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介護保険・行政東京都北区 認知症サポート医の訪問2017年1月17日07時00分

包括に配置、適切なサービスへ

小宮山恵美課長(右)と阿部亘平主査.jpg 東京都北区は2016年1月時点の高齢化率が25.5%と、東京23区で最も高い(23区平均21.6%)。11年から在宅療養支援の構築に取組み、15年度より介護保険制度上に位置づけられた「在宅医療・介護連携推進事業」の主要8項目は初年度に全て実施。認知症の「サポート医」や退院相談窓口の設置など、住み慣れた地域での在宅療養生活を支援する。

 取組みのきっかけは、11年に実施した全高齢者の実態把握調査。介護が必要となった場合の暮らし方として45%が「自宅」を選び、また生活上の不安では31%が「病気になった時の在宅生活」と回答、在宅療養支援体制のニーズが顕在化した。

 同年に専門研究会を設置した同区は、「介護と医療の連携による地域包括ケアの推進事業」をテーマの一つとし、課題を整理。特に①独居・老々世帯で認知症など、医療・介護サービスにつながらない高齢者の緊急時の対応②医療処置が必要な独居高齢者の退院にあたり、地域包括支援センターが介護・医療両面から在宅療養生活を調整する機能――などが挙がった。

 翌12年、在宅医療・介護連携の課題抽出と目標設定を行うための「在宅介護医療連携推進会議」を設置。在宅療養支援基盤の構築に向け▽他職種との顔の見える連携作り▽在宅療養を進める人材育成▽多職種との情報共有のしくみづくり▽区民への啓発活動――を方向性とした。15年度より法制化された「在宅医療・介護連携推進事業」の基盤となる。

 あわせて、行政窓口として同区健康福祉部に介護医療連携推進担当課を設置。「行政の内部も横串を刺さなければいけない事業。窓口を明確化できたのは大きい」と同課小宮山恵美課長は述べる。

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認知症独居等へ医師・包括職員が同行訪問

 また12年、課題①への対応として「高齢者あんしんセンター(地域包括支援センターの愛称)サポート医」を配置。地域包括17カ所(当時15カ所)を5圏域に分け、1圏域ごとに同区医師会から推薦を受けた認知症サポート医、かつ訪問診療・往診をしている医師が担当する。

 内容は、セルフネグレクトや、認知症状が進行し医療を拒否する人などの自宅へ地域包括職員と同行訪問し、認知症状や身体状況を踏まえた生活全般を把握、必要なサービスにつなげる。「特に、申請が必要な介護保険サービスは手続き上、利用へのハードルが高い。医師が訪問することで、本人の受入れ方もよくなっている」と同課長は説明する。昨年度は29件の訪問・受診相談を実施。うち22件で認知症の兆候がみられた。

他区病院から多い退院支援相談

 同区が在宅医療・介護連携事業を進める上で特に工夫したのが、区医師会との積極的な関わりだという。医師会内の各種委員会へオブザーバーとして出席すると共に連携事業の必要性を伝えた。14年11月には「在宅療養支援の連携事業に関する包括協定」を区医師会と締結。これにより、①在宅療養相談窓口の設置②在宅療養協力支援病床確保事業――を連携モデルとして翌12月から開始、15年4月から本格実施となった。

 在宅療養相談窓口は、病院からの円滑な在宅移行に向け、医療・介護従事者から相談を受けた在宅療養支援員が在宅医の紹介や情報提供を行うしくみ。区医師会の訪問看護ステーション内に設け、訪問看護の認定看護師が支援員を担う。

 同課長は「北区は一般病床200床以上をもつ病院が2カ所のみ。大学病院などは隣接の板橋区や文京区に固まっているため、他区病院から退院し区内の自宅へ戻るケースが多い」と説明。「病院側が患者の住所を見て地域包括へ連絡するといった方法はやりづらい。まずは在宅療養相談窓口で受け、介護保険利用なら地域包括へつなぎ、医療が必要な場合はその場で調整も行える」と設置のねらいを話す。

 実際、昨年度の相談件数98件中、病院からは25件でその7割以上が他区から。行政では把握しきれない治療・薬の最新情報をタイムリーに提供できる点も、医療従事者が担当するメリットだと同課長は強調する。

地域で「ときどき入院」

 また、在宅療養協力支援病床確保事業は、救急搬送まではいかないが、病状の悪化等でちょっとした入院が必要な患者を、できるだけ区内病院で受入れるための施策。再び在宅へ戻る前提で入院期間を基本7日間としている点が特徴だ。「入院生活がずっと続くかもしれないという、患者や家族の不安感を取り除くことができる。病院側も退院のめどが立ち、受入れやすい」と同課長は双方のメリットを語る。

 利用の流れは、まずかかりつけ医が入院の必要性を判断し協力支援病院へ診療情報提供書を送付。担当ケアマネジャーからは入院前在宅生活状況提供書を送る。協力支援病院は空床があれば受入れ、治療・検査を実施。再び自宅へ戻る際には、在宅療養生活継続のための退院前カンファレンスを必ず行う。

 現在、協力支援病院は病院14カ所、有床診療所2カ所の計16カ所。15年度は33件の利用があり、平均入院日数こそ15.4日だが、30件が退院に至った。

 同区ではこのほか、テーマ別の検討部会などの取組みも実施。14年度に設置した「摂食えん下機能支援推進部会」は、医科・歯科医師の合同研修や、言語聴覚士・歯科衛生士の合同リハビリ研修会などを行う。知識・技術の習得だけでなく、専門職どうし顔の見える関係ができ、各現場では個別に連携も進んでいるそうだ。

 来年度の在宅医療・介護連携事業について同課長は「環境整備はずいぶん進んだと考えている。次は、在宅医療や看取りに関して自己選択ができるよう、区民への情報提供・啓発に努めていきたい」と意気込む。

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