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シルバー産業新聞

下関在住、直木賞作家 古川薫さん(90歳)

衰えぬ創作意欲 70年の数奇な縁描く新作

furukawa.jpg 直木賞作家の古川薫さんには幕末ものの作品が多い。山口新聞社にいる時に、明治維新を成功させながら、明治政府の批判者としての立場を貫いた大楽源太郎の生涯を「走狗」にまとめ、直木賞候補となったのがきっかけだ。

 幕末で尊敬するのは吉田松陰だが、好きなのは高杉晋作。先生と教え子なので、思想や発想は、すべて松陰のものだが、高杉の行動力、決断力が魅力と話す。似ているように見えないこの2人だが、古川さんは、フィルムのネガとポジのような存在とみる。

 山口、特に下関は歴史の町で、縄文の3,000年前からどこを切っても歴史のある町。書きたいものは幕末だけでなく、まだまだいくつも持っている。

 そんな中から、最近「君死に給ふことなかれ」(幻冬舎)を出版した。戦時中航空機会社で働いていた古川さんと特攻隊員との、練習機赤トンボを通じた不思議な縁を描いたもの。

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 1944年秋、古川さんが、練習機赤トンボの機体を修理し、操縦席の羅針儀の下に、製図用具で「栄光ノ赤トンボニ祝福ヲ。武運長久ヲ祈リツツ本機ヲ誠心整備ス。日立航空機羽田工場技士補・古川薫」と刻んだ。

 翌年8月初旬に、台湾にいた特攻兵M・Kから「古川さんが誠心整備された栄光の赤トンボを操縦して行きます」という遺書ともいうべき手紙が古川さんのもとに届くが、その時はこの手紙は強い衝撃を与えることなく、次第に忘れられていった。

 ところが2000年に古川さんはある本の中に「赤トンボ特攻隊」として戦死したその隊員の名を発見。それからは特攻隊員の足跡を追い続け、昨年夏から、古巣の山口新聞に連載を始めた。それを見た女性が、練習機赤トンボで特攻となって散ったM・Kから手紙を預かり投函したと現れた。最新作は、それらのエピソードを加えて出版したものだ。

 出版後、本を読んだM・Kの遺族(兄の子)が静岡県三島市に在住していること、M・Kの墓が富士宮市にあることが分かり、この8月に古川さんは墓参りをし、墓前にこの本を備えることができた。

 奇跡としか言えない数奇な縁が70年経って明らかになったのである。

 古川さんの引き出しには、まだまだ時代を問わず、読む人を熱中させ、感動を与える題材が詰まっていそうだ。幕末ものが多い古川さんだが、直木賞受賞作は当時の最年長65歳で受賞した作品も、幕末ものでなく、下関出身の世界的オペラ歌手・藤原義江の生涯を描いた「漂泊者のアリア」だった。

 卒寿(90歳)を迎えた今も、衰えぬ創作意欲の中、下関の「田中絹代ぶんか館」の名誉館長として、館に姿を見せ、館のHPでは興味深いエッセイを発信し続けている。

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古川さんが一番好きだという高杉晋作の生家(萩市)

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名誉館長を務める「田中絹代ぶんか館」

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