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ビジネス【トップインタビュー】メトス 個浴開発の取り組み15年2012年10月19日17時23分

 浴槽メーカーのメトス(東京都中央区、神山敏社長)は今年4月に寝浴にも対応できる浴槽「エリーゼ・ロス」を発売。福祉事業の立ち上げ時から個浴をコンセプトに、介護現場のニーズ調査と浴槽の開発に注力してきた神山社長に同社浴槽開発の変遷を聞いた。

日本の入浴文化と個浴のコラボレーション

 同社が長年手がけてきた温浴事業、暖炉事業に加え福祉事業を立ち上げたのは97年。海外の見本市でパーカー社(イギリス)の浴槽に出会ったのをきっかけに総代理店として事業をはじめた。

 「まず課題として浮き彫りになったのが入浴文化の違い」と神山社長。肩までつかって入浴すると心臓への水圧の負担が大きいため、海外では半身浴に合わせた浅い浴槽が主流だったという。

 そこで輸入介護浴槽のみだった福祉事業から日本の入浴スタイルに合わせた製品づくりをめざし99年から国内での開発に着手。当時はグループホームを中心にユニットケア推進への転換期にあたり、個浴を普及させる着火点にもなった。

 01年に国産浴槽の第1号「メトスセラ」をリリース。備え付けの入浴用いすは油圧モーターにより作動音を抑え、いすが浴槽に収まった時点でリクライニングが可能となり、肩までつかることができる。

 また同時にひのき浴槽「りん」も開発。内寸が幅55㎝×長さ90㎝と一見狭く感じるが、ターゲットは女性高齢者。当時の平均身長148㎝を考え、十分に入浴を楽しめるコンパクトサイズにした。

待望のユニバーサル型浴槽

 洗体から入浴への移乗は濡れた体を支えるので転倒リスクが大きい。この課題を解決し機能性を高めたのが06年発売の「個粋(こいき)」。

 シャワーキャリーを備え付けのリフトに接続し座ったまま入浴できるタイプ。移乗回数が少なく介助負担とリスクを軽減するだけでなく、利用者のさまざまなADLに対して1台の浴槽で介助が行える仕様にした。

 リフトは分離式でひのき浴槽への取り付けも可能。使用しない時は浴槽横のボックスへ収納すれば目立たず、一般浴としても利用できる。

 2年後の08年にはひざが曲げられない利用者でも安心して使えるロングタイプの「個粋プラス」を発売。あわせてユニットバスへの導入を強化した。

 同氏は「浴槽の設置工事は手間も時間もかかる。一般家庭で導入が進むユニットバスは福祉施設でも必ず普及すると思った」と振り返る。新規開設の介護・医療施設や設計事務所をターゲットにいち早く販促展開をはかっていった。「設計事務所へのアプローチは既存事業のパイプを活かせたのが大きかった」(同社長)。

寝たきり高齢者もケアできる新型浴槽

 個粋のポイントとして同氏は①ひとつの浴槽で身体機能に合わせた介助が可能②普通の浴槽と変わらないシンプルなデザイン③女性が一人でも簡単スムーズに介護できる――の3点を挙げる。今年4月に新発売した「エリーゼ・ロス」については「将来的に個室で看取りを行う場合でも、最期まで入浴したいという利用者や家族の想いを実現したかった」と語る。

 同製品は「個粋」シリーズで唯一カバーできていなかった寝浴に対応。外形は幅68㎝×長さ201㎝とコンパクトにおさまり高さは65~96・5㎝の間で調節できる。キャスター付きで移動式のため小規模施設でも場所をとらず、設置工事が不要なので備品での購入も可能だ。

 「まずはこの1年で100台販売する」と目標を掲げ、「福祉事業も今年で15年。売上も温浴事業と暖炉事業にようやく追いついてきた。今年度は各事業10億円ずつ売上を見込んでいる」と同氏は話す。

実証データと現場の声でニーズを把握

 福祉事業立ち上げ時のもう一つの課題は、入浴介護のノウハウや福祉用具としての浴槽の知識がほぼゼロだったことだという。「福祉初心者が大手競合他社に対抗するには、スピードとデータを用いた現場ニーズの把握が不可欠」と神山社長は説明する。

 00年に奈良県の介護施設への導入がきっかけで、設計監修をしていた京都大学と共同でユニットケアにおける入浴環境の研究を開始。入浴については従来の流れ作業からマンツーマンでの個別介助への移行によりケア全体がどう変化するかなどを調査した。

 個別介助のほうが一人あたりの入浴時間が長くなり、一方脱衣して入浴するまでの「待ち」の時間は短くなるという結果が出た。職員も最初は慣れないシフトで介助負担が大きかったが、一つひとつの作業効率が高まると利用者とのコミュニケーションも円滑になったという。

 また同社が実施する出張体験会「個粋キャラバン」は浴槽を施設に持ち込みデモ仕様が行えるサービス。多忙のため展示会に来ることができない介護職員などへ配慮した同社独自の取り組みだ。

 「介護現場はショールームのようなもの。実際の使用方法や利便性など生の声を聞くことができ、そこで初めて製品価値を知ることも多い」と同社長は現場の大切さを語った。

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  • 神山敏社長
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  • 利用者のADLにあわせた入浴介助が可能な「個粋」

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