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福祉用具【特別座談会】医療連携と福祉用具(前編)2018年10月25日07時10分

「地域包括ケアを実現するための医療介護連携と福祉用具」(前編)

  今年4月の医療・介護報酬の同時改定を経て、2025年、さらにその先を見据えた地域包括ケアシステムの構築が進められている。「地域包括ケアを実現するための医療介護連携と福祉用具」をテーマに、日本介護医療院協会会長に就任した鶴巻温泉病院・鈴木龍太院長、日本介護支援専門員協会・小原秀和副会長、ヤマシタコーポレーション・山下和洋社長にお集まりいただき、地域包括ケア実現に向けた取り組みについて、それぞれの立場から語ってもらった。今月と来月の2回掲載。

環境が変わってもシームレスな支援を

1006zadan_suzuki.jpg 鈴木 鶴巻温泉病院の鈴木です。当院は、回復期・慢性期を中心とした全591床の多機能病院です。また今年8月より、日本介護医療院協会の会長も務めています。当院も、来年初めに介護医療院の開設を予定しています。

 小原 日本介護支援専門員協会の小原です。社会保障審議会介護給付費分科会の委員として、2018年度介護報酬改定の審議に加わり、介護支援専門員(以下、ケアマネジャー)の立場から意見や主張を申し上げてきました。普段は、秋田県の介護老人保健施設で統括本部長として勤務しています。

 山下 ヤマシタコーポレーションの山下です。当社は福祉用具レンタルとリネンサプライを柱に、事業を展開しています。福祉用具レンタル事業では、在宅を中心にサービスを提供しております。そのほか、福祉用具の関連団体では、日本福祉用具供給協会、全国福祉用具専門相談員協会の理事として、それぞれ運営に関わっています。

 鈴木 本日のテーマの中で、まず地域包括ケアや医療介護連携についてですが、当院では今年4月に地域包括ケア病棟を新設しました。当院は急性期のベッドをもっていないため、在宅や介護施設などで暮らしている方が、発熱や誤嚥性肺炎などで急変した場合に受け入れる「サブアキュート」の機能が中心です。開設間もないですが、想像以上に緊急入院が多く、驚いているところです。「普段は在宅で、困ったらすぐに入院できる」ことへのニーズの高さを実感しました。当院以外の急性期病院を退院してこられる患者には、リハビリを実施し、在宅復帰を目指す「ポストアキュート」の役割も果たしています。

 そのほか力を入れているのが訪問です。訪問診療以外に、訪問リハが月350件。歯科医師、薬剤師、管理栄養士の訪問もそれぞれ件数が伸びており、今後も右肩上がりで推移していくと見込んでいます。地域包括ケア病棟や訪問サービスの取り組みを通じて、地域包括ケアシステムの中でシームレスな医療介護連携を推進していきたいですね。

1006zadan_obara.jpg 小原 利用者のニーズを明確にし、地域資源を活用して、解決に導くのが我々ケアマネジャーの役割です。鶴巻温泉病院のような取り組みを生かして、地域でその人らしい暮らしを支えていくことが重要で、ケアマネジャーはそのコーディネート役を果たしていかなければなりません。今回の介護報酬改定の大きな柱の一つが「地域包括ケアの推進」。その中には、「ケアマネジメントの質の向上と公正中立性の確保」が位置づけられています。これは、求められているコーディネーターの役割をさらに果たしていくためにきちんと取り組まなければならないことです。

 それから、ケアマネジャーが今以上に強く意識しなければならないのが「自立支援」。介護保険法の第一条に「有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう」と明記されている通り、自立支援は介護保険制度の一丁目一番地と私は考えます。「やってあげる」ではなく、「できるようになる」ためのケアプランをまず検討する。できない部分を、福祉用具などで補い、それでも難しい場合に人手によるサービスが入る。支援を検討するうえでは、この順序がとても大切だと考えます。

1006zadan_yama.jpg 山下 小原さんがおっしゃる通り、我々は福祉用具サービスの提供を通じて、自立支援をサポートしていきたいです。私は地域包括ケアシステムにおける、福祉用具サービス事業者の役割は、まずサービスを受ける基盤を整えることだと思っています。福祉用具や住宅改修を利用して、できることを広げた状態と、そうでない状態とでは、人的サービスの必要量や有効性が違ってくるでしょう。介護をはじめ、人材不足が深刻さを極める中でも、大事な考え方ではないでしょうか。

 住環境が整えば、限りある医療や介護サービスの生産性も引き上げることができるはずです。もちろんモノだけが、ぽつんと置かれていても意味がありません。有効に使ってもらえるための支援も福祉用具事業者の役割です。

 こうした基盤整備の重要性について、現場の福祉用具専門相談員が更なる自覚と自負を持ちながら、周囲の関係者に対して力強く発信し続けなければなりません。また、この重要性をいかに「見える化」するかも課題であり、まさに業界一丸となって取り組んでいるところです。

連携がものをいう退院時支援

 鈴木 私たちの医療介護連携が特に必要となるタイミングの一つに「退院時」がありますよね。当院では回復期だけでなく、全ての病棟でリハビリテーションを提供しています。リハビリ専門職は現在、理学療法士が99人、作業療法士が60人、言語聴覚士が27人います。また基準や報酬とは紐づいていませんが、音楽療法士などのレクリエーションスタッフも10人配置しています。ただ回復期リハビリテーション病棟が206床あり、地域包括、緩和、神経難病等、全ての機能でリハビリテーションを実施していますので、充足していないのが現状です。

