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福祉用具特別座談会「医療介護連携と福祉用具」(後編)2018年12月 6日07時00分

福祉用具事業者に求められる「質の見える化」

 鶴巻温泉病院・鈴木龍太院長、日本介護支援専門員協会・小原秀和副会長、ヤマシタコーポレーション・山下和洋社長による本紙特別座談会の後編。テーマは「地域包括ケアを実現するための医療介護連携と福祉用具」。前号では退院時支援のポイントとして、①慢性期病院などでの急性期からの早期受け入れ②ケアマネジャーの退院前カンファレンスの積極参加③病院・施設、在宅でのシームレスな福祉用具提供――などが重要とされた。後半は、福祉用具サービス事業者に今求められることや生活を支えるリハビリテーションのあり方などが話題となった。

多職種で支える「食事」と「排泄」

1106suzuki.jpg 鈴木 少し前まで、慢性期でのリハビリは、歩行訓練にウエイトを置くのが一般的でした。しかし、高齢化が進み、今は嚥下や排泄機能のリハビリに重点が移りつつあります。もちろん歩けるようになるにこしたことはありませんが、高齢の方が無理をしてまで歩かなくても、車いすを使って好きなところに行けるほうがよい。それより、ご飯を美味しく食べられて、トイレがコントロールできるほうが、日常生活では大事ではないかという認識に変わってきています。

 嚥下や排泄は、リハビリ専門職だけでなく、多職種で取り組むべきものと私は考えています。最近は介護報酬でも、嚥下や排泄に対し、多職種で支援する取り組みが評価されるようになっていますよね。当院でもリハビリは「エンジョイメント・オブ・ライフ」を目的に実施しています。そうした意味で車いすの自動運転など、これからの福祉用具の進歩を楽しみにしています。

1106obara.jpg 小原 食事と排泄は本当に大事ですね。一度、勤務先で通所リハ利用者の調査をしたことがありますが、5割が「栄養不足」という結果でした。栄養が足りていなければ、いくらリハビリをしても効果をあげるのが難しくなります。

 繰り返しになりますが、ケアプランの目標も、「歩けるようになる」ではいけません。歩く能力を使って、何をするのか、生活がどう変わるのかを目標にチームで支援していくことを進めないといけない。

「福祉用具サービスの質」見える化に注力

 山下 できなくなったことが再びできるようになったり、したいことができるようになったりと、皆さんリハビリには前向きなイメージを持っていると思います。今後、日本は多死社会を迎えますが、そうした時代であっても、積極的にリハビリに取り組み、自立を目指す方々の姿があればいいなと思っています。抽象的かもしれませんが、閉塞感の中での大きな光になり得るのがリハビリテーションではないでしょうか。高齢になっても誰もが自立支援を目指せるよう、環境整備に努めていきたいです。

1106yama.jpg 一方で、今回の改正で福祉用具貸与でもいくつか見直された部分があります。今年4月にスタートしたのが、一つの品目について、機能や価格帯の異なる複数の製品を利用者へ提示することが義務付けられました。

 加えて、10月より施行されたのが全国平均貸与価格の開示と上限制の導入です。7月に、月平均100件以上貸与されている、およそ2,800製品の全国平均貸与価格と上限価格が国から発表されました。貸与製品の全国平均貸与価格を示すことが義務付けられるのと共に、上限価格を超えて貸与する場合は給付対象外となります。

 上限価格は全国平均価格に1標準偏差を加えて算出されますが、社会保障費の効率化を考えた時に、健全な価格競争が進むことは当然重要です。ただ、概ね1年の頻度で更新される上限価格によって、過度な価格競争が起こり、利用者の方の自立支援にとって大切なサービスの質低下を招くことだけは避けなければならないと考えています。そのためにも、我々はサービスの質の重要性をこれからも強く訴え続けていきます。

 鈴木 過度な価格競争の結果として、最新の福祉用具が借りにくくなったり、先ほど伺ったような事業者独自のサービスが受けられなくなるのは問題ですね。

 小原 納品だけして、使い方の説明も適当だと、結局使えなかったりしますよね。事業者の質が下がって不利益を被るのは利用者です。プランの最終責任を負うケアマネジャーも、価格だけに目を向けることがないよう注意しなければなりません。

 山下 そのためにも、やはり我々、福祉用具事業者が、専門性に基づくサービスの質を「見える化」していく必要があります。

 当社は現在、年間で延べ3万時間超の職能研修に取り組んでいます。介護保険当初からこだわってきた質や専門性が評価されなくなってしまうのは、とてもやり切れません。

 事業者団体ではすでに福祉用具のエビデンス調査の取組みを始めています。「ご利用者のために」という目的を見失わず、福祉用具の有用性や専門性を訴えていきます。

 鈴木 若いお二人が正しくまっすぐと歩まれていて、とても嬉しい気持ちになりました。私のモットーは、「変化を進化に 進化を笑顔に」です。変化することをいとわず進化を続け、多くの方の笑顔がみられるように、これからも頑張りましょう。本日はありがとうございました。

 小原・山下 ありがとうございました。

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 今年8月に日本介護医療院協会の会長に就任した鈴木龍太氏。介護医療院の今後と役割について聞いた。

 今年4月に新設された介護医療院は、6月時点で1,400床。正確な数字ではありませんが、9月現在でも3,000床ほどと認識しています。各自治体との調整段階のものが多く、今はそれほど増えていません。来年以降から増え始め、数年の間には10万床ほどの規模になるとみています。療養病床からの転換については、設備や人員への大きな投資は必要なく、都道府県の総量規制の対象からも外れています。そのほか、医療機関の在宅復帰率にカウントができたり、時限付きですが「移行定着支援加算」が設けられています。新設は別として、かなり転換を促す仕組みが整っているといえるでしょう。廃止が決まっている介護療養病床5.9万床に加え、医療療養病床からも3万床ほどはおそらく介護医療院に転換するのではないでしょうか。過去に介護療養病床から転換した強化型老健からの転換組もいるでしょう。

 国は生活施設としての機能が、介護療養病床との違いと強調しており、プライバシーの確保、住まいとしての生活環境を整えていかなければなりません。畳に障子で、高齢者が馴染みやすい環境の介護医療院も実際にあります。また当協会でも、▽尊厳を保障する施設▽自立支援施設▽入所・在宅療養施設▽生活施設▽地域貢献施設――を介護医療院の理念に掲げています。当院も、医療療養病床60床を介護医療院に転換する計画ですが、現在の入所患者の9割超が要介護度4か5。平均要介護度も4.45です。こうした重度の方を引き続き支えていくのはもちろん、リハビリテーションで自立・参加を目指すことができる方の入所も勧めて、幅広く機能を発揮できる施設を目指します。

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