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60年続く中也への共感 執筆活動にも意欲

中原中也記念館名誉館長 福田百合子さん

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 中原中也との出会いは戦後の昭和22(1947)年、兄が持っていた「中原中也詩集」(創元社)を見て、手に取ってから。紙が不足しがちなころで、ザラ紙でもその詩集はとてもハイカラに思え、小脇に抱えて歩いたという。「朝の歌」の、

「森竝(もりなみ)は 風に鳴るかな

 ひろごりて たいらかの空

 土手づたい きえてゆくかな

 うつくしき さまざまの夢」

という一節を口ずさんだという。

 山口女子専門学校卒業後、山口女子短大で研究の道に入るが、特に中也にこだわらずに『古典』を専攻したが、中也はやはり気になる存在で、若さゆえに燃焼した、その生き方が、同年代となって、分かるようになっていた。昭和30年代には「文芸山口」誌上で、中也の作品は彼の人生そのものという恩師の中也論に、作品は作品だという反論をするなど、中也は徐々に身近なものになっていく。

fukuda2.jpg 94年、山口県立大学を辞し、その生誕地に開館した「中原中也記念館」の館長に就任。中也の生家は大きな医院だったが、72年の火事で茶室と蔵を残して焼失。遺族によって運び出された中也の遺稿や遺品を中心に、貴重な資料を公開する。現在は、名誉顧問館長に一歩退いたものの、記念館の顔としての活躍ぶりは変わらない。福田さんらしいわかりやすい、きれいな展示で、1日かけて、どっぷりと中也の世界、詩の世界に浸ることができる。湯田温泉の宿泊客を中心に、9時の開館とともに大勢の来館者が訪れる。中也の人気は衰えないようだ。

 実家は、おいしいと評判の山口の「外郎(ういろう)」の老舗菓子店だったが、後継者に恵まれず廃業した。名店の学問の好きなお嬢様として、上品でセンスの良い装いは、いまも育ちの良さがにじみ出る。

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 福田さん自身も、育った家や故郷を題材に小説「外郎の家」「椹野川」「鵜を抱く女」の3部作を著すなど、執筆活動は盛んだ。

 中也の、生活や詩に一途で、自分に忠実に生きるところが魅力。好きな中也の詩は、

「幾時代かがありまして

 茶色い戦争ありました

 幾時代かがありまして

 冬は疾風(しっぷう)吹きました…」(サーカス)で、「茶色い戦争」という言葉が気に入っている。

 中原中也記念館は、JR山口線湯田温泉駅から徒歩10分。毎月曜日休館。一般320円。

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