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介護保険・行政【検証12年報酬改正】老健施設2012年10月24日18時00分

在宅強化型厳しく収入1・2%減

原価償却費で不足分を補填

 4月の報酬改定で老健施設は基本報酬を引き下げられた。 そのことが大きく影響し、協会調査では前年度に比べマイナス1・2%の減収となっている。本体報酬の引き下げは給付費分科会などの場で、現在の老健の経営状況を表す経営データをきちんと示し、その厳しさを十分に訴えられなかったことが最大の要因と考えている。介護報酬は開設主体により、課税対象が大きく異なる。そうした背景を無視して、収支差率だけで介護保険事業所の利益を判断するのは根本的に無理がある。

 改定前に厚労省が示した収支差率は老健が9・9%、特養9・3%。しかし老健の母体は圧倒的に医療法人が多く、特養は社会福祉法人だ。9・9%の収支差率は年間約4100万円の利益だが、税引き前であり、税引き後では2350万円にすぎない。しかし特養の場合はほとんどが非課税だ。

 さらに協会の調査では借入金残高が10年度で1施設あたり平均3億6000万円。その元金返済が年間5000万円前後。2300万円の最終利益では毎年2000万円ほど不足し、多くの老健は将来の補修、改修などに回すべき減価償却費の取り崩しでカバーしている厳しい経営状況。それがさらにマイナス1・2%という現状では借り入れの危険すら感じる。

職員の処遇改善に大きな危機感

 地域包括ケアには適切な医療、リハビリが欠かせず、老健はその中核となるべき存在だが、地域包括ケアにおける老健の位置づけは曖昧なままだ。確かに在宅復帰とその支援は老健の大きな機能の一つだが、入所、通所で在宅のリハビリも担い、さらに地域医療をも担う施設でもある。

 老健は多様な利用者に合わせた対応プログラムが準備できる。看取りが必要になればそれも行う。ただその人の生活全てを老健がみることは不可能だ。利用者1人を地域全体で世話するのが地域包括ケアシステムであり、システムの中における老健の役割をさらに明確化させる必要がある。

 療養型老健に見られるようにこれまでも施設類型が多かったのに、今度の改定ではさらに「在宅強化型」が加わり、制度がますます複雑化した。しかも新設の在宅強化型は取得要件が厳しく、全ての老健の3、4%しか算定できない。全体を下げて、その分を在宅強化型にまわしたに過ぎない。老健の多くが懸命に在宅復帰、あるいは施設入所のための調整をリハビリや医療を通じて行っており、本来高齢者が長期に滞在する特養や、有料ホームなどと同列に施設という概念では括れない。そのために老健独自の役割・機能を反映させ、利用者個々人の状況に応じた「R4」という新しいケアマネジメント方式も開発してきた。介護保険ではそうした根源的な老健の機能が評価されず、そのために低い報酬で不安定な経営を強いられているのだ。

 介護職員の処遇改善交付金も全老健は交付金の継続を主張し、その推進のために166万人もの署名を集めた。加算方式では保険財源の逼迫に拍車をかけるだけだ。しかも3年後の見直しという条件は、加算存続のリスクをひしひしと感じさせるものである。

医療の充実を引き続き要望する

 一方、今回の改定でプラス材料もあった。まず在宅復帰の関係では死亡退所がはずされ、在宅復帰率が高まったことは大きい。また入所前後訪問指導加算の新設も多くの老健にとってプラス材料だ。入所前後の訪問はこれまで普通に行っている。そもそも在宅復帰させる場合自宅の環境が分からなければ指示書すら書けない。これまでの労力がようやく評価されたといえよう。

 また所定疾患施設療養費が新設されたことも一歩前進だが、不満が解消されたわけではない。例えば要介護3の利用者が肺炎になると動けなくなり要介護5のケアが必要だ。しかし介護度の変化は考慮されず、算定できるのは治療に要する費用だけ。しかも算定できる疾患は発症の頻度が考慮されていない。脱水症などがその典型だ。いずれにせよ、医療面における役割はまだ十分に評価されておらず、これからも改善を訴えていく。

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  • 全国老人保健施設協会
    内藤圭之副会長

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