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2015年制度改定社会保障審議会介護保険部会長 山崎泰彦氏 インタビュー2013年10月 8日10時42分

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市町村の主体性を取り戻す改正になる

 2015年度からの施行に向けて、 現在、 社会保障審議会介護保険部会で介護保険制度改正に関する審議が行われている。 同部会の部会長で社会保障制度改革国民会議 (以下、 国民会議) の委員も務めた山崎泰彦氏に話を聞いた。 (インタビュー日:9月26日)


 ――国民会議の議論について。

 山崎 国民会議は自民、 公明、 民主の3党合意に基づいて制定された社会保障制度改革推進法において設置が決まった。 その中で介護分野については3党の基本的な考え方は一致していた。 具体的には介護サービスの範囲の適正化による効率化・重点化と低所得者等の保険料負担の増大の抑制。 この基本方針に従って議論することになっていた。

 ――国民会議では、 介護分野についてほとんど議論がなされないままに報告書がとりまとめられた印象があるが。

 山崎 医療については国保の保険者のあり方など大きな争点があったが、 介護については争点がなかった。 議論にならなかったというのは、 基本方針に基づく対応の方向性について、 委員の間ですでに合意に達していたからだ。 踏み込んだ議論がなかったという指摘もあるが、 個別具体的な対応策はまさに介護保険部会で議論することだと思っている。

 ――座長として今回の介護保険部会でどのようなとりまとめ方を考えているのか。

 山崎 私は国民会議と介護保険部会の両方の委員を兼ねているから、 国民会議が求める方向性について、 介護保険部会でも尊重してもらいたいと思っている。 ただ、 議論の結果、 部会独自の意見を取りまとめることになれば、 それでいいと考えている。 部会長として、 最終的には一定の方向性で合意を得たいが、 特定の利害から離れられない委員の方もいるわけだから、 すべての委員の意見が一致するというのは現実には難しい。 が、 できる限り議論を丁寧に整理していきたい。 その上で、 最終的には政府与党の判断に委ねるという取りまとめ方が望ましいと考えている。

 ――これまでの議論の状況は。

 山崎 現時点で議論がほぼ一巡したが、 私の感覚だと大きな方向性については、 前回の改正時の審議ほどの対立はない。 これまでに何度も同じテーマで議論をしてきた事績があるし、 国の財政状況が非常に厳しい状況についても一定程度理解が進んできた。 全体として大きな方向性については合意を得つつ、 それぞれの施策の導入、 施行に向けて経過措置を設けるとか、 特にこれからは市町村業務の負担が重くなるので、 多くの市町村の置かれた状況にどう配慮するかを考えていく必要があるだろう。

 ――予防給付を市町村の地域支援事業に移行させることについて。

 山崎 要支援者に対する予防給付を全国一律の基準や報酬でサービス提供するのではなく、 むしろ地方の実情に応じて独自性を生かした形で再編成した方がいいのではないかというのが厚労省の提案だ。 制度的には2006年の介護保険制度改正で要支援者と要介護者を点線で仕切った。 今回の提案はそれをさらに明瞭な実線で仕切ろうというものだと理解している。

 ――なぜ、 あえて要支援者を地域支援事業に移すのか。

 山崎 今回の要支援者を市町村事業に移すことについて、 国は全体の予算を減らさないと明言している。 予算は確保されるし、 財源構成も変わらない。 ただ、 自由度が増せば同じ財源を使って、 より効率的で効果的な事業を行うことができるようになる。 私はそういう意味では、 今回の改正案は、 介護保険創設時に目指した地方分権推進の理念に基づいて、 市町村の主体性を回復する契機になるとみている。 ただし、 人材や財政基盤の違いには十分に配慮した対応が必須の条件になる。

 ――地域格差が広がる可能性がある。

 山崎 消費税増税分の使い道だが、 低所得者の保険料負担軽減とは別に、 医療・介護サービスの基盤整備を含む提供体制改革にも必要な財源を充てることになっている。 9月25日の部会でも、 事務局にそのことを確認した。 サービス基盤が十分に整っていない自治体には、 当然、 重点的に配分されることになる。 そうした財政支援があるにもかかわらず、 動こうとしない自治体があれば、 その時は住民がはっきり意思表示すべきだ。

