ケアマネジャーはじめ介護・医療に携わる皆さまへ様々な最新
情報を深く分かりやすくお伝えする「シルバー産業新聞」です。

Care-new.jp

大中小 テキストサイズ変更RSS

シルバー産業新聞

日光彫 伝統を未来へ繋ぐ

若職人が食べていける仕組みづくり

murakamisdjsaiodjajdsio.jpg

 「門戸を叩いてくれた若者が日光彫で食べていける仕組みを何とかしてつくりたいのです」

 そう力強く話すのは、日光彫協同組合理事長の村上隆大さん(60歳)。栃木県指定の伝統工芸である日光彫を職人として支えながら、後継者育成事業の牽引役としてその継承にも尽力する。

 日光彫は江戸時代に始まったとされる日光地区特有の装飾技術。「ひっかき刀」と呼ばれる独特な彫刻刀で木地に彫り込む複雑な紋様と、材料の美を引き出す漆塗りが大きな特徴だ。手鏡やおぼん、小物入れなどの日常的な実用品も格調高く仕上がるため、土産品として多くの観光客に親しまれてきた。

 そんな日光彫も日本の多くの伝統工芸と同じく、現在、担い手の高齢化や後継者不足の課題を抱え、存続が危ぶまれている。

 日光東照宮や華厳の滝など、日本でも有数の歴史文化財や自然美に恵まれ、国内外から多くの人が訪れる日光だった。しかし、景気後退に加え、原発事故後の風評被害なども影響し、観光客の足は遠のいているという。長年、観光客を相手に成り立ってきた伝統産業も大きな打撃を受けることとなった。

 こうした中でも、日光彫職人への弟子入りを志願する若者から市の商工会議所への問い合わせが年に数件あったという。しかし、給与を払える受け入れ先や、技術習得後の就職先が見つからず、断らざるを得ない状況が続いた。

 「我々の責任です。儲かったときに自分の懐に入れることばかり考えて、後継者の確保や育成は後回しにしてきたのですから」と村上さん。これまでの日光彫産業の在り方に後悔をにじませる。「昔のように給料がなくても弟子入りして一本立ちを目指す時代ではなくなっていますからね。ものづくりに対するせっかくの若い志が無駄にならないためにも、伝統工芸で食べていける仕組みを地域に整えなくてはならないでしょう」と強調する。

インテリアボックス.jpg

 

 こうした思いを実現すべく、2012年5月、村上さんが中心となり「日光伝統工芸振興協議会」を発足。県や市にも働きかけ、年間200万円の助成を受けながら、5年を計画期間とする後継者育成事業をスタートさせた。

 日光彫の門戸を叩く若者が技術を覚え、また次の若者を育てるサイクルを地域につくり出すことが最終目標だ。また、資金面では、売上から基金を積み立て、給与を補填できるような仕組みも模索している。

 村上さんは「まずは台風の目となる若者をとどめておけるだけの資金が必要」と話す。そのために協議会では、伝統工芸品の普及啓発を専門とする外部の有識者を招聘。アドバイスをもとにPRや販路拡大に向け、ホームページを新たに開設したほか、起爆剤となる新商品の開発も進めている。

 今年5月には、東京スカイツリーの開業2周年を記念し、日光彫額パネルを贈呈した。パネルの題字である「栃木」は、日光親善大使を務める書道家の涼風花さんによる書を彫り上げたものだ。県からの提案を受けるかたちで進められた企画だが、普及啓発のためのチャンスは逃さない。

 村上さんは「今まで日光彫に育ててもらったという気持ちも強いし、何より素晴らしい日本の伝統文化をそんな簡単にあきらめるわけにはいきません」と、日光彫再興に向けた熱い思いを力強く口にした。

  • 福祉住環境コーディネーター検定試験
  • SSL グローバルサインのサイトシール