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海が見える施設「のんびり村」 その人らしい生活を最期まで

1100.jpg 山口県の福祉用具事業者、ホームケアサービス山口(下関市、末島賢治社長)は1986年の創業以来30年、高齢者が快適に過ごせる環境の創造を目指してきた。5年前に運営をはじめた介護施設「のんびり村」は入居者一人ひとりの個性、ライフスタイルを尊重した「ダイバージョナルセラピー(DT)」を実践。自宅と変わらない、その人らしい生活の場を支えている。

穏やかな眠りへのアプローチ

1101.jpg 岩国市の通津美ヶ浦公園入口の高台に「のんびり村通津」がある。窓からは瀬戸内海を一望でき、建物から少し歩けば浜辺にたどり着く。春は公園の桜が咲き、豊かな自然を楽しめる。

 今年5月、特定施設事例研究発表全国大会「アクティビティの部」優秀賞を受賞。県外からの見学者が後を絶たない。その取組み内容は、同社推奨のDTにもとづく「スリープマネジメント」だ。

 スリープマネジメントは、毎朝の散歩が1日の活動のはじまり。外気に当たり、体内リズムを整えて体温を上げる。行先は浜辺に下るコース、または施設が保有する畑でちょっとした野菜づくり。

 最初は「たかが散歩」と不満を漏らす入居者も、毎日続けることで生活リズムに馴染んでいくそうだ。「散歩中は、入居者とスタッフが1対1で話す時間が自然とつくられます」と同施設の介護福祉士・藤重貴子さん。「入居者と距離を縮め、本音を聞き出すことはDTのレベルアップにつながります」と説明する。

1102.jpg 昼食後は30分程度、昼寝をするのがポイント。心身をリフレッシュさせ、夕方のリハビリへの準備となる。その後はおやつ、手芸などのレクリエーションを楽しむ。レクは入居者とスタッフがテーブルを囲んで一緒に過ごす貴重なひととき。「この時間に体操などをしてしまうと、疲れて夜を待たずに寝てしまいます。そうなると夜間、じゅうぶん眠りにつくことができず、結果、徘徊に及んでしまうのです」(藤重さん)。

 リハビリは夕方5時から、しっかりと体を動かし体温を上げる。ここから寝る時間に向かって徐々にまた体温が下がっていくことで、入眠がスムーズになるのだという。夜間のコールが多かった入居者が、わずか1カ月で眠りを改善し、コールがなくなった例もある。

 河井弘樹施設長は「大切なのは、入居者にとって当たり前の生活とは何かを大前提に考えることです。施設の業務効率だけで生活パターンを決めてしまってはいけません」とDTの本質を述べる。

希望を引き出す対話術

 その人らしさ、本人の希望を可能な限り把握できるよう、同社ではオリジナルのアセスメントシートを用いる。同社古城恵専務取締役は「聞き取りのような形式ではなく、日々の自然な会話の中からこぼれ出たニーズをいかに拾い記録するかが大切です」と話す。

 「通津」の場合、浜辺散策や水遊び、祭りが入居者の人気イベント。ほかにも「外で美味しいものが食べたい」や「お墓参りがしたい」など、要望は絶えない。看取りのDTで「ステーキを食べたい」との希望に対し、家族を呼び居室で実際にステーキを焼いて食べたという。

 「職員も、新しいことを行う負担感より、入居者の希望を叶える喜びが勝っているのでしょう。働き続ける原動力です」と藤重さん。「DTは決して特別なことではありません。その人が1日1日、何を楽しみに朝を迎えるか、それを知るための関わり合いです」と語った。

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河井弘樹施設長(右)と藤重貴子さん

ダイバージョナルセラピー(DT) オーストラリア発祥の、楽しみやライフスタイルに焦点を当てた全人的ケアの手法。個性と独自性を尊重し「事前調査」「計画」「実施」「事後評価」のプロセスで行う。日本では2002年に「日本ダイバージョナルセラピー協会」設立。医療・介護等の現場従事者向け「DTワーカー養成講座」を開講している。その他、オーストラリアへの研修ツアー等、DTの普及に努めている。

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