。C型終了後の受け皿の一つとして、一般介護予防事業で「いきいきサロン事業」を用意。現在市内に44カ所あり、住民主体のグループが、OT会やPT会の指導も受け運動や趣味活動などを通じて、日中の居場所づくりに取り組む。

 石川県能美市(人口4.9万人、高齢化率24.9%)は、訪問C型と通所C型をセットで実施。能美市では3カ月ではなく6カ月間、短期集中サービスを行う。通所は既存の通所介護/リハビリ事業所や温泉付きの健康増進施設などに、訪問は通所事業所や訪問リハ事業所、病院などにそれぞれ委託し、OTやPTが中心に担う。

 訪問は、入浴や調理などの自宅での動作指導、バスの乗り降り、杖などの福祉用具の調整をはじめ、浴室やトイレ、玄関や外回りなどの環境整備についての指導、また自宅での運動指導などを行う。

 通所Cの「健幸ライフ教室」は週1回約2時間、全24回実施。簡単なストレッチ体操や筋トレ、脳トレやウォーキングなど行う。6カ月間が終わると、7~8割の人は当初の目標を達成し、一般介護予防事業として各地域で実施される高齢者サロンなどへ移行している。

【訪問D型】

通院・買い物へ、地域住民が無償運送と合わせて乗降介助・付き添い

 移動支援の訪問D型を実施すると回答したのは、茨城県取手市、千葉県流山市、愛知県江南市、鹿児島県さつま町の4自治体。

 取手市(人口10.8万人、高齢化率32.3%)では、7月から通所B型として、社会福祉法人の空きスペースを活用し、音楽体操教室を午前中に実施。歩いて教室まで来られない人もいるため、その時間帯に送迎業務がない社福法人と通所介護事業所に、参加者の送迎を訪問D型の移動支援として担ってもらっている。また、福祉有償運送を担うNPO法人に、チェックリスト対象者を含め、主に通院送迎などを担ってもらっている。

 流山市(人口18.2万人、高齢化率24.0%)では、自治会から独立したグループ(1団体)が、訪問のB型とD型を一体的に提供している。主婦や元気シニアなどが担い手で、自家用車を使い地域の高齢者を病院やスーパーなどまで無償で送る。行きと帰りの乗降支援がD型で、病院やスーパーなどでの付き添いがB型にあたる。

 さつま町(人口2.1万人、高齢化率38%)では、昨年10月から社福法人へ補助金を出し、同法人が運営する要介護1以上向けの介護タクシーの空きを活用。通院や買い物、金融機関などへの外出が対象で、料金は片道510円(30分以内)。利用者は現在50人。「町内にバス路線はあるが本数が少なく、また自宅からバス停までが遠かったり、低床バスがないため乗り降りが難しいなどの事情がある」(同町担当者)

【インセンティブに対する考え方】

 「自立支援をデータで評価していくことで、意識の変化につながる」
 「データだけでは評価できないことがある点を考慮してほしい」

 国は、自治体が自立支援・重度化防止の課題分析と対応を行い、その実績を要介護状態の維持・改善の度合いなど適切な指標で評価した結果、その達成状況によって財政的インセンティブを与えるという考えを示している。これについては、各自治体から様々な意見が集まった。

 比較的前向きな意見では、以下のような意見が寄せられた。

 「介護保険の本来の目的である自立支援をデータで評価していくことで、意識の変化につながると考える。事業所の指定更新時に、機能向上型デイサービスの指定を行い、インセンティブ付与について検討していく必要があると思う」(栃木県足利市)

 「当市では、一般介護予防事業の地域介護予防活動支援事業を活用し、2種類のインセンティブを予定している。1つは、市独自に養成を行った「介護予防リーダー」が、通いの場等で機能訓練に資する運動指導などを行った場合に、評価する。2つ目は、訪問Bの活動を行った者に対して、一定のポイントを付与する。介護予防と生活支援の両面で、地域住民の幅広い参加を促していきたい」(岐阜県海津市)

 「これまで地域支援事業交付金を活用し、介護予防事業に取り組んでおり、インセンティブ評価の内容(介護予防により効果のある内容)と合致していない部分があれば、事業内容の一部見直し等を検討したい」(北海道壮瞥町)

 比較的慎重な意見では、以下のような意見が寄せられた。

 「数値化することにより、成果や効果が比較しやすくなる点には有効な評価の1つだと思うが、農閑期を利用して地域活動を深めている地域などもあり、総合事業のような年間を通じて実施する事業とは、また違った地域ならではのやり方もあり、住民のやる気と評価が合致しにくいものもあると思う。これをこわさないように深化・強化したい」(岩手県軽米町)

 「高齢化が進む町では、多様な人材の確保が難しい。介護職員の高齢化もみられており、退職後も再雇用され働き続けている。現在のサービスも継続できるのか不安を感じている。データだけでは評価できないことがある点を考慮してほしい」(福島県西会津町)

 「財政的インセンティブは必要な取り組みとして理解できる。しかし、適切な指標による実績評価として例示されている要介護状態の維持・改善度合いは、比較的軽度な人を想定していると思われ、認知症の人にはなじまないと考えられる。また自治体間で、人的又は質的な要因や地理的な要件が異なっていることから、一律な評価方法や取り組みに対してインセンティブをつけるのは非常に難しい面があるのではないか」(群馬県みなかみ町)

 「自治体の取り組み状況による一定の評価はあってもいいと思うが、その評価結果によるペナルティがあるがゆえに、『右ならえ』のサービス構築となってしまっては意味がない。地域特性をふまえた支援・サービス体系の構築と、あくまでも自助・互助を基本としていることを忘れずに、市民の求めるものを創っていきたい」(福島県伊達市)
 

「介護保険・行政」カテゴリーの最新記事

シルバー産業新聞購読のご案内

発展する「シニアマーケット」の動向など、確かな業界情報はシルバー産業新聞から。

1年間(12回)
7,700円(送料・税込)
2年間(24回)
14,214円(送料・税込)
3年間(36回)
19,545円(送料・税込)

購読、書籍のお申込みはコチラ

  • SSL グローバルサインのサイトシール