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ケア用品【インタビュー】認知症者の生活支える機器2015年10月30日08時00分

「センサー付き服薬カレンダー」など最先端機器の開発進む

 厚生労働省によると2012年時点で認知症高齢者の数はすでに462万人に上り、25年にはおよそ700万人に達する見込みだという。認知症の予備軍といわれるMCI(軽度認知機能障害)の高齢者を含めると、さらにその数は膨れ上がり、認知症者の生活支援は喫緊の課題となっている。機器による認知症者の自立支援手法の開発に取り組む国立障害者リハビリテーションセンター研究所福祉機器開発部長の井上剛伸氏に認知症支援機器の現状と今後について聞いた。

 現在、認知症者の支援機器で特に開発や普及が進んでいるのが▽服薬支援▽コミュニケーション▽見守り――の3分野だ。

00000022.jpg 服薬支援では以前、私が代表を務めた研究の中で認知障害を合併した高血圧患者にアラーム付き薬入れを使った検証を行い、服薬の自立に有用であるという結果が得られた。アラームが認知症者の認知機能を補い、服薬を促すことで対象者の血圧には改善がみられ、また家族介護者の負担も導入前と比べて軽減された。研究で用いたアラーム付き薬入れと同様、あらかじめ設定した時刻に音声や光で利用者に服薬を促す機器はすでにいくつか製品化がされている。

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 最近のトピックスでいえば、昨年度に実施した厚生労働省の委託事業「統合失調症患者の服薬セルフモニタリングシステムの開発」で、ポケットにセンサーを埋め込み、薬剤が取り出されたかを検知する服薬カレンダーを試作した。通信機能を搭載し、統合失調症患者がスマートフォンで自分の服薬状況と体調変化を確認できる。このセンサー付き服薬カレンダーはまだ試作段階だが、今後開発が進めば、認知症者向けに応用できる可能性も十分ある。認知症者を支援する多職種へ服薬状況を発信、共有することで、迅速で適切な対応や、多職種間のスムーズな連携に繋げることが期待できる。

 

 コミュニケーションの分野では、アザラシ型ロボットのパロなど日本で開発されているコミュニケーションロボットが、昨年11月に行われた認知症サミットの日本後継イベントで展示され、私もスピーカーとして紹介を行ったが、海外の参加者からの高い関心が伺えた。コミュニケーションロボットを大きく分類すると、癒しや安らぎといったセラピー効果が期待できるものと、会話を通して日付や時間、スケジュールなど生活に必要な情報を伝えるものがある。

 

 前者はセラピー効果のエビデンスが集まり始めていて、向精神薬の量を減らすことができたといった報告もされている。後者はまさしく認知症者の生活支援を担う機器だ。ゴミ出しや服薬の日時を利用者に音声で伝え、生活がスムーズに送れるようになった事例もある。

 現在、認知症の徘徊事故・身元不明などが社会問題となっており、見守りも認知症支援のキーワードの一つに挙げられる。開発支援など行政の後押しもあり、さまざまな見守り機器が製品化されているところだ。今回の介護報酬改定でも、外部通信機能に接続できる認知症徘徊感知機器が通信費を自己負担とすることで対象に加わり、今後はさらに普及が進んでいくものとみている。

認知症者と機器とのマッチングが今後の課題

 このように技術面では認知症支援機器はかなり成熟してきた。今後は機器と利用者とのマッチングが課題となる。認知症者向けに限らず、支援機器の適切な導入時期や機器の選定・組み合わせの判断は人が担う。また些細なことのようだが、機器の設置場所なども実用面では非常に重要な要素で、効果的に機器が活用されるようフォローされなければならない。

 軽度認知症や認知症の予備軍とされるMCIは、制度や行政との関わる手前の人が多い。そうなると適切な機器と結び付ける役割を誰が果たすのかが課題となる。個人的には介護保険の市町村事業として設置が制度化された「認知症初期集中支援チーム」に期待を寄せている。認知症の初期段階から適切な機器を導入することで、自立した暮らしの継続に繋がる。

 ただ軽度であればあるほど、機器の導入に抵抗感を示す人も少なくない。当研究所では現在、「超ユニバーサル化福祉機器」の研究・開発に取り組んでいる。まだ着手したばかりだが、認知症になってから導入するのではなく、例えば家電製品など発症前から日常生活に馴染んでいる機器が、利用者の認知症の進行とともにサポートの手法を変化させていくイメージだ。「超ユニバーサル化福祉機器」も含め、認知症者の新たな生活を提案できるよう、研究開発を進めていく。(談) 

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プロフィール

 1963年東京都生まれ。89年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了。現・国立障害者リハビリテーションセンター研究所奉職。福祉機器研究に携わる。この間、トロント大学老化研究所への派遣や04~07年には東京大学大学院客員准教授などを務める。07年より現職

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