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ビジネス社福新会計 移行は1割強2013年1月29日14時17分

 昨年4月から社会福祉法人の会計基準が変わった。これまでサービスごとに異なっていた会計基準をすべて社会福祉法人会計基準に一元化して分かりやすく透明性のある会計をめざしている。社会的な役割が大きくなる一方で、事業拡大や内部留保などの課題を抱える社会福祉法人にとって、新会計基準への移行がどのような意味があるのか、TKC全国会社会福祉法人経営研究会代表幹事である川井義久氏に聞いた。川井氏は社会福祉法人理事長であるかたわら、税理士として社会福祉法人の経営指導に携わっている。

複数の会計ルールを一本化

――新会計基準はどういうものですか。

 これまで多くの社会福祉法人は2000年に導入された「社会福祉法人会計基準」にそって経理処理を行ってきた。しかし、サービスによっては、たとえば同じ特養でありながら「社会福祉法人会計基準」と「指定介護老人福祉施設等会計処理等取扱指導指針(指導指針)」が選択可能であったり、障害者就労支援事業については就労支援事業会計処理基準が、また社会福祉法人が行っている介護老人保健施設は「介護老人保健施設会計・経理準則」によるなど、複数の会計ルールが使われている。これらを一元化して、事務を簡素化し分かりやすくしたものが、新しい社会福祉法人会計基準(新会計基準)だ。12年度から適用されるが、移行期間が終わる15年度3月31日(14年度決算)以降は、すべての法人が新会計基準にしなければならない。

――新基準導入のメリットは。

 社会福祉法人新会計基準では、法人全体のほか、社会福祉事業・公益事業・収益事業の事業区分と事業所や施設などの拠点区分、それに特養や通所介護などのサービス区分が設けられている。こうした新会計基準によって、事務の簡素化が進み、法人全体の財務状況が明らかになって経営分析がしやすくなるというメリットがある。

法人経営全体を見渡せる

――実際に移行した事業所の評価は。

 私の税理士事務所の事例で、特養とともに、障がいや保育を運営する法人で、これまでは特養のことばかりが気にかかっていた経営者が、新基準になって法人全体の経営状況が分かりやすくなったことで、障がいや保育の経営も広く見ることができるようになったというケースもある。

――移行は進んでいますか。
 14年度決算までは従来の会計処理が認められているため、まだ新会計基準の移行は1割程度にとどまっている。TKC全国会が担う法人数は、全国2万弱ある社会福祉法人のうちで約3700法人。そのうち現在新会計基準に移行したのは、13・5%にあたる約500法人。前回00年に従前の社会福祉法人会計基準の導入時された時は、減価償却制度の導入などがあり、法人設立当初から再計算を行うなど、00年3月31日と翌4月1日の間では、経理上まったく遮断されたと言ってよいほどの別物で、社会福祉法人はどこもたいへん苦労したため、今回もその再来かと心配している法人も多いようだ。移行にあたって様々な作業があるのは確かだが、前回の時ほどの混乱はないだろう。

規模拡大と法人経営めざす流れ

――社会福祉法人改革の流れに沿ったものですか。
 そうだと思う。06年に発刊された「社会福祉法人経営の現状と課題」(全国社会福祉協議会刊)で示された社会福祉法人改革の方向性に基づいて流れている。そこでは、規制と助成から自立・自律と責任へ、施設管理から法人経営へ、という流れのなかで、社会福祉法人の規模の拡大や経営能力の向上などが掲げられた。

――規模の拡大は。

 措置時代は「一法人一施設」の指導があり、余剰発生を認めない措置費による運営に慣れさせられてきた社会福祉法人にとって、介護保険制度になり、規模の拡大を求められても急に舵を切り替えることはできないというのが正直なところ。しかも社会福祉法人には、施設に定員や職員の配置基準があるなど縛りが多く、自ずとその経営には限界がある。実際、事業規模を拡大しようとすると、経営計画を立て経営感覚をしっかり持ち、財務諸表をみて事業に当たらなければ、これからの社会福祉法人の経営者は務まらないだろう。

地域に対する役割大きい社福

――「施設の解体」や、住まいとケアの分離が叫ばれていますが。

 私は、施設の解体ということはありえないと思う。在宅重視とはいっても、地域に核としての施設がなければ在宅志向自体が成り立たないからだ。在宅サービスや訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅だけで地域の高齢者は支えきれるものではない。都会ではいざ知らず、地方では自宅があるのに元気なうちからの早めの住み替えというのも少ないだろう。また、社会福祉法人は営利企業と同様に法人税などを払うべきだというイコールフィッティング論があるが、どうだろうか。元々、社会福祉法人は憲法で禁止されている「公の支配」に属しない民間社会福祉事業に対する公金支出禁止規定を回避する目的で設立されたという経緯がある。ただ、介護保険事業だけを行っている社会福祉法人は将来課税ということもあり得るかも知れない。

――内部留保に対する批判については。

 社会福祉法人の内部留保金を合わせると2~3兆円になるという報道があるが、全国で約2万法人があり、1法人や1施設でみると、決して莫大な留保金とは言えない。法人も残った剰余金をそのままにしておくのではなく、建替えや大規模修繕などのための積立金にするなど透明性の高い決算にする必要があるだろう。

――今後の社会福祉法人のあり方をどうお考えですか。

 これからの社会福祉法人には、ある程度の事業規模をもち、地域の中で自分たちの活動や役割をしっかりとアピールしていくことが求められていると思う。地域の人から見て何をしているのか分からないような内向きの姿勢では社会的に認められなくなってくる。

――TKC全国会の活動について。

 TKC全国会は、TKCの会計システムを活用する税理士・公認会計士の組織で、そのなかで社会福祉法人経営研究会は社会福祉法人の経営支援に取り組む税理士・公認会計士が集まっている。TKC会計システムは、TKC会員が行う月次巡回監査(毎月、会計専門家が施設を訪問し、会計データの正確性を確認すること)を通し、その積み重ねで決算を行うことに特長がある。これからもTKC全国会社会福祉法人経営研究会はTKC会計システムと共に全国の社会福祉法人を支援していきたい。

  • TKC川井氏右向き.JPG
  • TKC全国会社会福祉法人経営研究会代表幹事

    川井義久氏

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