 ――全体として市町村の役割が重くなってくる一方で、 地方では過疎化がどんどんと進んでいく。 小規模な自治体で担いきれるのか。

 山崎 大事なのは基礎自治体としての市町村の力をどう強めるかだ。 国の権限移譲の流れの中で、 私は思い切って市町村合併を進めるべきだと思っている。 できれば中核市程度になるまで再編すれば、 福祉事務所のほか保健所も設置され、 権限移譲も受け入れできる。 そうでなければ、 医療・介護・子育てなどの全体を十分には担えないと考えている。 ただ、 そこまで市町村合併が進まない現状では、 県がその部分を支援していく必要があるだろう。

 ――地域包括ケアを実現させるためのポイントは。

 山崎 在宅の限界点を高めるためには医療のバックアップが欠かせない。 鍵を握るのは訪問看護だが、 今はそこが一番手薄になっている。 それゆえ定期巡回型サービスや複合型サービスの整備のネックにもなっている。 そうした現状を変えて、 さらに飛躍的に在宅医療・介護サービスを発展させるには、 看護師を抱え過ぎている急性期病床の大胆な機能分化と全体としてのスリム化が必要だ。 そうした改革ができるかどうか、 そこにかかっている。

 ――特養については入所を制限する提案がなされている。

 山崎 厚労省が提案しているのは、 要介護3以上への重点化。 ただ、 議論を聞いていると、 要介護1・2の中には在宅での生活が非常に困難な方もあるようだ。 在宅サービスが不足していたり、 BPSDが激しいとか、 虐待ケースがあったりだとか、 かつて養護老人ホームで引き受けていたような、 むしろ措置の対象になるような人だ。 そのような実態には配慮しなければならないと思っている。

 ――デイサービスの見直しについて。

 山崎 デイサービスは費用が右肩上がりに伸びており、 特に小規模事業所が増えている。 小規模デイは報酬単価が高く、 宿泊サービスを提供している事業所もある。 中には質的に問題があるような事業所もあるようで、 市町村の関与を強めつつ、 弾力的で効率的な事業運営が可能になるような見直しが必要だ。 その辺りの問題を同時に解決することが求められている。

――どのように見直すのか。

 山崎 小規模の単価が高いのは、 それだけ経費がかかるということなので、 通常規模以上のデイサービスのサテライトとして位置づけられるようにする。 職員の兼務を一定範囲で認めるなどして、 経営の安定を図る。 さらに小規模デイを地域密着型サービスとして位置づけ、 市町村がある程度コントロールできるようにもする。 また、 宿泊の部分については、 東京都などが取り組んでいる届出制などを取り入れて、 情報公開を通じ、 透明性を図っていく。 これが厚労省の提案だ。

 ――サービス内容を類型化し、 介護報酬でメリハリをつけることも検討されている。

 山崎 デイサービスについては、 機能訓練に重点をおいたもの、 レスパイト中心のものなど、 様々なサービスの提供実態がある。 レスパイトも当然大事だが、 機能訓練に重点を置いているような事業所には、 きちんとそれを評価できるように事業内容を類型化して、 報酬で見合った評価をすることになるだろう。

 ――今後の予定について。

 山崎 1巡目の議論で意見があった点を中心に、 さらに議論を深め11月末を目途に意見書をとりまとめる。 その後、 来年の通常国会に改正法案が上程されることになる。

<シルバー産業新聞 2013年10月10日号>

<プロフィール>

山崎泰彦(やまさき・やすひこ)

 1945年生まれ。68年横浜市立大学卒業。社会保障研究所研究員、上智大学教授、神奈川県立保健福祉大学教授などを歴任。11年より神奈川県立保健福祉大学名誉教授。公職として、社会保障制度改革国民会議委員などを経て、現在社会保障審議会会長代理(介護保険部会長・年金数理部会長)などを務める。著書に『年金・医療・福祉政策論』(社会保険新報社)、『医療制度改革と保険者機能』(東洋経済新報社)など多数。

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