 回復期で注力しているのが、脳卒中の患者を発症から7~9日で受け入れる取り組みです。データをみても、早期に受け入れ、リハビリを始めた方が状態は確実によくなります。しかし、急性期のドクターも、そうしたことをあまり知りません。何より患者本人や家族の理解を得るのが難しいのです。急性期は大病院が多いので、一般の人からみたら大きな病院の方が、安心感があるのでしょうね。そこで「回復期に移りましょう」といっても、なかなか納得してもらえない。今は、地道に啓蒙活動に取り組んでいるところです。

 急性期から当院の回復期に移ってくる患者のうち、発症後7~9日以内が3分の1くらい。その方々は、FIM(機能的自立度評価表)の点数がとてもよくなります。急性期に2カ月いたケースと比べると、ひと月半は早く自宅へ戻ることができます。もっと全体で早期リハビリに取り組んでいかなければなりません。医療費も抑えられます。

 当院では緩和ケアの病棟でも専門職を配置して、リハビリを実施しています。自宅に戻れるときは自宅で、状態が悪くなったらまた受け入れる。自宅と病院をいったりきたりする「自宅に戻れる緩和ケア」に取り組んでいます。

 小原 そうした取り組みを行う病院があれば、地域の方は安心して暮らせるでしょうね。今回の介護報酬改定では、居宅介護支援の「退院・退所加算」が見直され、ケアマネジャーが医療機関等のカンファレンスに参加した場合の評価が手厚くなりました。この見直しをきっかけに、医師をはじめ、病院の各専門職の方との連携を深めていきたいと思います。

 一方で、医療機関からは「退院が決まったので、来てください」と急にケアマネジャーが呼ばれるケースが実態として少なくありません。退院して在宅に戻るときは、住環境の整備だったり、もちろん各サービスもどこでもよいというわけにはいきませんので、在宅の受け入れ体制を整える準備期間が必要になります。今回の同時改定では、診療報酬でも退院時共同指導料の要件も緩和されましたが、やはり退院前の連携を強めることが、在宅復帰がよりスムーズにできるポイントです。 また我々ケアマネジャーは、在宅に戻った後の生活をどう支えていくかを考えなければなりません。入院中にリハビリで引き上げた機能を、利用者の暮らしにしっかりと活かしていく視点。せっかく歩けるようになったのに、ずっと家にいては意味がないですよね。例えば、孫の部活動の応援に行くとか、改善した機能を、どうQOLや社会参加に繋げていくかを意識したプランニングが重要です。

 それから、訪問介護では「自立生活支援のための見守り的援助」について、身体介護としての位置づけがより明確になりました。ヘルパーが代行すると生活援助ですが、自立支援のため、手助けしながら一緒に行う掃除は身体介護になります。ここに訪問リハと連携したり、福祉用具の活用などが加わると、より一層充実したものになるのではと考えています。

 山下 鈴木先生からも、病院や自宅をシームレスに行ったり、来たりできるというお話がありました。そうした取り組みが広がりつつある中で、我々は利用する福祉用具と住環境の適応にも目を配っています。病院や施設では問題なく利用できた福祉用具が、在宅の環境では使えないかもしれません。その逆も同様にあり得ます。

 以前、入院中に病院の古い歩行器を使ってリハビリをされていた方がいて、「この歩行器が使い慣れているから、自宅でも同じものをレンタルしたい」とおっしゃられたのですが、すでに廃番製品でした。重量もかなりあったので、病院では使えても、段差が多い自宅では持ち上げて乗り越えるのは非常に大変です。しかし、こうした事例は、決してレアケースではありません。病院や施設が最新の福祉用具などを自前で揃えるのは容易ではないでしょう。

 こうした課題を目の当たりにし、当社が始めた取り組みが「退院前支援サービス」です。介護保険を利用する予定の方に限りますが、入院中に無料で、当社から最大2週間貸し出すサービスです。利用者は、病院の中でレンタル品を使ってリハビリや試用ができ、在宅に戻った後は使い慣れた同じ機種を介護保険でレンタルできます。病院側の費用負担もありません。数ある機種の中から状態や在宅の環境に合わせて選べるので、リハビリテーションの効果を引き上げる狙いもあります。退院後も同じ福祉用具を使うとなれば、病院のリハビリ専門職の方も在宅をイメージしやすく、アドバイスや留意点の説明も、より具体性が増すのではないでしょうか。

 小原さんがおっしゃった通り、病院もケアマネジャーも、そして我々のような在宅サービス事業者も、その方の在宅復帰後の生活や目標を共有し、同じ方角に向かった連携を図る必要があります。

 小原 「退院前支援サービス」はすごくよい取り組みですね。やはり、使い慣れた道具が変わるのは、使う本人にとって負担です。病院、施設、自宅をシームレスに支える取り組みだと感じました。私が勤務する老健でも、退所前に担当のケアマネジャーとさまざまな連携をとりますが、施設と在宅それぞれで利用する福祉用具も大事なポイントの一つなのだと気づきました。

(次号に続く)

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